戻る

美術館訪問記 - 531 ブラウンシュヴァイク大聖堂、Braunschweig

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ブラウンシュヴァイク大聖堂外観

添付2:ライオンの像

添付3:木組みの家

添付4:レリーフの付いたガラス扉

添付5:ブラウンシュヴァイク大聖堂内部

添付6:ブラウンシュヴァイク大聖堂内部の柱

添付7:後陣セッコ壁画「全能者キリスト」

添付8:イマーヴァート作
「十字架」

添付9:ハッピー・リジー・ハウス

添付10:ハッピー・リジー・ハウス

前回のアントン・ウルリッヒ公爵美術館からブラウンシュヴァイク市の中心に向かって600mも歩くと「ブラウンシュヴァイク大聖堂」があります。

1173年から1195年にかけて建てられたロマネスク教会で、ハインリヒ獅子公の命により建造。後にゴシック様式に造り替えられました。

平板なファサードの上に両脇を八角形の塔に挟まれて主塔があるのがユニーク。

ハインリヒ獅子公は1129年生まれの中世ドイツの領邦君主の1人で、最盛期には北海及びバルト海沿岸からアルプス山脈までの広大な領土を統治。

ブラウンシュヴァイクやミュンヘンの町を興し、ブラウンシュヴァイクを拠点とし、ここに自身の紋章に描かれた動物のライオンの像を1166年に建立。

この像はアルプス山脈の北において最初に設置された青銅像で、後にこの像の側にブラウンシュヴァイク大聖堂が建築されたのです。

大聖堂前の広場にある木組みの家も美しい。

大聖堂には珍しい、面白いレリーフの付いたガラス扉から中へ入ると、内部は白一色。ねじれた棕櫚の木のような柱も独特です。

後陣や身廊の裏側には1230年から1250年にかけて描かれたというセッコ壁画が色褪せてはいるものの十分に美しく華やかです。

セッコ壁画は初出です。セッコは「乾いた」を意味するイタリア語です。

ブオン・フレスコと呼ばれる真正フレスコ画は漆喰を塗ってからまもなく硬化する前の表面に耐アルカリ性の顔料を水または石灰水で溶いたもので描くので、漆喰が硬化する過程で生じる水酸化カルシウムの化学変化により、顔料は壁に定着し、時が経ってもほとんど変化しません。

これに対しセッコ壁画はフレスコ・セッコともいい,漆喰が完全に乾いた状態の壁に,石灰水で溶いた顔料またはテンペラで彩色する技法です。

セッコは比較的早く顔料が剥落するという欠点があり,イタリアでは主としてブオン・フレスコの仕上げとして使用され、アルプス以北ではブオン・フレスコが風土的条件に適さないため用いられたのです。

有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はセッコ壁画だったために、あれ程無残な姿になっているのです。

職匠イマーヴァート作のロマネスク様式の木製の十字架もいかにも古い形式で楽しめました。

この十字架は1150年頃作成されており、十字架につけられたイエスのベルトにラテン語の碑文で「イマーヴァートが私を作った」と書いてあるのです。

イマーヴァートについてはこの碑文以外には何の文献も作品もないのですが、その作風から広場のライオン像も彼が作者ではないかと考えられています。

大聖堂から駐車場へ向かう途中にアメリカのポップ・アーティスト、ジェームス・リジー(1950-2011)の「ハッピー・リジー・ハウス」がありました。

カラフルでポップな絵が5階建てと3階建てを組み合わせたようなビルの全面に隙間なく描かれています。世界広しといえどもここだけにしかない、文字通りハッピーなビルでしょう。2001年完成。