美術館訪問記-111 チャルトリスキ美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:チャルトリスキ美術館外観

添付2:チャルトリスキ美術館内部

添付3:レオナルド・ダ・ヴィンチ作
「白貂を抱く貴婦人」展示実像

添付4:レオナルド・ダ・ヴィンチ作
「白貂を抱く貴婦人」

添付5:レンブラント作
「善きサマリア人のいる風景」

添付6:ミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオ作
「勝利のヴィーナス」

前回の22点のレオナルド・ダ・ヴィンチ作品の内、最後に残った1点を 現地で観るために行ったのが、ポーランド、クラクフにある 「チャルトリスキ美術館」

クラクフはポーランドの南部にあり、南はスロバキア、西はチェコ国境に近く、 人口約75万人。ポーランド3番目の大都市です。 17世紀初にワルシャワに遷都するまではポーランド王国の首都でもありました。

旧市街の入口、フロリアンスカ門の直ぐ近く、チャルトリスキ公爵の館だった家は 街中に踵を接して建っており、入口もそれと知らねば判らない何気ない造り。

美術品コレクターだったイザベラ・チャルトリスキ公爵夫人が1801年に開館。 ポーランド最古の美術館です。 尤も開館時は別の場所にあり、ここに移ったのは1878年の事。

入口は狭いのですが、内部は広い。大小取り交ぜて数多くの部屋に 絵画、彫刻、武具、古代ギリシャ・ローマ・エジプトからの発掘品等が並びます。

公爵夫人はイタリアを除くヨーロッパ諸国を歴遊し、美術館や個人コレクターを 足繁く訪れたという事ですが、審美眼は今一つのようで、展示されている作品は 一見、大家風なものの、殆どが真作ではなく、工房や追随者の作が多い。

ここの白眉、レオナルド・ダ・ヴィンチの「白貂を抱く貴婦人」と ナチスに奪われたまま行方不明になってしまったラファエロの「若い男の肖像」は、 息子のアダム・イェジ公爵がイタリアで購入したものなのです。

「白貂を抱く貴婦人」は、壁面狭しと絵が並ぶ館内で ここだけは窓のない一室の壁に唯1点、淡い光を浴びてかかっています。 両側の壁には何もなく、反対側の壁に1点かかっているだけです。

スポットを浴びた貴婦人はまごうかたないレオナルドの筆で、 怪しいまでの神々しい美しさを放っています。

木製の大きめの額がよくマッチしています。

この作品は2002年横浜美術館に来たのをご覧になった方もおられるでしょう。

モデルはレオナルドが仕えていたミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの愛妾、 チェチーリア・ガッレラーニといわれています。

当時ミラノ宮廷で流行していたスペイン風の衣装をまとい、右方を振り向く 若い女性の動きの表現は、肖像画としては近世絵画史上おそらく最初のものです。

背景は19世紀に黒く塗り潰されており、元々は青灰色で、画面右手では より明るく、女性の背後の陰になる部分はより暗く表現されており、 女性の立体感と柔らかな身体の輪郭がより明瞭だっただろうと考えられています。

他にはレンブラントの「善きサマリア人のいる風景」と ミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオの「勝利のヴィーナス」が 目に付いた程度でした。