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美術館訪問記 No.9 ペシュメルルの洞窟

(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

サン・シル・ラポピー

ペシュメルルの洞窟への道

ペシュメルルの洞窟パンフレット
(内部は撮影禁止)

ペシュメルルの洞窟壁画とクロマニヨン人の手形(絵葉書)

今回は距離ではなく、時間を遥か昔に遡ります。

フランスには「最も美しい村」という協会があり、定められた条件に合う村々が最も美しい村を名乗っています。
その中の1つにサン・シル・ラポピーという、切り立った断崖に貼り付くようにして中世の家々が建つ小さな村があります。住民よりも観光客の数の方が多い。 ロートレックの生まれたアルビの北にある村です。

この村のすぐ近くにGrotte du Pech-Merle(ペシュメルルの洞窟)があります。
有名なラスコーの洞窟は今では封鎖されていて、コピーしか見られませんが、ここはガイド同伴なら入場可です。
氷河期に洞窟の入口が塞がれ、1922年地元の少年達によって発見されたとかで、1万6千年前にクロマニヨン人が残したという手形、足跡、何より壁画が鮮明に残っているのです。

その余りの鮮明さに、とても1万6千年も経っているとは信じられず、最初は作り物かと思ったほどでした。
ひんやりとして、ガイドが点灯する照明以外は真っ暗な、巨大な鍾乳石の垂れ下がる洞窟の影から、今にも描き手のクロマニヨン人がヒョッコリと顔を出すような錯覚を感じる、生き生きとして、躍動感のある、マンモスや馬、牛の絵。

生の絵の持つ感動が、美術館の絵とは全く別な迫力で迫ってきます。絵の原点、描く喜び、遊び心が感じられ、得難い経験でした。
人類は遥か昔から、顔料と筆を使って描くことや、吹き付けで手形を残す意欲と技術を持っていたのです。遠い昔から無数の人々の長い試行錯誤の歴史の蓄積の上に発展してきた絵画。

人類の遺産を渉猟し、鑑賞する喜びは我々の精神深くに根差しているのでしょうか。

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