戻る

美術館訪問記- 602 十和田市現代美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:十和田市官庁街通り、右にあるのが美術館

添付2:十和田市現代美術館前景

添付3:チェ・ジョンファ作
「フラワー・ホース」

添付4:椿昇作
「アッタ」

添付5:ポール・モリソン作
「オクリア」と奈良美智作
「夜露死苦ガール2021」

添付9:草間彌生作「愛はとこしえ十和田でうたう」

添付10:エルヴィン・ヴルム作
「ファット・ハウス」

次は青森県十和田市にある「十和田市現代美術館」。

市役所や税務署、裁判所、図書館などが並ぶ官庁街通りに面して建っています。この通りは「日本の道100選」にも選ばれ、桜と松、合わせて300本以上もの並木が植えられた十和田市の中心街です。

美術館設計者の西沢立衛は、広場と建物が交互に並ぶ官庁街通りの特徴から着想を得て、「官庁街通り全体を美術館と見立てる」コンセプトを設定。

館の外にも幾つもの作品を配し、館内の個々の展示室を、「アートのための家」として独立させ、敷地内に建物を分散配置し、それらをガラスの廊下でつなげています。

各展示室を独立配置させることで、それぞれのアート作品にあわせて建築空間を造ることができ、両者がより密接な関係を結ぶことができるという発想です。

美術館入口前にあるのは韓国を代表するアーティスト、チェ・ジョンファによる「フラワー・ホース」。全身をカラフルな花々で覆われた巨大な馬のオブジェは、十和田市現代美術館を象徴する作品の一つとなっています。

堂々たる体躯とカラフルな色彩は、通りを四季折々に彩る花々の存在、そして十和田市の未来の繁栄を象徴しているそうです。

通りに面したガラスの廊下脇の庭にはロボットのような巨大彫刻、椿昇作「アッタ」。真っ赤なハキリアリが突然変異で巨大化したような、インパクトのある作品です。

同じく通りに面したカフェの入った建物の外壁面にはイギリスのポール・モリソン作「オクリア」。神話に出てくるリンゴの木をモチーフにした白黒の絵です。

あえて色を使わないのは、観る人それぞれに自由に色を想像してもらいたいという思いからなのだそうです。

その横面にあるのは奈良美智作「夜露死苦ガール2021」。一目で奈良の作品とわかる世界的なトレードマークになっている少女像。

これらの作品で非日常的な空間に入る心の準備をして美術館に入ると、虹色の床が目を楽しませてくれます。この床も「ゾボップ」と題されたイギリスのジム・ランビー作品。

美術館の外の通りからもガラス越しに見られるよう意識されていて、絵画でも彫刻でもない、空間と一体化した異次元の世界をつくり出しています。

最初の部屋には高さ4m近い巨大な女性像。たまたま後方にいた入場者と比べるとその大きさが理解できるでしょう。肌、皴、透き通って見える血管、髪の毛の一本一本にいたるまで、克明に再現されており、圧倒的な存在感で迫って来ます。

作者はオーストラリアのロン・ミュエク。

馬や蟻の巨大作品同様、対象物を巨大化してみるというのは現代美術作家の常套手段なのでしょう。

高さ9mの、十和田市美術館の中で最も大きな展示室には、数万体の樹脂製の人型彫刻を肩車をするように、天井から放射状に吊り下げた韓国人のスゥ・ドーホー作「コーズ・アンド・エフェクト」もありました。

この作品は赤、橙色、白色のグラデーションの樹脂人形が、生命の華やかさを感じさせる一方で、常に生と死は表裏一体の関係であり、長い時間の中で連綿と繰り返されていくという、輪廻転生的な考えを表現しているのだとか。

現代美術の分野で活躍する国内外のアーティスト33組による38の常設作品が展示されているということなので、とても全部は紹介できませんが、ここに来たら官庁街通りを挟んだ前の広場にも目を向けない訳にはいきません。

そこには日本が世界に誇る現代美術家、草間彌生が手掛けた「愛はとこしえ十和田でうたう」が展開しており、彼女の専売特許とでもいうべき華やかな水玉に彩られて、十和田の街を生き生きと力強く、色鮮やかな世界に変貌させようと試みているかのようです。

更に少路を隔てた場所にはオーストリアのエルヴィン・ヴルム作成の「ファット・ハウス」がありました。西洋風の庭に太った家という奇抜な造形で我々の固定概念を揺さぶろうとチャレンジしてくるのです。

この一帯は、別に改めて美術館に入らなくても、通りと広場をそぞろ巡るだけで、大人も子供も何やら楽しく、心躍る場所となっています。



(添付6:ジム・ランビー作「ゾボップ」、 添付7:ロン・ミュエク作「スタンディング・ウーマン」および添付8:スゥ・ドーホー作「コーズ・アンド・エフェクト」は著作権上の理由により割愛しました。
 長野さんから直接メール配信を希望される方は、トップページ右上の「メール配信登録」をご利用下さい。管理人)

美術館訪問記 No.603はこちら

戻る