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美術館訪問記- 601 青森県立美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:青森美術館正面

添付2:青森美術館入口

添付3:夕闇に浮かぶシンボルマーク 写真:青森美術館HP

添付4:青森美術館エレベーター内部

添付9:マティス作
「赤い室内の緑衣の女」
写真:青森美術館HP

フランス都市のABC順もまだやっとAが終わった所ですが、既に23回も費やしており、フランスばかり続くのも興醒めでしょうから、もう、3年間、複数回続けては触れていない日本を採り上げましょう。

日本はいままで登場したことのない東北地方を北から観て行きましょう。

私は世界の主要国についてはこれまでのABC順でもおわかりのように、訪れる価値のある美術品を有する美術館や教会、邸宅などを虱潰しにほとんど全て歴訪して来ていますが、日本だけはそうではありませんでした。

東北地方のみは外国を車で移動できなくなった時に備えて一度も訪れることなく手付かずにとっておいたのです。ところが2020年初に発生したコロナ禍でその年は外国に行けなくなり、想定時期よりはかなり早くなりましたが、保存していた東北地方を巡る事にしたのです。

従ってこれから触れる東北地方の美術館は、私が旅をした2020年秋に改修や特別展準備、コロナのためなどで閉館していたものは含まれていません。

まずは東北地方最北の青森県青森市にある「青森県立美術館」。

青森市西部にある日本最大級の縄文集落跡・三内丸山遺跡に隣接した美術館で、その遺跡と呼応するかのように、館内外にトレンチ(溝)と呼ばれる半地下空間を設け、土壁の展示空間もある縄文と現代を融合するかのような他に例のない地域密着型の美術館となっています。

遠くから一見したところ外壁は白一色の近代的ビルディングに見えますが、近づいて見ると、土壁の雰囲気のある、時代を感じさせる造り。2006年の開館です。

館内のシンボルマークやロゴタイプは全てVI(ビジュアル・アイデンティティ)を採用しており、例えば、入口右上は青く光る木を数多く並べたマークで青い木がたくさん集まって森になる、つまり「青森」を表現しています。

太陽が沈むころ、暗闇に出現する「青森」のイメージを美術館のホームページから借用しました。

ロッカーの番号から消火器の案内表記に至るまで、館内にある文字のフォントやピクトグラム(案内サイン)のデザインも全てオリジナルなのだとか。

これらをデザインしたのはアートディレクターの菊地敦己。エレベーター内に階数を示す番号がないのも変わっていました。

この美術館のシンボルともなっているのが地元青森県出身の奈良美智(なら よしとも)の手になる、「あおもり犬」。

高さ約8.5メートルの巨大彫刻で、トレンチの間に設置してあり、この彫刻は入場料を払わなくても外部からも見物できるようになっていました。

奈良美智は草間彌生と並んで、海外の美術館でも作品を見かけることの多い世界的な著名芸術家で、他の日本人画家の作品は藤田嗣治以外、全く見ることがないのに比べ、日本人アーティストとして気を吐いています。

奈良美智は2016年12月に青森県立美術館10周年を記念して、高さ6mを超えるブロンズ像、「Miss Forest / 森の子」も付け加えています。

「あおもり犬」に勝るとも劣らないここの名物がシャガール作バレエ「アレコ」の巨大舞台装飾画4点(各縦9m、横15m)。4層分に相当する高さ19m、1辺21mの大ホールの四方の壁に展示されています。

巨大な画面の中にシャガールの色彩への情熱がほとばしっていました。

しかしながら青森美術館所有はこれらの内3点で、残りの一つはフィラデルフィア美術館からの借り物。2021年4月には返還するそうですから、4点を纏めて観られたのは幸運でした。

撮影可なのはここまでで、他の展示室は撮影不可でした。もっとも東北地方の他の県立美術館は撮影可のところもあるので、この美術館訪問記が皆さんの目に触れる頃には可になっているかもしれません。

他には青森県出身の馬場のぼるや佐野ぬい、棟方志功などの作品に加え、マティスの良品もありました。



(添付5:奈良美智作「あおもり犬」、添付6:奈良美智作「Miss Forest / 森の子」、添付7:アレコホールおよび添付8:シャガール作「ある夏の午後の麦畑」フィラデルフィア美術館蔵は著作権上の理由により割愛しました。
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