美術館訪問記-189 バイエラー財団美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:バイエラー財団美術館入口

添付2:バイエラー財団美術館

添付5:マティス作
「黒シダのある室内」

添付7:セザンヌ作
「黄色の肘掛け椅子のセザンヌ夫人」

添付8:アンリ・ルソー作
「空腹なライオン」 

バーゼル市立美術館へ行ったなら、見逃せない美術館が近くにあります。

バーゼル市の東に隣接するリーヘン市にある「バイエラー財団美術館」

こちらはバーゼル市立美術館の326年後の、1997年開館という新しい美術館。

国際的に知られた敏腕美術商として名を馳せたエルンスト・バイエラーと 妻のヒルディが永年集めた私的コレクションを、1982年設立した財団に委ね、 公開したものです。

バイエラーは、生涯に300以上の展覧会を手懸け、16000点以上の美術品を 収集家や美術館に売買したといい、画家や収集家、美術館と個人的に交流し続け、 彼ほど名作を実際に自分で手にした人はいないだろう、と言われます。

彼等のコレクションは、美術館設立に先立ち、1989年のマドリードの ソフィア王妃芸術センターを皮切りに、1993年にはベルリンの新国立美術館、 1996年には日本の北海道近代美術館、長崎ハウステンボス美術館、京都市立美術館、 1997年にはシドニーにあるニュー・サウス・ウェールズ州立美術館でも公開済み。

美術館の設計は、パリのポンピドー・センターや関西国際空港旅客ターミナルビル、 パウル・クレー・センター等を手懸け、2006年のタイム誌による 世界で最も影響力のある100人の一人に選ばれた、レンツォ・ピアノ。

外に造られた池とガラスから差し込む光が、美しい空間を演出する モネとジャコメッティ作品の展示スペースや、モダンアート作品が映える シンプルな大型スペースなど、名作の数々と見事に調和しています。

2012年訪れた時は、まだバイエラーが館長をしていた、14年前の訪館時と異なり ずっと現代よりの展示になっており、ピカソ11点、レジェ9点、ベーコン6点、 ロスコ6点、モンドリアン5点、ジャコメッティ4点、リヒテンシュタイン3点、 ラウシェンベルグ、ウォーホル、ミロ、エルンストなどはあるものの、 ドガやスーラ、マティス、ドラン等はありませんでした。

また、カルダー・ギャラリーというコーナーが出来、1部屋と通路の半分の スペースを占有してアレクサンダー・カルダーの作品を大小10点展示していました。

全般に、ゆったりとスペースを取った展示で、空間が目立ちます。

地下では、広い2部屋を真っ暗にして、 何か下らない現代作家の映像を写していました。

あんな物に無駄なスペースを使わず、常設展に力を入れて欲しいものだ、 と思うのは私だけなのでしょうか。

それでも、セザンヌ、モネ、ルソー、ゴッホなどの名品もあり、 広々とした閑静で開放的な空間で、近代美術の祭典を楽しんだのでした。

スイスは観光業が国の収入の一端を担っていますが、 それだけに観光客の便宜にも心配りされており、美術愛好者向けに スイス・ミュージアム・パスポートが発行されています。

1年間有効で、幾つかの例外を除いて、全てのスイスの美術館、博物館が 無料で入れるのです。155スイスフラン、約19600円で、私のように その国の全ての価値ある美術館を訪れようとする者にとっては、便利で経済的。

オランダにもMuseumkaartという同様な仕組みがあり、 こちらも1年間有効で54.9ユーロ、約7500円。スイスの半分以下です。

他の国も、同様なサービスを提供してくれるといいのですが。

(添付3:ピカソ作「女性の頭部」、添付4:ラウシェンベルグ作「風上」、添付6:カルダー・ギャラリーは著作権上の理由により割愛しました。
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