オスロには個人美術館ならぬ個人彫刻公園があります。
オスロの都心部から3km北西にある都市公園、フログネル公園内にある 「ヴィーゲラン彫刻公園」。
この彫刻公園は32万㎡(約10万坪)の広大な敷地に、212体のブロンズや 花崗岩でできたヴィーゲランの人体彫刻のみが置かれています。
彫刻公園の中央にある「モノリッテン(一本石の柱)」のように高さ14m、121体の 人体で構成された彫刻もあり600以上の人体彫刻で溢れているのですから壮観です。
生命力に満ち満ちた作品群は観る者の心を和やかに素直にしてくれるようです。
グスタフ・ヴィーゲラン(1869-1943)はノルウェーの家具職人、 トールセン家の生まれで、幼い頃からオスロの学校で木彫を学び、 彫刻家になる決心をした20代に、姓を住んでいた事のある地名、 ヴィーゲランに変更します。
22歳から27歳にかけてコペンハーゲン、パリ、ベルリン、フィレンツェ等を旅し、 ロダンの工房で学んだり、イタリアの古代彫刻やルネサンス彫刻を模刻したりして 腕を磨き、27歳で開催した個展は好評で、ノルウェーを代表する彫刻家と 見做されるようになっていきます。
1901年に初めて授与されたノーベル平和賞のメダルのデザインを託されるまでに なり、ノルウェーで最高の彫刻家として様々な公共彫刻を手掛けて行きます。
1921年、ヴィーゲランの家がオスロ市の図書館建設のため立ち退きとなり、 市はフログネル公園の傍にある邸宅を新しい家として提供。 かわりにヴィーゲランは今後制作する全ての作品を市に寄贈するという 契約を交わします。
新しい家はフログネル公園の隅にあり、彼は隣の10万坪の敷地を作品を展示する 彫刻公園の場所に選び、以後20年間彫刻公園の設計と制作に生涯を捧げました。
ここで圧倒的人気な彫刻が地団太をこねる子供を表現した「おこりんぼう」。 余りのヒートアップで盗難にあったりもしました。
公園完成前にヴィーゲランは亡くなりましたが、その後も彼の設計と 粘土モデルに基づいて作品が追加されて現在の公園となりました。
彼の遺言によりこの公園には彼の作品しか展示されていません。 この彫刻公園は24時間、無休、無料で開放されています。
ヴィーゲランが住んでいた家は、現在ヴィーゲラン博物館として公開されています。
1986年、札幌市内にオープンした札幌芸術の森野外美術館には、 グスタフ・ヴィーゲランの5作品がオスロ市の協力によりオープンから間もない 1988年春および1989年春に設置され、今では札幌の森の風景に溶け込んでいます。