美術館訪問記-290 マクネイ美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:マクネイ美術館正面

添付2:マクネイ美術館パティオ

添付3:マクネイ美術館パティオのモザイクの一つ

添付4:マクネイ美術館内部

添付5:シスレー作
「サン・ジェルマンからマルレ―への道」

添付6:セザンヌ作
「ヘンリー・ガスクェットの肖像」

添付7:ゴーギャン作
「自画像」1893年

添付9:ルドン作
「花と横顔」

アルケン近代美術館では、初めて観るイスラエル美術館のコレクションの 素晴らしさに驚いたのでしたが、 それよりもはるかに強烈な体験をした事がありました。

美の桃源郷に遊んだとでも言うべきなのか、余りにも優れた美的環境に 酔ったとでも言うのでしょうか。

素晴らしい本を読むと読み終わるのが惜しく、もう少し続いてくれればよいのにと 思うことがありますが、同じようなことを初めて美術館で経験したのです。

その美術館を見終わりたくない。もっと美の饗宴を味わい続けたいと 切に願ったのです。世界中の美術館を周りましたが、こんな事は初めてです。

それは初めて訪ずれたアメリカ合衆国テキサス州、サンアントニオにある 「マクネイ美術館」でのことでした。

この美術館はそもそもマクネイ夫人(1883-1950)という画家で美術教師でもあった 女性が、父親の石油利権の膨大な遺産を引き継ぎ、24部屋からなる豪邸を建て、 自分の趣味に合う美術品でその家を飾ったことから初まっています。

今ではその豪邸に接続して近代的ビルが建ち、展示面積を拡大して マクネイ夫人死亡後の多数の寄贈品も展示していますが、 中心はあくまで夫人が建てた家になっています。

2階建てのこの家がスペイン風の建築で、パティオを懐に抱く様に取り巻く造り。 このパティオが素晴らしい。中央の噴水、方々に配置された彫刻、 壁や床・階段に施されたモザイク、壁や柱の細工。その色彩、加工、配置、 全てが優雅で最高の調和を見せています。

スペインでもこれだけのパティオは見たことがありません。

彼女のコレクションがまた凄まじい。 数はそれ程多くないのですが、その質が頭抜けています。

私には1000人程の気になる画家があり、美術館に行くとそれぞれの画家の作品が どれだけあるかカウントしており、特に優れた作品、つまりその画家の代表作と 言えるものには赤丸をつけています。

ルーヴルやナショナル・ギャラリーのような巨大美術館は別にして、 赤丸が一つでも付く美術館はそうはありません。3つもつくのは稀です。 この美術館には赤丸が何と15もついたのです。

シスレー、セザンヌ、ルソー、ゴーギャン、ボナール、マティス、キルヒナー、 ピカソ、パスキン、ステーン、ガブリエル・ミュンター、ジョン・スローン、 ルドン、リベーラ、シャガール。

そのうち2つは後の寄贈品ですが、13はマクネイ夫人が自ら選んで買ったものです。 驚くべき鑑識眼の持ち主と言えます。 しかもこれらの作品は初見のものがほとんどです。

勿論これらの赤丸作品以外にも、アルブレヒト・ボウツ、コロー、クールベ、 アルヴィーゼ・ヴィヴァリーニ、ピサロ、マネ、モネ、ルノワール、ロートレック、 ヴュイヤール、ルオー、デュフィ、クレー、ブラック、ユトリロ、モディリアーニ、 ヤウレンスキー、レジェやホッパー、オキーフ等の絵画、 それにルノワール、ロダン、ブールデル、マイヨール他の彫刻も、室内だけでなく、 美術館の外周を取り巻く美麗な公園の様な庭にも多数ありました。

マクネイ美術館という名前はここに来るまで、日本のどんな本や画集でも 見た事がありませんでした。

こういう事があるから、美術館巡りの旅は止められません。

(添付8:ピカソ作「羽毛飾りの帽子の女」は著作権上の理由により割愛しました。
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