美術館訪問記-278 バス美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:バス美術館遠景

添付2:バス美術館外観

添付3:バス美術館内部

添付4:ボッティチェッリとドメニコ・ギルランダイオ合作
「聖母戴冠と諸聖人」

添付5:ヤーコブ・ヨルダーンス作
「ニンフとサテュロス - 豊穣の寓意」

添付6:ジョージ・ロムニー作
「ジョン・シャーノック婦人」

添付7:ジョージ・ロムニー作
「ウィロビー嬢の肖像」
ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵

添付8:トーマス・ローレンス作
「チャ—ルス・コッカレル初代準男爵と家族」

添付9:タペストリー「トーナメント」 1510-1520年頃作

アメリカ、フロリダ半島にはまだまだ沢山の美術館がありますが、 マイアミビーチ市にある「バス美術館」を採り上げて、 知られざるフロリダ州美術館シリーズをとりあえず終了する事にしましょう。

マイアミビーチはマイアミ市からビスケーン湾の北端部をはさんで東側にあり、 南北に細長い、人口9万人足らずのビーチリゾートとして有名な観光都市です。

この美術館はこれまでのフロリダ州の美術館とは異なり、 最初から個人のものではなく、マイアミビーチ市の建造ですが、 その基盤は裕福なコレクターだったバス夫妻の500点の作品寄贈でした。

1964年の開館で、現在では相次ぐ寄贈に依り所蔵品数は3000点を超えています。

大西洋に面するコリンズ公園の西端にあり、潮風に後押しされながら、 両側の椰子並木の間を抜けて美術館へと歩むのは爽快で心楽しいものがあります。

2001年に磯崎新が拡張工事を手掛けたビルディングはモダンで格調高い。

バス夫妻のコレクションはオールド・マスターとタピストリー、宗教彫刻等で 中でもボッティチェッリとドメニコ・ギルランダイオの合作という、他では 滅多にお目にかかれない豪華な作品が目を惹きました。

1492年頃の作と言いますから、両者共絶頂期にあり、「聖母戴冠」図の多い ギルランダイオが構図骨格と男性達を、ボッティチェッリが聖母と天使達を 見事に描き分けた傑作です。

バロックのアントワープ派の一人、ヨルダーンスの傑作もありました。 この時期の美意識では美人の典型であった豊満な女性の裸体を神話のニンフを 隠れ蓑にして艶やかに描いて、豊穣を謳い上げ、見事です。

イギリス人画家達の肖像画もありました。

ジョージ・ロムニー(1734-1802)は生存時はイギリスでも名うての人気肖像画家で 欧米の美術館ではトーマス・ローレンスやジョシュア・レイノルズと同じくらい よく見かける画家です。特にアメリカでは好まれたようで、頻繁に見ます。

1981年にワシントン・ナショナル・ギャラリーで彼の描いた可愛い少女像を見て、 丁度娘が可愛い盛りだった事もあってか一目で好ましい画家の仲間入りをしました。

ロムニーはイギリス各地を巡りながら幾ばくかの謝礼で肖像画を描いて歩く 巡回絵師としてスタートしたのですが、肖像画家として大成功後も ロイヤル・アカデミーに招かれる事はなく、本人から希望する事もないままでした。

ロイヤル・アカデミーの初代会長だったジョシュア・レイノルズとの 確執が原因とする見方もあります。

その点、レイノルズに気に入られ、レイノルズの死亡後は後任として 王室お抱えの画家となり、後にロイヤル・アカデミーの会長にも選ばれた 35歳年下のトーマス・ローレンスとは大違いでした。

そのローレンスの作品も1点ありました。東インド会社の管理者として成功し 英国議会下院議員を35年間も務めたチャ—ルス・コッカレル一家の肖像です。

この他にも16世紀初頭にブリュッセルで織られた439 x 702cmの巨大で貴重な タペストリーや、中国、インド、ネパール、日本の東洋美術も展示されていました。