美術館訪問記-217 ゲッティ・センター

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ゲッティ美術館入口

添付2:ゲッティ・センター航空写真

添付3:ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ作
「聖母の戴冠」

添付4:マザッチョ作
「聖アンドリュー」

添付5:カルパッチョ作
「ラグーンでの狩猟」

添付6:マンテーニャ作
「東方三博士の礼拝」

添付7:バッキアッカ作
「寛大の寓意」
ロサンゼルス、フィッシャー美術館蔵

添付8:バッキアッカ作
「聖母子と洗礼者ヨハネ」
ダラス、ダラス美術館蔵

添付9:アンソール作
「キリストのブリュッセル入場」

ロサンゼルスには立派な美術館が幾つかありますが、入口から 専用の電車に乗って美術館まで運んでもらう、世界でも珍しい美術館があります。

しかも美術館の入館も含めて全て無料です。駐車場だけは有料ですが。

その名は「ゲッティ・センター」。

ロサンゼルスの西にあるサンタモニカの北にある丘の上にあります。1997年に開館。

1966年のギネス・ブックが私人では世界一の富豪とした、伝説の石油王 ポール・ゲッティが残した基金で、推定56億ドル(約6400億円)の資産を有する 世界一裕福な芸術機関、ゲッティ財団が運営しています。

ここはゲッティ美術館を中心に、教育機関や研究機関などを合わせ持つ アートの総合センター。10億ドルの予算をかけ、13年がかりで建設されました。

その間コレクションはポール・ゲッティの邸宅があった敷地内に建てられていた、 古代ローマの遺跡を模した、現在のゲッティ・ヴィラで公開されていました。

ヴィラは、今は古代ギリシア・ローマ、エルトリアの古代発掘品を中心に展示する ゲッティ財団管理の美術館になっています。

3両連結の電車で丘陵を登り、終点で降りると、中央に段差のある幅の広い 階段があり、その中間の高さの中央に、マイヨールの、「空気」という題の 浮遊しているような女性ヌードが横たわっています。

両脇にある、中央の一段を五段にした段差の低い階段を上がって、 直ぐのパビリオンがインフォメーション・センターと売店。

5つのパビリオンからなる建物も新しくて綺麗ですし、館内中手入れや掃除が 行き届き、美術品鑑賞意外にも広大な園内を散策するだけでも楽しい場所です。

ここは高台にあるため、ロサンゼルス市街が見渡せ、景観も素晴しい。

入口直ぐ左手の北館がヨーロッパ古典芸術に充てられており、 1階が彫刻と装飾美術。2階が絵画。

国際ゴシック様式を代表する画家の一人、ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの 「聖母の戴冠」は、金地の上に描かれたイエスとマリアや天使達の衣服の描き方、 全体のバランスがよく、世界に13箇所しかないマザッチョの、 「聖アンドリュー」の緑色のマントと共に、目に残りました。

第17回で触れた、カルパッチョの「ラグーンでの狩猟」がありました。

マンテーニャの「東方三博士の礼拝」は登場人物の上半身だけを描いた凝縮した 手法が鋭く、バッキアッカの「寛大の寓意」も不思議に心に残る作品です。

しかしバッキアッカの作品には南カリフォニア大学フィッシャー美術館貸与と 注記されていました。企画展でもないのに1点だけ貸し出す事もあるのですね。

バッキアッカ(1494-1557)は本名フランチェスコ・ウベルティーニ。

フィレンツェで活躍したマニエリスムの画家で、ペルジーノの下で修業した後、 アンドレア・デル・サルトやポントルモとも仕事をしており、 1540年からはコジモ・メディチ1世の宮廷画家の一人になっています。

ショーンガウアーの油彩作品が1点ありましたが、オーストリア、フランス、 ドイツ以外で彼の油彩作品を観た記憶はありません。版画は各地にありますが。

世界でも数少ない、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの「楽士の喧嘩」もありました。

アメリカ西部ではここだけにしかないベッカフーミの2点も注目です。

残りの4館は、東館が17世紀、西館が18世紀、南館が19世紀以降の作品を収め、 展示館は企画展用に使用されています。

流石世界一裕福な美術館で、質・量共に充実していますが、 収蔵品がヨーロッパの絵画、彫刻、写本、装飾工芸品に限られ、 アメリカやアジアの美術はありません。

絵画もボナール、ドニまでで、それ以降の画家の作品はないのでした。

アンソールの「キリストのブリュッセル入場」の253 x 431cmの大画面も ここにありました。