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美術館訪問記 - 627 レディ・リーヴァー美術館、Bebington

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:レディ・リーヴァー美術館正面

添付2:レディ・リーヴァー美術館前方の景色

添付3:レディ・リーヴァー美術館内部

添付4:ミレイ作
「過ぎ去りし夢-浅瀬のイサンブラス卿」

添付5:ロセッティ作
「祝福された少女」

添付6:ウィリアム・ホルマン・ハント作
「マグダレン・タワーの五月朝」

添付7:バーン=ジョーンズ作
「魔法使いマリーンの企み」

添付8:ウォーターハウス作
「デカメロン」

添付9:アルマ=タデマ作
「微温浴室」

添付10:コンスタブル作
「イースト・バーグホルトの小屋」

イギリス都市のABC順に戻って次はベビントン。ビートルズの発祥地として有名なリヴァプールとマーシー川を挟んだ対岸にある人口1万6千人足らずの市です。川といっても広い所は幅4㎞もありますが。

2015年の調査ではイングランドで最も住みたい町になった素晴らしい所です。

ここにあるのが「レディ・リーヴァー美術館」。

現在は世界180ヵ国以上に支店を持つ大企業になったユニリーバの創業者で、男爵にもなったウィリアム・リーヴァ―が、夫人の死後、その名を記念して建てた美術館で、1922年の開館。

彼の膨大なコレクションが基になっている美術館は、彼の会社の工場で働く労働者のために、彼が造った理想的な村ポート・サンライトに、労働者たちのために設けられたもの。

大の美術愛好家だったリーヴァーは、美術を学ぶことは個人個人の精神を向上させ、人生をより豊かなものにすると確信していたのです。

当時、入場料は無料でした。現在、この美術館はリヴァプール市内及び近郊の3つの美術館からなる「リヴァプール国立美術館」の一つに組み入れられており、前にも書きましたがイギリスの公立美術館は全て入場無料です。

現在は市となったベビントンに含まれる、この一帯は、今も理想郷らしい美しい佇まいで街全体が美術館と言える程素晴らしいところです。

美術館の前は、中央に、両側に並木の植えられた広い公園が一直線に伸び、その外側に車道と歩道が造られ、リーヴァーが一流の建築家に依頼して建てさせた労働者のための一戸建て住宅800軒が並んでいるのです。ここまでやった経営者というのは寡聞にして聞いたことがありません。

パリの国立美術学校の様式を模して造られた美術館は2階建て。入って直が3部屋を1部屋にした天井まで吹き抜けの大部屋でここにはヴィクトリア朝時代の絵が掛かっています。

ラファエル前派が中心ですが、リーヴァーは最初、自社で製造している石鹸の拡販広告の宣伝に使用するために絵画を購入したので、主たる購買層のご婦人方の心を誘う前派の絵が気に入っていたのです。

リーヴァーの鑑識眼は流石と言うべきもので、各画家の代表作と見做される作品が揃っていますが、中でも一番のお気に入りだったというジョン・エヴァレット・ミレイが9点もありました。

ラファエル前派はその親派も含めて、ロセッティ、ハント、バーン=ジョーンズ、ウォーターハウス、レイトン、マドックス・ブラウン、アルマ=タデマなどと素晴しいコレクション。

ブーシェ、レイノルズ、ゲインズバラ、ターナー、コンスタブル、サージェント、ロムニー、スタッブス、ティソ、エッティ、ファンタン=ラトゥール等もあります。

他の部屋はずっと狭くなりますが、それでも中2階を含め全部で30部屋。個人の建てた美術館としては大きい方でしょう。

絵以外にも当時の富豪らしく陶磁器や彫刻、タペストリー、家具、装身具などが並び、特にウェッジウッドのコレクションは世界有数。

デューラーの木版画も15点余り展示されていました。

ここはリヴァプール観光の一部に組み込まれているようで、日本語のパンフレットも置いてありました。