美術館訪問記-303  キングス・カレッジ・チャペル

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:キングス・カレッジ正門

添付2:キングス・カレッジ中庭、右側が正門、正面がチャペル

添付3:キングス・カレッジ・チャペル正面

添付4:キングス・カレッジ・チャペル内部

添付5:キングス・カレッジ・チャペル中央祭壇

添付6:ルーベンス作
「東方三博士の礼拝」

ケンブリッジ大学は、31のカレッジから成り、各カレッジは、代々固有の財産と 安定収入のある独立王国のような私立大学です。 歴史的に見れば、カレッジは教師と学生が寝食を共にし、そこで共に学ぶという 修道院の形態に由来しています。

かつてはそれぞれのカレッジに強い学問分野や特徴がありましたが、 現在ではその名残が一部に見られるものの、基本的にどのカレッジも 様々な分野の勉強をする学生や研究者が集まっています。 そのため分野を越えた人間関係を作り、学際的な研究や知的なフォーラムの 生まれる可能性が高い点で強みを持ったシステムとなっています。

ケンブリッジ大学で最も有名なのはキングス・カレッジで、その名のとおり ヘンリー6世により1441年に創立。 王がその前年に創設したイートン校の卒業生の上級学校としてのものだったので、 以来400年間はイートン校出身者のみがこのカレッジへの入学を許されたのです。

イートン校はロンドンの西の郊外にある男子全寮制パブリックスクールで、 13歳から18歳まで各学年250人ほどの生徒が学んでいます。 各界に著名人を輩出し、過去19人の首相を出している英国一の名門校です。

現在では各カレッジは3つの女子校を除いて、男女共学です。

キングス・カレッジには英国ゴシック建築の最高峰、 「キングス・カレッジ・チャペル」があります。

1446年、ヘンリー6世自身が礎石を置いて建設が始められ1516年完成。

チャペルはほぼ正方形の中庭を囲む建築物の一辺を占め、細長く天井が高い。 500年のタイム・スリップを感じさせる中世そのものの佇まい。

イギリスの公立の美術館・博物館は全て入場無料ですが、 ここは私立のカレッジのチャペルですから入場料を払って入ると、 両側に12の柱が並び、その間は11m、高さ22m、奥行き80mの広々とした空間は、 中間に何も柱がない教会空間としては世界最大。

両脇に1531年までに作成されたステンドグラスが並び、 扇状形態の天井を見ながら、中央にある巨大パイプオルガンの響きの中にいると、 真に異空間のただ中にいる感があります。

特に世界最大と言われる扇形ヴォ―ルト(穹窿:アーチ断面を水平に押し出した 天井で、広い空間を柱の数を少なく支えることができる)は思わず見とれてしまう 見事な造りで、緻密に動物の紋章やテューダー朝の文様が彫られています。

中央祭壇にはルーベンスの大作「東方三博士の礼拝」があります。

これはルーベンスの円熟期、1634年にベルギーの修道院の為に描かれた傑作で、 1959年にイギリスの富豪アルフレッド・アルナットが当時の最高価格、 27万5千ポンドで購入したものを、キングス・カレッジに寄贈し、 1968年からここに飾られているのです。

なお、私立のカレッジの集合体であるケンブリッジ大学は公立大学の扱いで、 フィッツウィリアム美術館は入場無料です。