ストラスブールにはもう一つ、見逃せない美術館があります。
ノートルダム大聖堂から西へ500m程行くとプティット・フランスと呼ばれる、 古い家並みと石畳みの残るイル川が分岐しているエリアに出ます。
ここにイル川に面して「ストラスブール近現代美術館」が建っています。
全てがガラスと花崗岩張りの近代的な建物です。2階建てで1998年の開館。
内部は中央が天井まで吹き抜けの通路になっており、1階の両側に展示室。 2階は川と反対側が現代美術展示室。もう一方に橋のように通路が渡されて、 プティット・フランスを見渡すカフェテリアがあります。
カフェ側の半分は建物のない1階の天井兼屋根になっておりここからの ストラスブールの街の眺望が大聖堂を中心に素晴らしい。
前回のストラスブール美術館が印象派以前のコレクションなのに比べ、 こちらは印象派を含む1870年以降のコレクションになっています。
ピサロ、シスレー、モネ、ルノワール等の印象派から ゴーギャン、シニャック、ロートレック、ボナール、ヴュイヤール、マルケ、 デュフィ、ピカソ、ブラック、シャガール、ミロ、マグリット、エルンスト等 一通り揃っています。
アルベール・マルケ(1875-1947)はマティスやルオー同様、パリの国立美術学校で ギュスターヴ・モローの指導を受けており、マティスとは特に親しく、 マティスはマルケを葛飾北斎に勝るとも劣らないと評しています。
力強くて簡素なデザイン、明るく調和的な色彩、不要な細部描写の排除等を 評価しての事ですが、その穏やかな画面の底流に潜む詩情が、 私の好きな画家の一人である大きな理由です。
この美術館は照明の具合か、館内で撮った写真が全て 橙色にフィルターがかけられてしまい、 マルケの絵は代替のものが見付からずそのまま使用していますが、 実際はもっと青みがかっています。
特筆すべきはカンディンスキーのデザインした陶器の壁に囲まれた部屋で、 大塚国際美術館でも感じましたが、こういう陶板画で実際の部屋の壁が できるようになれば、インテリアの幅も広がる事でしょう。
1階の左奥の大部屋は地元出身の画家ギュスターヴ・ドレ(1832-1888)に捧げられ 600 x 900cmの大作「法廷を去るイエス」を始めとする油彩画7点、 水彩画10点が展示されていました。