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美術館訪問記- 616 感覚ミュージアム

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:感覚ミュージアム前景

添付2:感覚ミュージアム入口

添付5:エアートラバース

添付9:ハートドーム

添付10:1000の小箱

仙台市の北40㎞足らずのところに宮城県大崎市があります。人口約12万8千人。大崎市の中心から北西に12㎞程の場所、江合川沿いにあるのが「感覚ミュージアム」。

「感覚」をテーマとした作品の展示及び演出が鑑賞・体験できるミュージアムで、美術館訪問記の範疇に収まるのかどうかは難しいところです。

それでも、「見る、聴く、嗅ぐ、触れる、味わう」の五感を再認識することで心を癒すとともに感性を磨き、イマジネーションや想像力を高め、人々の心の豊かさを追求する、というのがここの目的なので中らずと雖も遠からずでしょう。

こういうミュージアムは世界中の訪れる価値のある美術館・博物館をほぼ全て虱潰しにまわって来た私にも全く経験ありませんでした。勿論、日本初で2000年の開館。

短い両翼のある横長の平屋造りで鉄筋コンクリート製ですが、前面に赤レンガ張りの特徴ある建物です。東京武道館などの設計で知られる東京藝術大学名誉教授の六角鬼丈が手掛けており、建築作品としても有名らしく建築を学ぶ学生も全国から足を運ぶそうです。

入口を入ったロビーに、見たことのない装置がありました。

「サークル・ン・サークル」と名付けられたこの装置は、車輪についた台の上に寝た状態でペダルを漕ぐことで、装置に固定されたチョークが後ろの壁に線を描いていくというもの。いわば、「人力落書きマシーン」というわけです。

写真撮影可能なのはここまでで、これから先は撮影禁止。従ってこの後の写真はミュージアムのホームぺージからの借用です。

続いて「創作楽器」。木や竹など身近にある素材で作った不思議な楽器です。手やバチでたたいたり、指ではじいたりして奏でられた音を聴きながら、音遊びの世界を楽しむことができます。

次は一番人気の「エアートラバース」。屋根は全面トップライト、壁・床は鏡張り。どこをどのように歩いているのか分からなくなりますが、歩いているうちに空中を歩いているような感覚になります。

続いて光の変化を楽しむ「fuwa pica」。壁にある作品は手のひらで押すと、押した力によって青い光の幅が長くなったり、短くなったりします。床にある作品は強く押せば強く、弱く押せば弱く、青から緑に光が変わります。自分の手と光が同調する不思議な感覚を楽しめます。

その後は光の像が浮かび上がる「ライト3Dスカルプチャー」。体で押すと光ファイバーが内蔵されたピンが浮かび上がり、その先端が光って立体アートが作られます。光の点で顔や手が立体的に浮かび上がる体感型のオブジェ。

約30万本ものこよりで作られた「香りの森」では、樹林に見立てた7本の柱の穴それぞれに7つの香りが仕掛けられています。松、草いきれ、合歓、干し草など。

これらは、感覚ミュージアムがある大崎市岩出山の自然の中の香りをモチーフに作られているそうです。木々の音や鳥の声など岩出山の音も聴こえてきます。

次は感覚ミュージアムのシンボルともいえる「ハートドーム」。その名の通り、ハート型をしたドームの中で「精神浴」をすることができる作品。日光浴や森林浴は聞いたことがありますが、精神浴は聞き慣れない言葉です。

静かな音楽が流れる空間で、かすかな心地よい香りと、少しずつ変化していく色彩を楽しむことができます。ドームの内部にはくぼみがあり、そこに入って体を横にすると、なんとも言えない瞑想感覚に入ってしまいます。

この他にも五感を刺激するエリアが幾つかありましたが、最後に小さな引き出しが約1000個ある「1000の小箱」。

ここは、登録すれば誰でもアート作品を展示することができる市民ギャラリー。来館者はどの引き出しでも開けて自由に観賞できます。どんな作品が飛び出してくるかは開けてからのお楽しみ。

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などを研ぎ澄まして体験する展示物が沢山あり、子供から大人まで想像力を使って楽しめるテーマパークと言えるでしょう。ただ私の訪館時はコロナ感染予防の観点から幾つかの施設は使用禁止でした。



(添付3:福井裕司作「サークル・ン・サークル」、添付4:多田広巳作「創作楽器」、添付6:八木澤優記作「fuwa pica」、添付7:プロダクトデザインユニット作「ライト3Dスカルプチャー」および添付8:石田智子作「香りの森」は著作権上の理由により割愛しました。
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