戻る

美術館訪問記- 623 ボウズ博物館、Barnard Castle

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ボウズ博物館正面

添付2:ボウズ博物館前庭

添付3:ボウズ博物館内部

添付4:銀の白鳥

添付5:グレコ作
「悔悛する聖ペテロ」

添付6:ゴヤ作
「ジュアン・アントニオ・メレンデス・バルデス」

添付7:カナレット作
「大運河でのレガッタ」

添付8:ファンタン=ラトゥール作
「果物と花」

添付9:ティエポロ作
「太陽の馬の利用」

イギリス、グレートブリテン島の中心付近にバーナード・キャッスルという町があります。人口5500人足らずの小さなマーケット・タウンです。

ここにあるのが「ボウズ博物館」。

田舎町には不釣り合いにも見える宮殿のような豪邸です。これが個人の建造物なのですから、これまで紹介して来た一連の邸宅美術館同様イギリスの富の蓄積の奥の深さは測り難い。

この館の建造主はジョン・ボウズ(1811-1885)。第10代ストラスモア伯爵の私生児で、父から貴族称号以外の全財産を受け継ぎ、パリに移り住んで、現在も現役な、バラエティー劇場を購入して運営。

その劇場の花形女優だったジョセフィーヌと結婚。二人は美術愛好家で、収集絵画は1800点、美術的装飾品は15,000点に及びます。

それらを展示する目的で、最初から博物館として故郷に建設したのがこの建物。フランス人の妻の好みによりフランスのシャトー風のデザインが選ばれ、1869年に建設が開始されましたが、完成したのは1892年。二人共、既に死亡していました。

それでも十分な信託財産を残していたので、それによって運営されて来ています。

イギリスの邸宅美術館は庭園も素晴らしいものが多いのですが、ここも例外ではありません。

綺麗に手入れされた庭園を抜けて、3階建ての建物に入ります。元々博物館として造られただけに、天井が高く、特に3階は顔を床に並行にしないと天井がよく見えないほどでした。

内部は絵画や彫刻は勿論、家具、陶磁器類、大量の美術的装飾品、ジョセフィーヌが身に着けていた優雅な衣装の数々などで溢れています。日本の江戸時代の駕籠などもありました。

中でも観光客の一番人気は18世紀製の機械仕掛けの銀の白鳥。本物の白鳥と同じ大きさで、動くと優雅に首を振り、魚を捕らえて呑み込む仕草を見せます。

但し、保存のため、動かすのは毎日14時の一回限り。たまたまYouTubeに登録されていたので興味のある方はご覧ください。=>Youtube

絵画のコレクションではスペイン絵画が78点もあり、イギリスでは突出しています。グレコとゴヤの作品を添付しましょう。

イギリスでは見かけることの多いカナレット作品も、大作が2点ありました。彼の絵にしては朱色の使い方が派手に見えます。

あるいは、前にも一度書きましたが、イギリスではカナレット作品が大切に保管されているため、オリジナルな色彩が保たれ、比較的雑なイタリアでは変色が進んでいるためにそう感じるのでしょうか。

格別の出来のファンタン=ラトゥールの静物画もありました。

他にはティエポロやドラクロア、コロー、クールベ、ブーダン、シスレー等。ティエポロの「太陽の馬の利用」とは、帝政ローマ時代最初期の詩人の一人、オウィディウス作の「変身物語」中の話です。

太陽神アポローンの息子であるパエトーンは、友人達から出自を強く疑われたため、自分が太陽神の息子であることを証明しようと東の果ての宮殿に赴き、父に強く願って太陽の戦車を操縦します。

しかし、御すのが難しい太陽の戦車は暴走し、地上の方々に大火災を発生させます。地を火の海とされた豊穣の女神ケレースは最高神ユーピテルに助けを求めます。ユーピテルは暴走する太陽を止めるためにやむなく雷霆を投じてパエトーンを撃ち殺ししてしまうのでした。

この絵はパエトーンがまさに太陽の馬に近づこうとしている場面です。