美術館訪問記-113 ジョルジョーネの生家

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ジョルジョーネの生家

添付2:ジョルジョーネのフレスコ画

添付3:ドゥオーモ

添付4:ジョルジョーネ作
「玉座の聖母子と聖リベーラレ、聖フランチェスコ」

添付5:ティツィアーノ作
「田園の楽奏」
ルーヴル美術館蔵

添付6:ジョルジョーネ作
「嵐」 
ヴェネツィア、アッカデミア美術館蔵

デューラーは1494年、23歳でイタリア、ヴェネツィアへ留学し、 ドイツでは職人扱いで身分の低い画家が、イタリアでは上流階級に属する扱いを 受けている事に驚いて故郷の友人にこう書き送っています。

「故郷では奴隷のような私も、ここでは貴紳です」

この経験を経てデューラーは前回見た、貴紳としての自画像を描くような 自信と誇りを持った芸術家となってゆくのです。

彼はまたヴェネツィアでジョヴァンニ・ベッリーニの色彩に感嘆していますが、 ベッリーニの一番弟子で夭折の天才画家、「ジョルジョーネの生家」が、 ヴェネツィアから40kmほど内陸に入ったカステルフランコ・ヴェネトにあります。

カステルはイタリア語で城をさし、この町はその名の通りの城下町ですが、 周りを堀と城壁で囲まれた僅か230m四方の小さな町です。

その城壁に寄り添うようにジョルジョーネの生家があります。 改修されて、内部は旧居の佇まいを残しつつも外部は鉄筋コンクリート造りになり、 その上にイタリアの古民家風の色を塗ってあります。

3階建てで、3階は木製の天井裏部屋の造りをわざわざ残してあります。

2階の細長い部屋の鴨居部分に、 細長く帯状にジョルジョーネの唯一残るフレスコ画といわれる、 記号絵のようなものが白と茶の2色のみで描かれています。

その家の右隣にドゥオーモ(聖堂)が建っています。

これは18世紀にパッラーディオ様式で再建されたものですが、 その内陣の右にある小さな礼拝堂を占有して、 ジョルジョーネの最高傑作祭壇画 「玉座の聖母子と聖リベーラレ、聖フランチェスコ」があります。

静謐な詩情を湛えた名品です。

ジョルジョーネ(1477-1510)は 本名ジョルジョ・バルバレッリ・ダ・カステルフランコ。

彼については記録が殆どないらしく、謎多き画家です。

若くしてペストで死んだ事もあり、残された作品数は極めて少ない。

その上、弟弟子だったティツィアーノがジョルジョーネの死後、 手を加えて完成させたと言われる作品もあり、 ジョルジョーネの真作は6作しか現存しない、と言う学者もいるぐらいです。

あのルーヴルでさえ、1985年に初めて行った時、 「田園の楽奏」は、数少ないジョルジョーネの真作とされていましたが、 その後暫くして行くとティツィアーノとの合作と表示替えになり、 2007年にはティツィアーノ作となっていました。