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美術館訪問記 - 638 カサ・ミラ、Barcelona

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:カサ・ミラ外観

添付2:カサ・ミラのバルコニー

添付3:カサ・ミラ内部

添付4:カサ・ミラ、パティオからの眺め

添付5:カサ・ミラ屋上

添付6:カサ・ミラ屋上からの眺め

添付7:カサ・ミラ煙突の一例

添付8:エスパイ・ガウディにあった カサ・ミラ模型

イギリスの都市名ABC順もBまで終わりました。次は5年ほど採り上げていなかったスペインの都市名ABC順でいきましょう。

ただし、私が最後にスペイン旅行をしたのは2010年なので、一部、時代遅れになっている記述があるかもしれませんがご了承下さい。

先ずはバルセロナ。国際観光都市でカタルーニャ州の首都であり、オリンピックも開催されており、話題には事欠かないのでご存じない方はいないでしょう。

既にバルセロナにあるピカソ美術館とミロ美術館は解説しています。それら以外を主にABC順で述べていくと、最初は「カサ・ミラ」。

20世紀を代表する天才建築家アントニ・ガウディが手がけた最後の私邸です。

1984年、ガウディの建築群が世界遺産登録された時は、グエル公園、グエル邸とカサ・ミラの3つだけで、有名なサグラダ・ファミリアや他の3建築は後から追加されました。それだけ、ガウディ建築の中でも代表作と言えます。

私が訪れた6月初旬には、小雨の降る中、大勢並んでいました。30分待ちとの表示。

しかしArticket BCNというバルセロナのミュージアム・パス所持者は並ばずに直ぐ入れます。パリやベルリンなどの世界の主要観光地では、どこでも同じようなパスを発行していて、個別に入場料を払うのに比べ、大幅なコスト・ダウンになりますし、時間の節約にもなります。

旅に出る前に、どのようなパスがあるのか、どこで購入できるのかを調べておくのは必須事項です。インターネットで事前購入できるものもあります。

カサ・ミラは地元の実業家ベレ・ミラ夫妻の依頼でガウディが建てた、6階建ての邸宅兼アパートで、工事は1906年に開始し1912年に完成しました。カサ・ミラのカサとはスペイン語で家のことで、つまり「ミラ邸」という意味です。

当初は邸宅と14戸の貸住宅からできていました。貸住宅と言っても1戸が400㎡、8部屋からなる豪華なものでしたが。現在でも数宅は埋まっており、賃借り人のいる世界遺産はここだけでしょう。

カサ・ミラは外観は直線部分を全く持たない建造物になっていて、壮麗で非常に印象的な建物です。白い壁と波のような曲線は地中海をイメージしてデザインされたといわれ、まるでおとぎの国の家のような印象を与えます。

一つ一つ異なるバルコニーは、波に漂う海藻のような柔らかな造形です。硬い石と鉄を使って、柔らかな造形を生みだすガウディのテクニックには驚嘆せざるを得ないでしょう。

建設当初は、この奇抜すぎるデザインが時代の先端を行き過ぎていて、バルセロナ市民からは嫌われ、「石切場」というあだ名で呼ばれていました。そのため、現地では石切場を意味する「ラ・ペドレラ」が正式名称になっています。

中へ入ると、石切り場と揶揄された外観とは同じ曲線でもまた違った雰囲気があり、まるで海底にいるような感覚になります。

また、パティオから上を見上げると、そこにはぎっしりと並んだ窓。こちらは直線的で、中世のゴシック様式を思わせる形状。内外の全く異なる造りは、さすがガウディと唸らされます。

エレベーターで最上階へ行き、階段で屋上へ出ると、光景が一変します。まるで子供向けの遊園地のように、色々な彫刻めいたものがいくつもあります。

山の稜線をイメージした床は、高低差のある波打つ構造になっていて、奇妙なオブジェのように見えるのは煙突や換気口で、これらは山の峰をイメージしているのだとか。

土色の造形物は兜を被ったローマ兵ををイメージしたもので、リサイクルされた空ビンで装飾されたものもあります。ガウディは当時からエコ意識が高かったそうで、バルセロナに散在する彼の造形には廃品を使用したものが多く見られます。

屋上から降りると広い屋根裏があり、当初は住民の洗濯干し場として使用されたそうですが、現在は「エスパイ・ガウディ」と呼ばれる、ガウディ建築に関する展示場となっています。

ここにはカサ・ミラの模型やガウディ関連資料が展示されていました。

建築にはあまり関心のない私も、100年以上の時を経ているとは信じられないガウディ建築と造形の凄さに、彼の天才を納得させられました。