戻る

美術館訪問記- 622 ペンリン城、Bangor

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ペンリン城外観

添付2:ペンリン城内の石造りの階段
写真:Creative Commons

添付3:ブレックファースト・ルーム

添付4:レンブラント作
「老婦人像」

添付5:カナレット作
「ウエストミンスター周辺のテームズ川、ロンドン」

添付6:ダイニング・ルーム

添付7:ゲインズバラ作
「森の中」

添付8:レイノルズ作
「初代ペンリン男爵の肖像」

添付9:パルマ・ヴェッキオ作
「聖会話」

添付10:ペンリン城の一角

リヴァプールの西75㎞程の所にバンゴールというウェールズ最古の市があります。アイリッシュ湾に面する海港都市で、人口は1万6千人余り。イギリスでは最小の市の一つです。

ちなみにバンゴールはウェールズ語読みで、英語読みではバンガー。

イギリスは正式名称、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」でグレートブリテン島、アイルランド島北東部、その他多くの島々から成る立憲君主制国家です。

イングランドとスコットランド、ウェールズ、北アイルランドという歴史的経緯に基づく4つの「カントリー(国)」が、同君連合型の単一の主権国家を形成しています。

私は現役時代、多国籍の人々と英語で会話する必要があったので、大概の英語は聞き分けられるつもりでしたが、ウェールズ語は全く理解できなかった。日本でいえば標準語と東北弁の違いよりも差がある感じでした。

このバンゴールの北の丘の上にあるのが「ペンリン城」。

城のの入口と見えた所から更に1マイル進んだ所に城へ続く道の入口がありました。そこの駐車場に車を停め、さらに城までかなり歩きました。

障害者専用の駐車場は城の直ぐ傍にあり、かなり広い。障害者マークのない車が沢山停めてあります。

交通違反取り締まりの厳しいイギリスでも、このような施設敷地内では障害者用の不法駐車は取り締まりの対象外なのでしょうか。

この城は、元々は1438年に建造された石造りの要塞で、それを買い取った、スレートの輸出とジャマイカからの奴隷栽培による砂糖輸入で莫大な富を築いた、ペンリン卿が、1822年から37年にかけて大改造した比較的新しい城です。

1951年、最後の継承者が死亡し、城と、所有物、周辺の160㎢の広大な土地全てがナショナル・トラストへ遺贈されました。

城内は4層からなり、公開されているだけでも49部屋あります。

1859年に訪れられたヴィクトリア女王の宿泊用に作られた、地元ウェールズのスレート岩(粘板岩)製の1トンのベッドや、石膏や石、木彫りの彫刻、家具のコレクションは見事としか言いようがありません。

ただ絵画の展示は、ほぼ2部屋に限られていました。それでも、ウェールズ地方の個人所有だったコレクションとしては最高のものですが。

ここの白眉はブレックファースト・ルームの中央に掛かっていたレンブラントの「老婦人像」でした。

私がペンリン城を訪れたのは2010年ですが、2015年に、この絵を英国外の個人が3千5百万ポンド(約50億円)で購入したところ、輸出許可が下りず、現在ではウェールズの首都カーディフにある国立ウェールズ美術館に展示中とか。

この部屋の左側の壁にはカナレットとベッロットにグアルディというイタリアを代表する風景画家3巨匠の絵が掛かっていました。

他の二人はイタリアの風景画ですが、カナレットはロンドン市内の風景画。

彼は英国で余りにポピュラーだったため、招かれて1746年渡英し、1755年まで居て、英国の風景画を多く残しているのでした。

隣のダイニング・ルームにはゲインズバラの風景画、レイノルズ、ラムゼイ、ロムニーの肖像画などに加え、パルマ・ヴェッキオの「聖会話」がありました。

そこにいた70歳ぐらいの老看視員に、他に見るべき絵はあるのか尋ねたところ、驚いた風で、城内にある全作品リストを取り出して貸してくれましたが、その後、何かと質問してきました。それまで絵に関しての質問は全くと言ってよいほどなっかたと言います。

簡潔に答えていると、仕舞いには手帳を取り出しサインしてくれと言います。見物に行って看視員にサインを頼まれたのは後にも先にもこの時だけでした。

訪れたのは9月初めでしたが、城壁に赤い蔦が張り付いていて風情がありました。

ここも内部の写真撮影禁止で、添付写真はホームページやWebから借用しました。