前回の大司教館で最後に受付に寄り、置いてあった英語本を買うと、 「ティエポロが好きなら、近くの市立博物館にあるから、寄るといいですよ。 3分も歩けば着くから。」と受付の老人が早口のイタリア語で言います。
(第40回でも書きましたが、これは9年前の話しで、 1年間イタリア語会話に通った直後の事です。 今ではスッカリ忘れてしまいました。誤解なきよう。)
言われた方向に歩いたのですが、それらしい建物は見当たらず、 慣れないイタリア語を聞き間違えたかと訝りながら、 5分ほど坂道を登ると、広い公園に出て、城と銘打った建物が建っています。
町一番の高台で、城を除いて270度見晴らしが効きます。
見渡してみたのですが、博物館らしい建物は見当たらない。
そこにいた若者の一群に尋ねてみると、ある者は、知らないと言い、 ある者は、下に降りた広場のどこかにある筈と言う。 誰もしかとは知らない様子。
ひょっとしたらと、城の扉を揺すってみましたが、固く閉まっています。
しかたがないので、下りつつ城の後ろに回ってみると、ビンゴ! そこが 「ウーディネ市立博物館」の入口になっていました。
内部は2階が古典美術館、3階が考古学博物館に別れています。
博物館と言う名前に騙されて、 事前の調べでは、絵画がある場所と認識していなかったのです。
古典美術館には確かにティエポロの表示のある作品が、4点ありました。 ティエポロらしい、透明感溢れる軽やかな色彩と、優美な画風。
これらに出会えただけでもあの老人に感謝しなければなりません。
この美術館は13室もあり、ティエポロ以外にも ルカ・ジョルダーノやリッチ、ピアッツェッタ、 ミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオ等がありました。
特にカルパッチョの「キリストと彼の受難の道具」は今までに見た事のない構図で、 写真では判らないかもしれませんが、 右後ろの遠景はこのウーディネの城を描いたもののようで、 比較的新しく見えるこの城が、500年近く前に既にあった事に驚かされました。
カラヴァッジョの「聖痕を受ける聖フランチェスコ」にも、 彼の作品が人知れず埋もれていたのかと驚かされましたが、よく見ると、 アメリカ、ハートフォードのワズワース美術館にある、同名の作品と全く同じで、 展示はカラヴァッジョ作とされていましたが、 後で買ったカタログ本には、コピーか、と疑問符がついていました。
この美術館のテラスから見るウーディネの町の景色も秀逸でした。
直ぐ下に見えるのは、屋根つきのサン・ジョヴァンニの柱廊で、 帰りにここを通って、 街の中心のリベルタ広場に降りて行く道も心楽しいものでした。