美術館訪問記-114 アルテ・マイスター絵画館、ドレスデン

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ジョルジョーネ作
「眠れるヴィーナス」

添付2:アルテ・マイスター絵画館外観

添付3:アルテ・マイスター絵画館内部

添付4:ラファエロ作
「システィーナの聖母」

添付5:ヤン・ファン・エイク作
「三連祭壇画」

添付6:デューラー作
「ベルンハルト・フォン・レーゼンの肖像」

添付7:フェルメール作
「手紙を読む少女」

ジョルジョーネと言えば、後世に多大な影響を与え、近代美術の出発点とされる 「眠れるヴィーナス」を採り上げない訳にはいきません。

この絵は自然と人物が一体となった絵画史上最初の絵であり、 唯一人の裸体女性を眠るポーズで大画面(108.5 x 175cm)に描いたという事でも 画期的な絵です。

裸身の描くなだらかな起伏は、背後の風景の静かな流れと調和し、 色彩と明暗の織り成す柔らかな光のニュアンス、 ヴィーナスの高貴な理想美と相まって、静謐な詩情を醸し出しています。

ジョルジョーネの亡くなる1510年の作で、風景の一部や空は彼の没後 ティツィアーノが完成させたと考えられています。

この絵があるのはドイツ、ドレスデンにある「アルテ・マイスター絵画館」。

第49回のベルリン絵画館と並ぶドイツ有数の美術館の一つです。

ドレスデンは17世紀から19世紀にかけてザクセン王国の首都として繁栄し、 エルベのフィレンツェと讃えられた栄光の都で、今も当時の名残を留める バロック建築が軒を連ねています。

そのザクソン選帝侯アウグスト1世とその息子アウグスト2世が収集した絵画を バロック芸術の粋を尽したツヴィンガー宮殿に、 名建築家ゴットフリート・ゼンパーの設計になるギャラリーを増築し、 1855年から公開しています。

ちなみにゼンパーはこの後、ウィーンの美術史美術館の設計も手掛けています。

ここには名画が、「眠れるヴィーナス」以外にも綺羅星の如く並んでいますが、 アウグスト2世が何としてもラファエロをコレクションに加えると執念を燃やし、 町が一つ買える程の大金を積んで入手したという「システィーナの聖母」が この絵画館の至宝として、一番奥の部屋の正面を飾っています。

この絵は「聖母の画家」と称えられたラファエロが最後に描いた聖母子像で、 まだ29歳頃という若さながら、既に完成した完璧なバランスで、 崇高なまでの聖母子と聖人達を描き切っています。

この絵はまた一番下に描かれた二人の天使の愛らしさでも注目されており、 世界で一番有名な天使とも言われ、ここだけ切り離して、複製画や 様々なグッズが作られたりしているので、眼にされた方も多い事でしょう。

この他にも、持ち運びできる個人用のミニチュア祭壇画として作られたとは 思えない驚異的な細密描写に眼を見張る、 油彩画の創始者ヤン・ファン・エイクの三連祭壇画。

前々回のデューラーが円熟期にアントワープに旅して会った商人の 心の襞までを活写したような肖像画。

日本人に愛好者の多いフェルメールの傑作2点等、 どれも目の離せない600点もの名画が勢揃いしているのです。