美術館訪問記-307 プリンストン大学美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:プリンストン大学美術館正面

添付2:プリンストン大学美術館内部

添付3:プリンストン大学美術館地下展示室

添付4:ルーベンス作
「ジュピターに嘆願するキューピッド」

添付5:ピントゥリッキオ作
「聖バルトロマイ」

添付6:マネ作
「煙草を咥えたジプシー」

添付7:ピサロ作
「静物:丸籠に盛った林檎と洋梨」

添付8:トゥルーズ=ロートレック作
「聖なる森のパロディー」

添付9:シャヴァンヌ作
「聖なる森」
フランス、リヨン美術館蔵

添付10:プリンストン大学近くのホテルのフロントにて

アメリカ合衆国でハーヴァード大学と甲乙つけがたいプリンストン大学にも 素晴らしい美術館があります。

プリンストンはニューヨーク市とフィラデルフィア市の中間にある学術都市で ニュージャージー州の中央部に位置します。

大学の創立は1746年と全米4番目ですが、付属の「プリンストン大学美術館」の 創立は1882年とハーヴァード大学美術館より13年早い。

質・量ともに全米の大学美術館の中でも屈指の存在になっていて、 古代から現代まで、北米から南米、ヨーロッパ、アジア、エジプトに至るまでの 広範多岐にわたる9万2千点以上の収蔵品を有するとか。

特に、ギリシャ・ローマ時代の陶器や大理石、ブロンズの作品や、 プリンストン大学の調査隊がアンティオキア(古代シリアの首都)で発掘した モザイク画等のコレクションは地下に展示されていました。

中世ヨーロッパの彫刻やステンドグラス、初期ルネサンスから19世紀にかけての ヨーロッパ絵画コレクションも優れたものが多く、20世紀以降の現代作品も 年々拡充が図られています。

アジア美術に関しては、全米屈指の中国書蹟のコレクションとして知られる エリオット・コレクションや、藤原時代の木造梵天立像や魯山人の作品等の 日本美術コレクションがあります。

1839年から現代までの写真のコレクションは2万7千点を超えています。

絵画はロレンツォ・モナコ、フラ・アンジェリコ、クラナッハ、ベッカフーミ、 フランチャビージョ、ヴェロネーゼ、ルーベンス、リベーラ、ヴァン・ダイク、 ナティエ、シャルダン、ゴヤ、アングルなどから近代絵画も充実しています。

中でもピントゥリッキオ、アレッサンドロ・アッローリ、ブーダン、マネ、 チェイス、ヘンライ等の佳作がありました。 マネの「煙草を咥えたジプシー」は特に印象的でした。

ピサロの林檎と梨をバスケットに盛った、彼らしくない軽やかで澄んだ色調の 静物画が意外でしたが、一番驚いたのは壁一面に近い大作で、 てっきりシャヴァンヌの作品かと思ったら作者はロートレック。

1884年にパリのサロンで大賞を獲ったシャヴァンヌの大作のパロディーで、 8割方は原作そっくりに描き、残りの2割近くは、女神達のつどう池の畔の古塔に 時計を描いたり、静かな林の中にそこだけはロートレック本来の筆致で 男性の画家友達を描いたり、極め付けは子供のように背の低い本人自身が 背を見せて小便をしているなど、したい放題をやっているのでした。

こんな絵があったとは露知りませんでした。

プリンストン大学美術館を1994年に初めて訪れた時は、前庭に ピカソの大きな彫刻が置かれていたのですが、2012年に訪れた時はそれはなく、 イギリスのヴィクトリア・アルバート美術館からコンスタブルの風景画の 油彩スケッチ68点とデッサン、水彩画が来て特別展をやっていました。

見覚えのある彼の代表作のフルスケールの習作も2点あり、 コンスタブルが修練を重ね周到に準備して傑作を遺したのがよく判る内容でした。

この日は大学で何かの催しがあるようで、パレードの準備と お揃いの遊び着のブレザーを着た年輩の男性を多く見かけました。

大学の構内にはアレクサンダー・カルダーやヘンリー・ムーア、パブロ・ピカソ 等の彫刻作品が設置されており、新旧の建物が違和感なく配置されたキャンパスを 歩いているだけでも楽しいものです。

ホテルのチェックインでは若い女性が前にいたのですが、ふと見ると彼女の背中は 半分以上露出していて、そこにダンスをしているカップルに傘を差しかけている 正装した男性とその横に2行何やら描いています。

思わず写真を撮ってしまったのですが、どう見ても素肌に描かれた絵画か プリントまたは刺青の様で、どうして描いたものなのか 彼女に尋ねられなかったのが心残りです。