美術館訪問記-198 シュテファン寺院

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:グラーベン通り、中央がペスト記念柱

添付2:シュテファン寺院

添付3:シュテファン寺院正面

添付4:シュテファン寺院主祭壇

添付5:ノイシュタットの祭壇

添付6:説教壇

添付7:召使い女のマドンナ像

ウィーン一番の目抜き通りはグラーベン通りで、いつも混み合っています。

グラーベンは「濠」という意味で、中世のバーベンベルク家の時代、 ここは城の濠でした。中ほどに1693年レオポルト1世建立の三位一体像あります。

これは別名ペスト記念柱と呼ばれ、一番上で天使が突き落とそうとしている老婆が ペストを現わしているそうです。

グラーベン通りを横に折れると「シュテファン寺院」があります。

12世紀に小さな教会が建てられたのが始まりで、14世紀にハプスブルク家の ルドルフ4世によってゴシック様式に建て替えられました。

ウィーンの象徴と呼ばれるだけあって、ウルム、ケルンに次ぐ世界第3位の高さの 南塔は137m。身廊の長さは107m、高さ39m。

寺院の屋根はフランスのブールカン・ブレスで見たブロウ教会と似た、 黄色が目立つ菱形の幾何学模様で、青空を背景に美しく映えています。

建物の中で現存する最古のものは、正面入り口の門。

13世紀の後期ロマネスク様式。 ロマネスクの特徴的な怪獣像が、門のあちこちに残っています。

タンパン(建物入口上にある装飾的壁面)もいかにも古めかしい造り。

門の左右に立つ、高さ65mの塔は、「異教塔」と言う、 キリスト教の教会には似つかわしくない名前で呼ばれています。

イスラム教の寺院につきもののミナレットの塔に似ているからだとか。

内部は、鉄格子で遮られており、左側の空いた所に説明が書いてあります。

日本語もあり、「ミサのため入れません。次の鑑賞時間は時計をご覧下さい。」

その張り紙の隣に、手作りの針が回転するようになった時計の絵があり、 9時を指しています。つまり明日までは内部に入れない。 もう一度出直さないといけないようです。

翌朝出直すと、主祭壇両脇のステンドグラスが美しく輝いていました。

前回触れたように、欧米の教会の主祭壇は普通東向きなので、 ステンドグラスは、朝の光を受ける時が最も美しく、できています。

主祭壇は、1641年から7年かけて造られ、 この寺院の本尊である聖ステファノが、石打の刑で殉教する姿を描いています。

天上ではキリストが、最初の殉教者とされる、 聖ステファノが昇天するのを待ち受けています。

主祭壇に向かって左手には、1447年の作とされる、 両翼のついた、ゴシック様式のキリストや、 聖母マリアの生涯を描いた、「ノイシュタットの祭壇」があります。

身廊の左側には、凝った細かい細工の塊のような説教壇があります。

16世紀の彫刻家、ピルグラムによる作品で、 階段下には、窓から半分身を乗り出した、作者自身の彫刻があり、 同様に、オルガン台の下にも、コンパスと定規を手にした、自身の像があります。

説教壇のすぐ隣の、1320年頃の作とされる、「召使い女のマドンナ像」も、 中世の傑作彫刻として、見逃せない。

盗みの疑いをかけられた召使が、このマリア像に祈った後、嫌疑が晴れたという 言い伝えがあり、願いが叶うマドンナとしても有名なのだとか。

寺院では歴代皇帝の葬儀が行われたほか、 モーツァルトの結婚式も、葬儀も、ここで行われました。

地下にハプスブルク歴代皇帝の内蔵を納めた、カタコンベがあります。