美術館訪問記-135 ドゥオーモ(アレッツォ)

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ドゥオーモ

添付2:ピエロ・デッラ・フランチェスカ作
「マグダラのマリア」

添付3:マエストロ・デル・ヴェスコヴァード作
「十字架上のキリスト」

添付4:ロッビア工房作彩釉テラコッタ
「聖母子像」

添付5:ホテルからのアレッツォの眺望、丘の上にあるのがドゥオーモ

アレッツォにはもう1箇所、 ピエロ・デッラ・フランチェスカの作品が見られる場所があります。

何せピエロの作品は世界中で20箇所しか残っていないので、 アレッツォに来たらここも外せません。

アレッツォはイタリア中部の先住民だったエトルリア人が築いた古都で、 彼等の都市は何処も小高い丘の上に造られました。

アレッツォも例外ではなく、高い丘の上にあり、坂道の多い街です。

その一番高い所に「ドゥオーモ(大聖堂)」が鎮座しています。

13世紀に建設開始し、16世紀初頭に完成した荘厳・壮大なゴシック様式の教会です。 但しファサードは20世紀初頭に造られたもの。

3廊式で、左翼廊の祭壇寄りの壁に隠れるように ピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画「マグダラのマリア」があります。

保存状態もよく、マントの赤と補色の緑衣が際立つ、 ピエロらしい、清涼感の漂ういい絵です。

ピエロの作品にはどれも凛とした精神性を感じます。

右側廊のチュッチォ・タルラーティ礼拝堂は、 14-15世紀に建てられた26個の礼拝堂の中で現存している唯一の礼拝堂で、 礼拝堂のフレスコ画「十字架上のキリストと聖ジョヴァンニ、聖フランチェスコ、 聖母マリア、聖ミカエル」は、14世紀前半に町で活躍していた マエストロ・デル・ヴェスコヴァードと言う画家の素晴らしい作品です。

入口から奥に向かって左側にある大きな「慰めの聖母の礼拝堂」には, ロッビア一族と工房による彩釉テラコッタの「聖母子」, 「聖母被昇天」があります。

彩釉テラコッタ作品は私もイタリアで見るまでは知らなかったのですが、 イタリアでは美術館や教会でよく目にします。

欧米の美術館もロッビア一族の作品を所蔵している所が多い。

彩釉テラコッタは15世紀にフィレンツェの彫刻家ルカ・デッラ・ロッビアが 産み出した技術で、単にテラコッタ(粘土)に顔料をつけるだけでなく、 像の縮みを計算に入れた上で粘土像を焼き上げ、 融解性の高い透明なガラス性物質(マルツァコット)で覆った後、 さらに釉薬を重ねて、より低い温度で再び焼き上げた、彩陶彫刻です。

彩釉テラコッタは化学的な釉薬の調合や温度差のある数次の焼き入れなど 秘伝的要素があり、ロッビア一族の独壇場となりました。

ルカの後を継いだ甥のアンドレア・デッラ・ロッビアもルカに勝るとも劣らぬ 優れた芸術家で、彼らの作品は、 基本的には絵画しか興味がない私をも引き付ける魅力を持っています。

アンドレアには何人もの息子がいて、共同で工房を引き継ぎましたが、 この頃になると独創性も薄れてきてマンネリ化し、やがて衰退していきます。

この夜泊ったホテルは前に広場があるため視界が広く、ドゥオーモが正面に見え、 アレッツォの街の教会の尖塔も幾つか目に入って来るのでした。

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