美術館訪問記-216 ハンティントン・アート・コレクション

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ザ・ハンティントン入口

添付2:植物園内にある日本庭園の一部

添付3:ゲインズバラ作
「ブルー・ボーイ」

添付4:トーマス・ローレンス作
「ピンキー」

添付5:バーン=ジョーンズがデザインしたステンドグラス

添付6:フランチャ作
「聖母子と聖人達」

添付7:メアリー・カサット作
「ベッドでの朝食」

第212回のノートン・サイモン美術館から南東に5kmも行くとサンマリノという 高級住宅街があり、その中心に15万坪もの敷地にザ・ハンティントンがあります。

ここは鉄道王と呼ばれたコリス・ハンティントンの甥で、コリスの死後 彼の会社と妻を引き継いだヘンリー・ハンティントン(1850-1927)の 広大な邸宅のあった所です。

世界初の印刷物、グーテンベルクの聖書等の貴重なコレクションのある図書館、 ヘンリーの住居だった屋敷で、今は総称して 「ハンティントン・アート・コレクション」と呼ばれる ヨーロッパ絵画を展示するハンテイントン・アート・ギャラリー、 アメリカ絵画のあるヴァージニア・ステーレ・スコット・ギャラリーの 2つのギャラリーと120エーカーの植物園等から構成されています。

この植物園は日本庭園、中国庭園、オーストラリア庭園、砂漠庭園、バラ園、 亜熱帯・ジャングル庭園、ハーブ園、植物研究温室等12以上のテーマ毎の庭園が あり、これらをゆっくり見学するだけでも半日はかかるでしょう。

ハンテイントン・アート・ギャラリーは入口から200mほど右手に行った所にある、 2階建てで、1階に8部屋、2階に14部屋ある大邸宅。

各部屋と廊下の壁に絵画が展示されています。 ウェッジウッドや陶器、銀器、彫刻を展示したスペースもあります。

先ず1階のイギリス絵画から観てみましょう。 1階から2階にかけてホガース、ジョージ・スタッブス、ジョシュア・レイノルズ、 ジョージ・ロムニー、ジョセフ・ライト、ピーター・レリー、ジョン・ホップナー、 ヘンリー・レイバーン、アラン・ラムゼイ、ターナー、コンスタブル、ブレイクと 何でも揃っています。

特に印象的なのはゲインズバラの「ブルー・ボーイ」とトーマス・ローレンスの 「ピンキー」でしょう。

トーマス・ローレンス(1769-1830)はイギリスで最も著名な肖像画家の一人で、 ブリストルの宿屋の管理者の子として生まれ、10歳で、破産した父に代わって クレヨン画で家計を支えるという早熟の天才でした。

やがてパステルで肖像画を描き始め、彼の才能を愛でた上流階級の人々の自宅の 名画を模写しながら独学で腕を磨いたのです。 油彩画でラファエロの「キリストの変容」を模写した彼はこの絵でロンドンの 芸術協会から賞を貰い、18歳でロンドンに出た彼はジョシュア・レイノルズの 知遇を得て、忽ち王族を含む上流階級の肖像画を引き受ける事になります。

23歳でレイノルズが死亡すると、彼の後任として王室お抱えの画家となり、 数多くの肖像画を残しました。今でもイギリス王室の各地のギャラリーは ローレンスの肖像画で溢れていますし、欧米の美術館でもよく見かけます。

1820年にはロイヤル・アカデミーの会長にも選ばれ、ナイトも授爵しています。

この「ピンキー」はローレンスが25歳の時に裕福なジャマイカの農園主の 11歳の娘を描いたもので、完成後作品を貰い受ける前に病死してしまったのです。

この絵がヘンリー・ハンティントンの最後の購入作品で、自宅に飾る前に ヘンリーが死亡したというのも何やら因縁じみています。

2階に上がると33号室は礼拝堂になっていて、バーン=ジョーンズがデザインし、 ウィリアム・モリス商会が造った美麗なステンドグラスが展示されていました。

左角隅の14、15の部屋がルネサンスと17世紀オランダ作品で、 ウェイデン、ロレンツォ・クレディ、コジモ・ロッセリ、レンブラント等の 佳品が並んでいます。

特にフランチャとピントゥリッキオの作品は、アメリカでは、 東海岸以外ではここだけでしか見かけなかったものです。

ドメニコ・ギルランダイオに帰属された、 若い男女1人ずつの肖像画がありましたが、私の眼には本物と映りました。

フランス絵画もロラン、ヴァトゥー、ナティエ、グルーズ、フラゴナール、 ジャック=ルイ・ダヴィッド、シャンペイン、コローと負けてはいません。

ヴァージニア・ステーレ・スコット・ギャラリーは更に右に300m程行った処です。

ここにはアメリカ人画家のコプリー、ベンジャミン・ウエスト、ステュアート、 チャールズ・ピール一族、イネス、ホーマー、カサット、ウィアー、サージェント、 プレンダーガスト、ハッサム、ホッパー等がそれぞれ1,2点ずつですが、 顔触れは揃っています。

(添付8:エドワード・ホッパー作「ロング・ポイントにて」は著作権上の理由により割愛しました。
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