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美術館訪問記- 620 アニック城、Alnwick

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:アニック城外観

添付2:アニック城内庭

添付3:アニック城内サルーン

添付4:ダイク作
「 第10代ノーサンバーランド伯爵」

添付5:カナレット作
「アニック城」

添付6:ティツィアーノ作
「アルマニャックの司教と彼の秘書」

添付7:アニック城内図書室

添付8:パルマ・ヴェッキオ作
「リュートを持つ女」

添付9:ハリー・パーシーの銅像

都市名のABC順に戻って、次はイギリスを採り上げましょう。

最初はスコットランドとの境界線に近いイングランドの東海岸沿いの小さな城下町アニックにある「アニック城」。

この城は1096年にアニック男爵がスコットランド人の侵入を防ぐ為に建設した要塞でしたが、その後、ノーサンバーランド伯爵パーシー家(後のノーサンバーランド公爵)の所有となったもので、現在も使用されています。

居住城としては、英王室のウィンザー城に次ぎイングランドで二番目に大きいお城なのだとか。

外観はいかにも古城らしい風格があり、内装は洗練されており所有者の趣味の高さが伺えます。

その特徴を活かして、映画ハリー・ポッター・シリーズ「賢者の石」と「秘密の部屋」の他、ケビン・コスナー主演の「ロビンフッド」、ケイト・ブランシェット主演の「エリザベス」など、10作以上の映画のロケ地に使われています。

ここの芝生も、かの有名なホグワーツの庭としてクィディチの試合の場面などに使用されたといいます。

そういう話題性もあってか、主要観光ルートからは程遠い僻地ながら、2012年には80万人を超す訪問客を数えています。

この辺りは厳寒地で、11月から3月までは閉鎖されていますから、月に10万人以上の入場者ということになります。

各部屋にかかる絵画も質が高いのですが、居住城とあってか、内部の写真撮影禁止で、添付写真はホームページやWebから借用しました。

最初の部屋にはクロード・ロランとロレンツォ・ロットがさりげなくあり、目立つ壁にはヴァン・ダイクの当時の当主の肖像画がかかっていました。

次の広い部屋の壁にはカナレットが4点、ティツィアーノが2点。セバスティアーノ・デル・ピオンドの壁画もあります。

隣の部屋は図書室。ここは昔塔だったのを何代目かの当主が図書室に建て替えたのだといいます。しっとりとしてよい造りです。パルマ・ヴェッキオの「リュートを持つ女」がありました。

隣の部屋にはアンドレア・デル・ サルトとティントレット。

これだけのオールド・マスターが揃う美術館は世界でも滅多にないでしょう。これが個人の所有物なのですから、英国の懐の深さは底が知れません。

その上、事前の調べではジョット、ラファエロ、ジョルジョーネ、カラヴァッジョ等の名前もあり、期待していたのですが、これらは昔、城や庭園の改築のために売り払われてしまったという事でした。

中庭に出ると、中央に躍動的な騎士の騎馬像がありました。

これが歴代のパーシー家の中でももっとも有名で「ホットスパー」と綽名されたハリー・パーシー(1364-1403)の銅像。

彼はこのアニック城に産まれ育ち、若いころから戦士としての評判が高く、スコットランドおよびフランスでの戦いに従軍し、その勇猛果敢さで、名を轟かせたのでした。

ホットスパーは今でも「向こう見ずな人」という意味の英語になっており、ホットスパーという人物は、シェイクスピアの「ヘンリー4世」にも登場します。

東京ドーム約3.6個分の広さ(約17万平方メートル)の庭園も付属していました。