美術館訪問記-219 サンタバーバラ美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:サンタバーバラ美術館前のステート・ストリート

添付2:サンタバーバラ美術館前景

添付4:マティス作
「サン・ミシェル橋」

添付5:デュフィ作
「構成」

添付6:ルソー作
「月明かりの城」

添付7:イネス作
「キャッツキル谷の朝」

添付9:「能というドラマ」の部屋

添付10:月岡耕漁作
「能楽百番」

ロサンゼルスから北西に海岸沿いに1時間半ほど車を走らせると サンタバーバラの町に着きます。

スペイン風の町並みを特徴とした、風光明媚な勝景地で、 別荘やリゾートホテルが並んでいます。

大通りに椰子の木の目立つ南国風の町の中でも洒落たブティックやカフェのある ステート・ストリートに面して「サンタバーバラ美術館」があります。 1941年の開館。

通りからは一段高く位置している美術館への階段を上がり、 入って右手の比較的広い2部屋が常設展示場で、 ここには19世紀以降のヨーロッパ絵画、グラフィック、彫刻が勢揃い。

ボナール、ブグロー、シャガール、コロー、ダリ、デュフィ、キルヒナー、ミロ、 ファンタン=ラトゥール、マティス、モンドリアン、モネ、モリゾー、ルドン、 ルソー、シスレー、ユトリロ、ヴュイヤール、マイヨール、ロダン、ザッキン等。

人口9万人余りのアメリカ地方都市の美術館としては豪勢な品揃え。

この景勝地に住む富裕層からの寄贈のおかげでしょう。

少し辺鄙な場所にあるためか、展覧会や美術本で見た事のない作品が多い。

シャガールの、女性1人を中央に大きく描き、その長い髪の中に 小さな女性がブラ下がっている絵は初めて観ましたし、 マティスのピンク色の道のある右向きのパリの橋の絵も珍しい。

デュフィの「構成」は、色が交響楽団のようにひしめき合っていて楽しい。

ルソーの夜の城の絵が実によい。マイヨールの女性のトルソは力強い。

アメリカ人画家達の作品も負けてはいません。

ベローズ、ビアスタット、チェイス、エイキンス、グラッケン、ハーネット、 ハートレー、ハッサム、ヘッド、ヘンライ、ホーマー、ホッパー、イネス、 ローレンス、モーラン、オキーフ、プレンダーガスト、サージェント、スローン等。

国吉康雄も当然のようにアメリカ人として展示されていました。

メキシコ人画家達の作品もあります。オロスコ、リベラ、タマヨ。

なかでも、メキシコ革命運動で知られるシケイロスの壁画は圧巻。

長さ9.8m、高さ2.4mあり、彼の作品としてはアメリカで唯一、 完全な形で残っているものです。

ダビッド・アルファロ・シケイロス(1896-1974)はメキシコ、チワワ州の生まれ。 革命家と画家、二筋の道を貫いた異色の画家です。

後期印象派、フォーヴィスム、キュビスム、抽象主義、シュルレアリスム等が 席巻した20世紀美術の中で、メキシコ独自の芸術運動として壁画運動があります。

メキシコ・ルネサンスとも呼ばれますが、シケイロスはリベラやオロスコらと この運動を立ち上げ、巨大な壁画作品で知られています。

彼は言います。「私は壁画家であって、画家ではない。だから、タブローは壁画の 下絵、メモに過ぎないのだ。それは壁画に生かされて、初めて価値を持つ。」

彼はメキシコ革命のさなか、17歳で憲政擁護軍に参加。後にメキシコ共産党の 幹部となり、多くの労働組合を組織する傍ら、古代メキシコの美術や民衆芸術の 表現を大胆に取り入れた壮大な壁画を次々と産み出していったのです。

美術館には古代エジプトやギリシャ出土品、メキシコ美術の部屋もありました。

「能というドラマ」、「月岡耕漁の能絵」という特別展を、2つの小部屋を使って 開催中でもありました。浮世絵風の色彩版画で能の場面を描いているものです。

(添付3:シャガール作「追いかける女」、添付8:シケイロス作「今日(1932年)のメキシコ」は著作権上の理由により割愛しました。
 長野さんから直接メール配信を希望される方は、トップページ右上の「メール配信登録」をご利用下さい。 管理人)