美術館訪問記-134 サン・フランチェスコ教会

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:サン・フランチェスコ教会正面

添付2:サン・フランチェスコ教会主祭壇部分

添付3:ピエロ・デッラ・フランチェスカ作
「聖木の礼拝とソロモン王とシバの女王との会見」

添付4:ピエロ・デッラ・フランチェスカ作
「十字架の発見と検証」

添付5:ピエロ・デッラ・フランチェスカ作
「ヘラクリウスの勝利」

添付6:サン・フランチェスコ教会内

歴史ある町アレッツォには大きな教会が幾つもありますが、 アレッツォと言うと最初に思い浮かぶのは「サン・フランチェスコ教会」

なぜならここには第6,7回でも採り上げた「絵画の君主」、 ピエロ・デッラ・フランチェスカの最高傑作、「聖十字架の伝説」壁画があるのです。

この教会は入るだけなら自由ですが、聖十字架の伝説がある主祭壇部分に入るには 予約してティケットを購入しなければなりません。

私の予約は朝9時。

15分前までにティケット・オフィスへ来られたし、と予約の紙にあるので、 15分前に行くと、オフィスは閉まっていて誰もいない。

前の立て看には、Office hour:9-18となっています。

隣の教会に入ると誰もいないので写真を撮っていると、男性が出てきて 撮影禁止!と言います。

左側の礼拝堂を改築してガラス張りのオフィスにし、 机を入れてそこに座っていたようです。 明かりが点いていなかったので気付きませんでした。

普通教会は撮影可の所が多いのですが、美術品が多い所は禁止の場合もあります。

ティケット・オフィスに戻り待っていると、9時丁度にあたふたと若い女性登場。

予約シートとティケットを交換。教会で件の男性に見せ、 彼のオフィスの前に張られたロープを外して、 教会最後部の主祭壇部分に入れてもらいます。

「聖十字架の伝説」は13世紀にできた中世の聖人伝「黄金伝説」の中にある話で、 旧約聖書のエデンの園から始まり、7世紀の東ローマ皇帝 ヘラクリウスの時代にまで及ぶ、壮大な歴史的長編ドラマです。

  要約しますと、アダムの墓に生えた木が、ソロモンとシバの時代を経て、 キリストが磔刑された十字架となり、 東ローマ帝国のヘラクリウス帝がペルシアのホスロー王から十字架を取り戻し、 エルサレムに返還されるまでの物語です。

  右壁上部から「アダムの死」、「聖木の礼拝とソロモン王とシバの女王との会見」 「コンスタンティヌスの勝利」。

中央壁は真ん中にステンドグラスがあり、 その左側上部から「預言者」、「ユダの拷問」、「受胎告知」、 右側上部から「預言者」、「聖木の運搬」、「コンスタンティヌスの夢」。

左壁上部から「聖十字架の賞揚」、「十字架の発見と検証」、 「ヘラクリウスの勝利」の各場面で構成されています。

ただ「ユダの拷問」と「聖木の運搬」は 彼の協力者ジョヴァンニ・ダ・ピアモンテが描き、 「ヘラクリウスの勝利」も多くの部分で共作者の手が入っていると言われています。

聖十字架の伝説に登場する人物の多くが帽子の類を被っています。 髪の毛を描く手間と時間をはぶき、色彩を豊かにし、 遠くからでも明確な色と形で個性的に見せる工夫のようです。

教会の高い天井まで3段の壁画では上の方はよく見えません。

主祭壇部分の奥の中央部分の狭い部屋なので、後退できる範囲も限られ、 鋭角的な角度から見上げなければなりません。

当初ネーリ・ディ・ビッチの父ビッチ・ディ・ロレンツォに依頼され, 天井の福音史家,礼拝堂の前壁面上部の「最後の審判」と アーチ型の柱の聖人たちはビッチの作品だそうですが,剥落が激しい。

何時観てもピエロ・デッラ・フランチェスカの作品は、 私に雄弁なる沈黙を押しつけてきます。

この教会内には、ネーリ・ディ・ビッチの「受胎告知」、 ルカ・シニョレッリの剥離フレスコ画「受胎告知」, スピネッロ・アレティーノの「キリストの磔刑」、「聖ミカエルの物語」、 「受胎告知」,「キリストの洗礼」等のフレスコ画もあり、まるで美術館。

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