美術館訪問記-267 カディス大聖堂

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:カディスの夕暮れ風景

添付2:カディス大聖堂正面

添付3:カディス大聖堂内部

添付4:カディス大聖堂クリプト

添付5:カディス大聖堂付属美術館正面

添付6:聖母マリア像

添付7:ムリーリョ作
「無原罪の御宿り」

カディスの海岸線は婉曲した線で遥か先まで伸びています。 ゴミ一つないエメラルド・グリーンの海の色が、吸い込まれるように美しい。

海岸線からは、遠くからも目に付く大きな教会が「カディス大聖堂」。

海岸線から見えるのは大聖堂の背面で、ファサードは反対側にあります。 日中、海沿いからこの大聖堂を望むと、その黄金色をしたドームが 空の青さに引き立てられ輝きを増し、なんとも魅力的で風情があります。

大聖堂は1722年から建築が開始され、終了したのは1838年。 116年もの歳月を要しています。

永い時の移り変わりを反映してか建築には バロック、ロココ、ネオクラッシック様式がミックスされています。

入口に入ると受付があり、入場料5ユーロを徴収しています。 大半の観光客はUターンしていましたが、それでもそこそこ人が入っています。

内部は巨大で、円形屋根と柱の洗練されたコンビネーションは見事です。 祭壇画も多く掛かっていましたが、観るべき物はありません。

多少興味を惹いたのはクリプト(地下礼拝堂)で、音響効果を計算して造ってあり、 ほぼ真ん中にある丸い石の上に立って発声すると、礼拝堂一杯によく響き面白い。

どうもこういう造りはスペインのクリプト建築の特徴らしく、 第29回のタベーラ病院内にあるクリプトも同じ構造になっていました。

入場料には付属美術館も含まれていると言っていましたが、探してみても 見つかりません。受付に戻って聞くと、 大聖堂の外周に沿ってちょっと歩いた所にあると言います。

実際は外周を離れ、目印も無く不安なまま500m程歩いた所に、 塔の付いた小教会のような美術館がありました。

入口は狭いですが中は結構広く、多数の宗教画や彫像、聖具、儀式用衣服等が 展示してありました。

ただ私の興味の対象となるようなものは少なく、駆け足で通り過ぎると、 出口近くにムリーリョの大作「無原罪の御宿り」がありました。

これが素晴らしい出来で、ムリーリョの「無原罪の御宿り」の 最高傑作と言えるでしょう。陶然として観惚れ、暫し時の経つのを忘れました。

この1作のおかげで、これまで無駄足かと思っていた カディス大聖堂見物が一挙に報われたものに変わったのです。

「無原罪の御宿り」では、頭上に星の冠、足元に月が共通の項目として 描かれることが多いのですが、これは、「新約聖書」における最後の書 「ヨハネの黙示録」の一節が基になっています。

「天に大きなしるしが現れた。一人の女が身に太陽をまとい、月を足の下にし、 頭には十二の星の冠をかぶっていた」(黙示録12・1)。

この黙示録の記述に従い、「無原罪の御宿り」では足の下には月が、 頭には12個の星の冠が描かれています。 頭上の星は省略されている場合もありますが、 足下の月は必ず描かれています。

この絵では、マリアの出現を祝福する天使達の中に、マリアの純潔を象徴する 百合の花と、実りの象徴の稲穂、マリア自身の象徴の薔薇の花を持つ天使達も 描かれています。