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美術館訪問記 - 632 聖フィリップ大聖堂、Birmingham

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:聖フィリップ大聖堂外観

添付2:聖フィリップ大聖堂内部、中央に「最後の審判」のステンドグラス

添付3:バーン=ジョーンズ下絵「キリスト昇天」

添付4:バーン=ジョーンズ下絵「キリスト降誕」

添付5:バーン=ジョーンズ下絵「キリスト磔刑」

添付6:バーン=ジョーンズ下絵「最後の審判」

添付7:同上、部分図

添付8:バーミンガム中央駅

添付9:バーミンガム市内のビル

添付10:バーミンガム市立図書館

前回のバーミンガム博物館・美術館から北西に300mも行くと「聖フィリップ大聖堂」があります。

教区教会として建てられ、1715年に奉献された聖フィリップ教会は、1905年に新しく形成されたバーミンガム主教区の大聖堂になっています。

イギリス・バロック様式で内部は主に白色で塗られて明るく、重厚な大理石の柱が数本あります。イングランド最小の大聖堂とか。

ここで特筆すべきは、この近くで生まれ、この大聖堂で洗礼を受けたバーン=ジョーンズ下絵の大型ステンドグラスが4点もあることです。制作は勿論、彼の生涯の盟友ウィリアム・モリスの経営するモリス商会。

聖フィリップ教会は1883年から84年にかけて拡張され、新たにステンドグラスが必要となり、白羽の矢が立ったのがバーン=ジョーンズ。

東側の壁の中央に1885年、「キリスト昇天」を完成させます。

この出来に非常に満足したバーン=ジョーンズと依頼主は、その両側に2つのステンドグラスを追加制作することに合意し、1887年、「キリスト降誕」と「キリスト磔刑」を、その左右に完成させるのです。いずれも主題の選択はバーン=ジョーンズに任されました。

バーン=ジョーンズはこれらの巨大作品への報酬が少な過ぎると不満の言葉を残していますが、10年後、残った西側の壁に着けるステンドグラスの制作を引き受けます。

1897年、彼の死の前年、完成したのが彼の最高傑作とされる「最後の審判」。

赤い衣を着け、力強い赤い羽根の大天使ミカエルが中央で長尺の黄金のラッパを吹きならし、その上に緑色の王冠と暗赤色の光輪を着けた白衣のキリストがいます。

虹色の玉座に坐した彼は、ややうつむき加減で聖痕のある右手は上方、天国を、左手は下方、地獄を指し示しています

玉座が虹色なのは、神がノアに、二度と再びこの世界から人類を滅亡させないと誓約した事を暗示しています。

キリストを取り巻く天使たちは赤い衣を着け、光輪と羽根の色で区別されています。

二分割された下部分では、これから決まる運命の行き先におののく人々が暗黒の建物に囲まれた中で不安げに待機しているのです。

ところで大聖堂から駐車場までバーミンガムの街を歩く途中、3つの奇抜な建物が目につきました。

最初は、高台にある大聖堂からなだらかな坂道を下りた所にある中央駅。ジュラルミンの曲面で覆われ、周囲の景観をその表面に映し出しているのです。中央には大きな眼のような部分があり、ここには映像が表示されたりもします。こんな建物は見たことがありませんでした。

2つ目は、外壁がジグゾーパズルのような十字型の模様で埋められ、所々その模様だけで壁のない建物。何のためにモザイク的に欠けているのか。

3つ目は、まるで鉄条網のような円のマークで四方の壁全てが覆われている建物。その斬新かつ奇抜なデザインに感嘆しました。

後で調べると、2013年に出来たばかりの新しい建物で、地下1階を含む地上4階建て。蔵書約100万冊にものぼるヨーロッパ最大の公共図書館というから驚きです。