美術館訪問記-105 石川県立美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:石川県立美術館口

添付2:青手松鳥図平鉢

添付3:色絵鳳凰図平鉢

添付4:色絵布袋図平鉢

添付5:野々村仁清作「色絵雉香炉」

添付6:野々村仁清作「色絵梅花図平水指」

添付7:三代徳田八十吉作「燿彩鉢極光」

陶板と言えば、陶磁器の素晴らしさに目を開かされた美術館があります。

石川県金沢市の著名な兼六園の直ぐ前にある「石川県立美術館」。 1983年の開館。

14年前ここを初めて訪れた時に、古九谷の素晴しさに目を見張りました。

妻は昔から茶を嗜み、これまでも美術館や博物館に展示されている 茶器や陶磁器類に興味を示していたのですが、絵画以外には 目を向けていなかった私は、彼女の言葉に耳を貸そうとはしなかったのです。

しかしここに並ぶ古九谷の大皿の艶やかで力強い色彩と斬新かつ大胆な図柄は、 そんな私の関心の乏しさを吹き飛ばすに十分でした。 350年前の日本にこれだけのものが存在したとは。

「青手」と呼ばれる平鉢の緑、黄、茶、紫の発色と色の調和の素晴しさ。 圧倒的な迫力。

「色絵鳳凰図平鉢」や「色絵布袋図平鉢」の素地の余白を生かした造形美。 洒脱な構図。色彩の美しさ。

特に鳳凰図の豪華絢爛、華麗な色使いとデッサンは 無国籍な世界的美意識を感じさせます。

九谷焼とは現在の石川県加賀市の辺りで江戸時代から焼かれている焼物ですが、 そのなかで1655年に初めて焼成されてから、約50年後に突然閉じられて しまうまでに生産された焼き物を特に古九谷と呼んでいます。

器全面を塗り埋め、青・黄・赤・白・黒の五彩のうち赤を除いた 二彩もしくは三彩で彩色された青手古九谷と、 白素地を生かして彩色を行う色絵古九谷の二つの様式があります。

この美術館には他にも、野々村仁清作国宝「色絵雉香炉」や重文「色絵雌雉香炉」、 重文「色絵梅花図平水差し」、尾形乾山作「色絵草花図絵替長皿」12点、 「色絵雲錦手杯台」や、吉田屋窯の「色絵椿文六角四段重」、 宮本屋窯の「赤絵弾琴図鉢」、三代徳田八十吉作「燿彩鉢極光」のような 瞠目せざるを得ない逸品が勢揃いしています。

野々村仁清は、生没年はわかっていないようですが、京都の生まれで名を 野々村清右衛門といい,若くして瀬戸,美濃,京都粟田口などで陶法を学び, 1647年頃京都の仁和寺門前で御室焼をはじめた陶工です。

この人が特徴的なのは、それまでの陶工は無名の職人に過ぎなかったのですが、 仁和寺と清右衛門の頭文字を採って仁清と称し,製品に仁清の銘印を捺したのです。

つまり陶工としては初めて、芸術家としての認識を持った日本人なのです。

石川県立美術館は、古九谷の雄渾で格調高い美に触れ、歴代の名工による さまざまな素晴らしい作品にも出会い、日本の陶磁器の良さを得心した、 記憶に残る美術館です。