美術館訪問記-196 カナダ国立美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:カナダ国立美術館

添付2:ルイーズ・ブルジョア作
「Maman(母)」

添付3:ロレンツォ・ロット作
「聖母子と聖ロカ、聖セバスティアン」

添付4:レンブラント作
「バセシバ」

添付5:コロー作
「ナルニの橋」

添付6:フィンセント・ファン・ゴッホ作
「アイリス」

添付7:バルテル・ベーハム作
「貴人の肖像」

添付8:ハンス・エワース作
「ダクレ男爵夫人」

カナダ、モントリオールから車で1時間半ほど西に走った所に カナダの首都オタワがあります。

人口約80万人と、モントリオールの半分で、 行政機関と大学の集まる、落ち着いた町です。

フランス語圏のケベック州と英語圏のオンタリオ州の接点に位置しています。

2/3の人々が英語、1/6がフランス語、 残りの1/6が中国語、アラビア語、イタリア語等を第一言語にしています。

ここに「カナダ国立美術館」、ナショナル・ギャラリー・オブ・カナダがあります。

カナダは、いまだにエリザベス女王を君主に戴く英連邦王国の一員です。

イギリスでは、公立の美術館は全て入場無料で、それを受けてか、 嘗てイギリスの支配下にあった国々のナショナル・ギャラリーは、 アメリカ、オーストラリア、アイルランドでは入場無料ですが、 どういう訳かカナダだけは有料です。

アートの世界では、どの美術館も有料の、フランスから来た、 フランス語圏の人々がイニシャティブを執っている、ということなのでしょうか。 尤もフランスでもパリの市立美術館だけは無料ですが。 (パリでもルーヴルやオルセー等の国立美術館は有料です)

嘗てイギリスの統治下にあった国でも、インドのように、 国民の入場料は10ルピー、外国人は300ルピーなどという国もありますが。

ここの設立はモントリオール美術館の20年後の1880年。

1988年に現在のガラス張りのユニークな建物に改築されました。

こうしてみると、ケベック、モントリオール、オタワの3美術館とも、 ガラスを有効に多用しています。

美術館前の広場には、六本木ヒルズの広場にあるのと同じ、 フランス人アーティスト、ルイーズ・ブルジョア作の“Maman(母)”があります。

このMamanは第83回のスペイン、ビルバオのグッゲンハイム美術館、アメリカ、 カンザスシティのケンパー現代美術館、デモインのパッパジョン彫刻公園、 ロンドンのテート・モダンでも見かけました。 大きさは異なりますが。

美術館に入場すると、1階入口から2階展示場まで長いスロープが続いています。

全面ガラスの壁を通して左手にオタワ川と国会議事堂を見ながらスロープを登り、 蜂の巣のような形状の広いグレートホールに出ます。

ここは僅かな鉄骨以外は屋根も壁も全てガラス張りで、 床を除けばその上部は全てガラスという比類のない建造物です。

ここからエレベーターで3階に上がると、ヨーロッパ美術が17部屋、 アジア美術が1部屋、現代美術が10部屋に亘って展示されています。

シモーネ・マルティニ、ボッティチェッリ、フィリッピーノ・リッピ、ロット、 レンブラント、ムリーリョ、シャルダン、ブーシェ、ゲインズバラ、ターナー、 コンスタブル、コロー、ドラクロワ、クールベ、ロセッティ、バーン=ジョーンズ、 印象派、後期印象派、クリムト、アンソール、マティス、モンドリアン、 マグリット等、超一級の品揃えです。

特に印象的だったのは、バルテル・ベーハムの傑作が2点もあったことです。

デューラーの弟子だった彼は、いかにもドイツ人らしく、緻密で鮮やかな表現で、 衣服・装飾品の質感、人物の内面までを描き出し、470-80年前の制作ながら 古さは全くなく、描かれた人物が今にも動き出しそうな迫力があります。

同じ部屋には、フランドルの生まれながらイギリスに渡り、 エリザベス1世の王朝下で活躍した、 ハンス・エワースの「ダクレ男爵夫人」がかかっていました。 この絵も力があり、素晴しい。

2階には、3階のヨーロッパ美術に相応する広さで、 カナダ人や先住民イヌイットによる芸術作品が展示され、 3階と同面積の現代美術の展示場と、広い企画展用のスペースがあります。

間違いなく、世界でも有数の美術館で、勿論カナダ最高の美術館です。