美術館訪問記-210 サンディエゴ美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:サンディエゴ美術館正面

添付2:サンディエゴ美術館ファサード

添付3:サンディエゴ美術館ルネサンスの間

添付4:ジョルジョーネ作
「男の肖像」

添付5:ジョット作
「父なる神と天使達」

添付6:クリヴェッリ作「聖母子」

添付7:ルイーニ作
「マグダラのマリアの会話または謙譲と虚栄の寓意」

添付8:ボス作
「キリストの逮捕」

添付9:エル・グレコ作
「改悛した聖ペテロ」

添付10:ロバート・ヘンライ作
「ロバート・ヘンライ夫人」

フェニックス空港から西に1時間余り飛ぶとカリフォルニア州、サンディエゴに 着きます。この街の高台にバルボア・パークが広がり、木々や花々が多く、 教会やローマ時代の屋外演芸場、由緒ありげな建物が並んでいます。

その一角にある「サンディエゴ美術館」もそれ等に調和するかのように、 スペイン宮殿風の高い2階建で、黄茶色の屋根瓦が葺かれ、細かな彫刻が施された 茶色のファサードが中央にあり、横長の白い壁とコントラストを示しています。

この美術館はルネサンス、バロックなどの古典から現代アメリカ絵画まで 展示しており、量と質の両面から充実しているという評価で、 毎年50万人以上の訪問客が訪れているといいます。

入って直ぐ階段を上がり、2階の正面がルネサンスの間。 この部屋はそれ程広くはないのですが珠玉の作品が並んでいます。

ジョットからフラ・アンジェリコ、コスメ・トゥーラ、クリヴェッリ、ペルジーノ、 ルカ・シニョレッリ、ヴェロネーゼ、ルイーニ、ティントレット等、 イタリア絵画好きには堪えられない内容です。

この上にジョルジョーネの壮年男性の肖像画が加わるのですから、 この部屋だけでも30分はいたでしょうか。

どの絵もよく手入れが行き届き、光り輝くよう。まさに至福の部屋と言えます。

特に世界22箇所にしかないジョットの作品は、 太平洋に面した場所では、ここだけにしかありません。

多翼祭壇画の一部が切り取られたもので、 父なる神は右手に笏を左手に人生の木の枝を持ち、広げた本では アルファとオメガ、つまり始めと終わり、時間と空間を示しているのです。

カルロ・クリヴェッリの聖母子像も幼子イエスの、きかん気の強そうな顔と 首にかけた真珠のネックレスが珍しい。

聖母子像でイエスがネックレスをしている絵は、 クリヴェッリの作品以外見た記憶がありません。 マリアの胸元を飾る宝石を指さしている事と共に何か特別な意味があるのでしょう。

ベルナルディーノ・ルイーニの 「マグダラのマリアの会話または謙譲と虚栄の寓意」も、 登場する2人の女性の衣服の色彩と質感、マリアの輝く肌と レオナルド・ダ・ヴィンチ風の顔が印象的でした。

サンディエゴはロサンゼルスから車でも来られる距離にあるので、 10年毎に過去に2度訪れているのですが、 その時はウェイデン、ブロンズィーノ作と表示されていた絵は、 今回、それぞれ追随者の作と変わっていました。

隣のやや大きめの部屋がまた素晴らしく、入口右手直ぐにボスの「キリストの逮捕」 があります。スペイン、ヴァレンシア美術館にある同名の作品よりは小さめですが、 登場人物たちは憎々しげで、似通っています。

バルトロメオ・ベルメホ、エル・グレコ、スルバラン、ムリーリョ、ゴヤ、 ソローリャとスペイン絵画も負けず劣らず勢揃いしています。

他にもヴァン・ダイク、ブグロー、ロートレック、ボナール、モディリアーニ、 パスキン、デュフィ、マイヨール等も並んでいます。

アメリカ人画家達もホーマー、チェイス、イネス、ハーネット、カサット、 ハッサム、ホーソーン、デイヴィーズ、ロバート・ヘンライ等揃っています。

また アジア、中近東、北アメリカの美術品も相当な水準のものを展示しています。

日本の鎧、兜、浮世絵、インド・中国・日本の仏像、発掘品等もあり、 特にインドの絵画はアメリカ西部では珍しいものです。

中国の7世紀出土品の騎馬に跨る男性彫像が“Polo Player”と表示されていました。

その頃中国にポロの競技があったのか?と思ったら、 7世紀初頭にインド経由でイラクから伝わり、 皇帝を始め、老若男女を問わず熱中したと説明書きがありました。