美術館訪問記-194 国立ケベック美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ケベック・シティ付近の紅葉

添付2:国立ケベック美術館

添付3:マルク・オーレル・ド・フォワ・スゾール=コテ作
「陽射しの下で」

本格的に秋の季節になって来ましたが、この時期になると、妻と思い出す、 紅葉の地があります。 カナダのケベック・シティです。

カナダからアメリカ東北部にかけての紅葉は、比類なく美しく、 1981年の秋、初めてケベックに来て以来、平均すると5,6年毎に 再訪する結果となっています。

樺太に相当するこの辺りは、今頃が紅葉の盛りです。

広大な山野を有するカナダの秋には、1枚の画布や言葉ではとても表現しきれない、 自然の描写力の凄さを思い知らされます。

ケベック州は、公用語がフランス語だけ、というアメリカ大陸では唯一の州で、 34年前は、ケベックの街の傍を流れる、セント・ローレンス川に浮かぶ オルレアン島のレストランには、英語のメニューすらなく、 全てフランス語で、参りました。

川の中に浮かぶ島といっても、全長34km、最大幅8.8kmで 島の周辺の川幅は、13kmはあり、日本では想像もできませんが。

その8年後には、英語のメニューは置かれるようになったものの、英語は通じず、 道に迷った時には、学校で英語を習っている中学生を連れて来て貰って、 何とか意思疎通を図ったものでした。

それが2005年に来た時には、オルレアン島のキオスクに 日本の寿司弁当が置いてあり、二人で仰天したものです。

2011年時には、何処でも英語が、片言ながらも通じるようになっていました。

カナダ、ケベックには、「国立ケベック美術館」があります。

第30回でプール場を改造した美術館を採り上げましたが、 ここは何と昔の監獄を流用したもの。

とは言っても、昔の監獄は、3棟あるビルディングの内の1棟だけで、 他の2棟は新しく建てられていますが。

新しく建てられた、美術館の入口になっている建物は、 屋根も全面ガラス張りのまるで温室のような奇抜な格好をしています。

ケベック・シティで初めて要塞の外に建てられたという元監獄の方は、 対照的にいかにもそれらしい冷たく無表情な長方形の茶色の建物です。

今でも2階に独房の一部が残されていますが、畳一畳分の広さで、 往時の悲惨さが偲ばれます。

美術館そのものは33000点もの所蔵品数を誇り、 1991年出版の美術館本には17000点の所蔵と書いてありますから、 ケベック州の発展とともにコレクションも増加の一途を辿っているようです。

ここでは他のカナダの総合美術館とは異なり、 全てカナダ出身の、ケベック州で活躍した作家の作品しか見かけませんでした。

寡聞にしてケベックの画家で認識している人はいませんでしたが、 マルク・オーレル・ド・フォワ・スゾール=コテ(1869-1937)と言う 長い名前の画家の、印象派風の色彩と、師匠のレオン・ボナ風の精密な描写。

ジョン・ライマン(1886-1967)のマティス風の色使い。

カナダ人で初めてパリの近代美術館で個展を開いた、 アルフレッド・ペラン(1908-1988)の、「白い襟の服を着た女性」という マティスの切り紙絵のような模様の背景に、薄緑色のジャケット、 白襟のついた空色のシャツを着て机の前に坐る若い女性の絵の、配色の良さが、 印象に残りました。

美術館には他に彫刻や工芸作品、ケベックの教会を飾っていた宗教彫刻等も 展示されています。

(添付4:ジョン・ライマン作「眠る若者」、添付5:アルフレッド・ペラン作「白い襟の服を着た女性」1932年作、は著作権上の理由により割愛しました。
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