美術館訪問記-180 ハンタリアン美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ハンタリアン美術館外観
中央の木の隣の建物、後ろはグラスゴー大学

添付2:ハンタリアン美術館内部、ホイッスラー展示室

添付3:アラン・ラムゼイ作
「ウィリアム・ハンター博士の肖像」

添付4:アラン・ラムゼイ作
「画家の妻」
エディンバラ、スコットランド・ナショナル・ギャラリー蔵

添付5:シャルダン作
「お茶を飲む婦人」 

添付8:マッキントッシュの家の食堂  

添付9:フランセス・マクドナルド・マクネア作
「白いバラと赤いバラ」  

ジェームズ・ホイッスラー(1834-1903)は、アメリカ生まれですが、 少年期をロシア、サンクトペテルブルクやイギリスのロンドンで過し、 アメリカに4年程戻った後、21歳でパリに出て画家としての修業を積みます。

4年後にはロンドンにもアトリエを構え、パリとの間を行き来しながら暮すのです。

1884年にはミュンヘンのロイヤル・アカデミーのメンバー、
 1886年にはイギリス美術家協会会長、
 1892年にはフランス、レジオンドヌール勲章受章、
 1898年には国際・彫刻家・画家・版画家協会の初代会長に選ばれる等、
 国際的に認められた画家、版画家として活躍しました。

彼の言葉に、 「音楽家が音を集めて和音を作り、壮麗なハーモニーを生み出すように、 芸術家は色や形が持つ要素を調和させ、美しいものを生み出すよう 運命づけられている」

「音楽が音の詩であるならば、絵画は視覚の詩である」

彼の最大のコレクションを誇るのが、イギリス、グラスゴーにある 「ハンタリアン美術館」

グラスゴー大学の付属美術館として、1807年の開館。

ホイッスラー作品は、油彩80点、水彩・素描数百点、版画1500点以上に加え 彼の使った絵筆や、エッチングの銅板、プレス機械等も所蔵。

ホイッスラーの妻で、画家のベアトリックス・フィリップの作品も300点ほど。

美術館の展示場は近代的ビルディングの1階のみで、大小取り混ぜて5部屋。

ホイッスラーのコーナーには、36作品と彼の所持品が展示されていました。

写真を撮ろうとすると、駄目だ、との事。 前にも書きましたが、大学付属の美術館には撮影不可の所が多い。

駄目もとで、「大学の付属なのに、勉強のために撮影できないのですか。」 と聞くと、学芸員の承認があれば話は別だ、と言います。

入口にいたスタッフに学芸員に取り次ぐよう頼むと、電話をしてくれ、 個人用かと聞くので、勿論だと答えると、書類に記入し、バッジをくれてOK。

レンブラント、ル・ナン、ステーン、レイノルズ、コロー、シスレー等が並ぶ中に アラン・ラムゼイの名作、「ウィリアム・ハンター博士の肖像」がありました。

この美術館はハンター博士の寄贈品が基になって創設されているのです。

アラン・ラムゼイ(1713-1784)はスコットランド、エディンバラ出身で、 20歳で絵画の勉強にロンドンに出て3年を過ごした後、 ローマ、ナポリで更に3年間腕を磨き、25歳でエディンバラに戻り 肖像画家として活躍しました。

彼は卓越した絵画技術に加え、詩人で作家の父親譲りの教養と海外生活での見聞に 裏打ちされた、洗練された人当たりの良さで上流社会で人気を博し、 1761年にはジョージ3世の首席宮廷画家に登用されます。

このため英国王室のコレクションにはラムゼイ作の肖像画が数多く入っていますし、 英国のみならず、欧米の美術館でも彼の作品はよく目にします。

シャルダンの作品も3作あり、その内の1作、「お茶を飲む婦人」は彼らしく 何気ない日常の一小間を慈しむように、ほのぼのと描いて傑作だと思いました。

アンディ・ウォーホルの「ヨーゼフ・ボイスの肖像」も、 ドイツの現代芸術家のポスター写真を加工したものですが、 ウォーホルの作品の中ではインパクトの強いもので、印象に残りました。

ここの地下のトイレの前の壁に、水差しをもってこちらを見つめる若い女性の姿が あり、一瞬写真かと思った程のスーパー・リアリズム作品で刺激的でした。

スコットランドの画家スタンレー・カーシター(1887-1976)の 「水差しを持つ女」。

別棟にスコットランドの生んだアール・ヌーヴォーの旗手、 チャールズ・レニー・マッキントッシュのテラスハウスを移築して、公開中です。

家の設計も置かれた家具や装飾品も全てマッキントッシュ夫妻の手になるもので、 1階が玄関ホールとテーブルセットが見物の食堂。2階は真っ白なインテリアの 応接間とベッドルーム、最上階は有名なストライプのベッドルーム。

本棚に並ぶ本は全てアール・ヌーヴォーのデザインで装丁されています。

妻のフランセス・マクドナルド・マクネア作の、 様々なアール・ヌーヴォー調の装飾や絵が、 マッキントッシュのデザインにマッチして、二人の共同制作の家の趣。

ガウディのデザインに通じる所があり、興味深く見学したことでした。

(添付6:アンディ・ウォーホル作「ヨーゼフ・ボイスの肖像」および 添付7:スタンレー・カーシター作「水差しを持つ女」は著作権上の理由により割愛しました。
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