美術館訪問記-218 ロサンゼルス・カウンティ美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ロサンゼルス・カウンティ美術館外観

添付2:ジョルジュ・ド・ラ・トゥール作
「ゆれる炎のあるマグダラのマリア」

添付3:ジョルジュ・ド・ラ・トゥール作
「灯火の前のマグダラのマリア」
ルーヴル美術館蔵

添付4:ヤコポ・ベッリーニ作
「聖母子」

添付5:グイド・レーニ作
「バッカスとアリアドネ」

添付6:フリーダ・カーロ作
「泣くココナツ」

添付8:ミキ・ハヤカワ作
「黒人の肖像」

ロサンゼルスにはシカゴ以西ではアメリカで最大の総合美術館があります。

それがビバリーヒルズの少し東に位置する「ロサンゼルス・カウンティ美術館」。

1910年、ロサンゼルス市内に歴史・科学・美術博物館として開館し、 1961年に美術館機能のみが独立して成立した美術館。 今の場所に移転したのは1965年。

ここはだだっ広い。 次々と追加のビルが建てられ、現在は9館から成る複合施設。

中央に一寸した広場があり、私が最後に行った時はカルテットが演奏中。 年間を通して各種コンサートや映写会を催しているそうです。

ゲッティ・センターとは異なり、日本美術専用の1号館に始まり、全世界の芸術を 古代から現在まで網羅して展示しています。所蔵数10万点以上とか。

全てを観るには1日では足りませんが、 ヨーロッパ美術の5号館とアメリカ美術の3号館に絞りましょう。

この2つの館だけは4階建てで、他の館は改修中の9号館以外は3階建以下です。

現代美術がお好きな方は2008年開館のレンゾ・ピアノ設計の7号館も逃せません。

5号館には大抵の大きさの絵画や彫刻は収納できるエレベーターがあり、 これに乗ると実にゆっくり上昇していきます。貴重な美術品運搬用の特別製。

4階で降りると、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの、蝋燭の光を見ながら右手を シャレコウベの上に置き、思いに耽るマグダラのマリアの絵が迎えてくれます。

この絵とほぼ同じ構図のものがルーヴル美術館にもありました。

第21回のキンベル美術館でも書きましたが、ラ・トゥールは評判がよいと 僅かに替えて、同じものを幾つか描いたようです。

ヴェネツィア派の創始者とされるヤコポ・ベッリーニの聖母子像がありましたが、 1465年とヤコポ最晩年の作で、それにしてはマリアの顔は近代的で、 それまでテンペラ画だった彼がこの作では油彩を使いこなしているのに驚きました。

驚いたと言えば、古典主義的な絵の多いバロック期の画家グイド・レーニの 「バッカスとアリアドネ」は、明るい青色の空と海、赤色のマントを肩に掛けた バッカスと、黄色の布の上に腰掛け緑色の布を纏っただけのアドリアネが 彼らしからぬ近代的な色彩の明るい絵で意表を突かれました。

この美術館は急速に拡大してきたためか、内部は枝葉のように部屋が繋がっており、 動線が判り難く、相当に歩かされました。

他にもボナール、ブグロー、セザンヌ、シャルドン、コロー、ドガ、ドラクロワ、 ゴーギャン、ゴッホ、グレコ、ロートレック、ミレー、モディリアーニ、モネ、 レンブラント、ルーベンス、シスレー、ティントレット、ティツィアーノ、 ターナー、ヴェロネーゼ、ヴュイヤール等、名画が揃っています。

アメリカ館の3号館は5号館前にあります。

ここは4階がメキシコ美術。 ディエゴ・リベラが5点とルフィーノ・タマヨが3点。

フリーダ・カーロは1点のみでした。 しかも「泣くココナツ」という特異な作品。

カーロの悲しみを象徴するかのように椰子の実が涙しています。

その隣には、その涙の主原因たる夫のディエゴ・リベラの描いた カーロの顔の絵が置いてありました。

3階のアメリカ絵画は3号館のスペースがそれ程広くなく、 展示作品が限られているのかもしれませんが、画家数も限られ、 それも画家当たり1点ずつの展示。

英国生まれながらロサンゼルスで活躍しているデイヴィッド・ホックニーの 「ムルホランド・ドライヴ:スタディオへの道」がありました。

この絵は日本の日曜版新聞解説で見た記憶がありますが、複合視点で描かれ、 背景はロサンゼルスの地図を写したという面白い絵です。

ミキ・ハヤカワ(1899-1953)という日本で生まれ、9歳で両親とアメリカに渡り、 サンフランシスコ美術大学を首席で卒業し、アメリカで活躍したという画家が 在学時代に描いた黒人の肖像画が力があり、瞠目しました。

(添付7:デイヴィッド・ホックニー作「ムルホランド・ドライヴ:スタディオへの道」は著作権上の理由により割愛しました。
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