ヴィヴァリーニ一族の話が2話続いたついでに、3人目のアルヴィーゼ・ヴィヴァリーニもカバーしておきましょう。
アルヴィーゼはアントニオ・ヴィヴァリーニの息子として1445年頃生まれましたが、父よりも、歳の近く、技術的にもよりルネサンス化していた叔父のバルトロメオ・ヴィヴァリーニに画業の手ほどきを受けて育ちました。
物心つく頃にはヴェネツィアで頭角を現して来ていたジョヴァンニ・ベッリーニとジョヴァンニの義弟マンテーニャの影響を強く受けています。
父や叔父よりも柔軟性に富み、進出の気のあった彼は、1475年頃フランドルの油彩技法をヴェネツィアに伝えたアントネッロ・ダ・メッシーナの手法もいち早く取り入れ、明瞭な輪郭線と透明感のある光彩表現というヴィヴァリーニ一族の特徴に加え、エナメルのように光沢のある色彩を手に入れいています。1505年頃死去。
記録に残る彼の作品の多くは消失してしまっていますが、ヴェネツイァには第368回のアカデミア美術館をはじめ多くの教会に彼の作品が残っています。
それらの教会の内、彼の作品が3作もある教会を紹介しましょう。
それがヴェネツィアの「サン・ジョヴァンニ・イン・ブラゴーラ教会」。
サン・マルコ広場から海岸沿いに、混み合うスキアヴォーニ河岸の通りを東へ進み、400m程行って、狭い路地を入って直ぐの所に、広場に面して建っています。
9世紀の創建ですが、現在のファサードは16世紀初の後期ゴシック様式。ブック・エンドの真ん中に太い蝋燭を置いたような、特徴的な縦3層に分けられたファサードは珍しい。
内部はファサードに対応した三廊式で、主廊の左右の柱の上部はアーチを描いて天井へと続く壁と繋がっています。
窓外からの光で明るく浮かび上がる主祭壇には、薄いブルーの色が目に鮮やかなチーマ・ダ・コネリアーノの「キリストの洗礼」が置かれています。
別の礼拝堂にもチーマ作の「聖ヘレナとコンスタンティヌス」が飾られていました。どれもチーマ・ダ・コネリアーノらしい、すっきりとして甘美な出来です。
ここの絵は何れも修復されているようで、色鮮やかで汚れ一つなく気持ちがよい。
この教会の左右にある側廊にはそれぞれ礼拝堂が設置されており、そこにアルヴィーゼ・ヴィヴァリーニの3点が別々に置かれています。
年代順に見ていくと、1485年から1490年の間に描かれたとされる「聖母子像」。構図はジョヴァンニ・ベッリーニの影響が色濃い作品ですが、色彩は独特。
次いで1494年制作の「祝福するキリスト」。マンテーニャ的な硬質的人体像ですが、顔や手の表現は柔らかです。
最後に1498年作の「キリストの復活」。縦長のキャンバスに対象人物を巧みに配置した独創的構成になっています。
他にもバルトロメオ・ヴィヴァリーニが1478年に仕上げた美麗な3翼祭壇画「聖母子と聖人たち」もありました。
なお各礼拝堂は薄暗くなっており、光量不足で不鮮明な写真しか撮れず、礼拝堂の祭壇画写真は大部分Wikipediaから借用しました。