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美術館訪問記- 588 アミアンのノートルダム大聖堂、Amien

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:アミアンのノートルダム大聖堂正面

添付2:ガーゴイル

添付3:王のギャラリー

添付4:正面中央入り口

添付5:正面中央入り口上部彫刻「最後の審判」 写真:Creative Commons

添付6:正面右手南画の聖母マリアの入り口

添付7:大聖堂内部

添付8:ステンドグラス

添付9:北側のサン=ルー地区から見た大聖堂

添付10:サン=ルー地区の運河にあった彫像

元のABC順に戻って、前々回のピカルディ美術館から北東に600mも行くと、「アミアンのノートルダム大聖堂」があります。「アミアン大聖堂」とも。

ゴシック様式ではフランス最大の教会で、パリのノートルダムの2倍の大きさ。高さ56m、奥行き145m、幅49mで身廊の高さは国内で最も高い42.3m。北塔の高さは68.2m、南塔は61.7m。

この大聖堂は1220年から1288年という、中世の大聖堂としては著しく短期間で建設されました。そのため均質の、全体に均整のとれたフォルムとなっています。

例外は北と南の塔で高さと上部形状がが左右で異なります。こういう左右非対称の大聖堂というのは他でもたまに目にします。だいたいは左右の塔の建築時期がずれた、というのが理由のようですが、建築時期がずれ、設計・施工者が変わると、デザインも変えてしまうところが個人主義の強いフランス人気質なのでしょうか。

19世紀には建築家ヴィオレ=ル=デュクが大聖堂ファサードの天使像やガーゴイルの装飾、階上廊の修復に携わり、輝くような美しさが蘇りました。

ガーゴイルとは、雨樋の機能をもつ、怪物などをかたどった彫刻のことで、主として西洋建築の屋根に設置され、雨樋から流れてくる水の排出口としての機能を持っています。このため建物から突き出しています。日本語では樋嘴(ひはし)ともいいます。

正面ファサードの見どころは、王のギャラリーに並ぶフランス歴代国王の巨像22体、13世紀に作られた像群で、1体が375㎝あります.その上部のステンドグラスのバラ窓となっています。

聖堂の内外には、天地創造や聖書に関わるモティーフ、キリストの生涯や最後の審判などの彫像が彫り込まれており、「石の百科全書」と呼ばれ、文字の読めない人たちの聖書理解の手助けとなっていました。

正面中央扉口上部の三角形部分には、最後の審判を下すキリストの彫刻があり、現在では褐色の彫刻ですが、制作当時は色が鮮やかに施されていたらしく、険しい表情をしたキリストの目は、青く塗られていたのだとか。

キリストの2段下の層には、中央で天秤を持っている大天使ミカエルと両隣にラッパを吹く天使が見られます。

ラッパを吹く天使が死者を蘇らせ、死者と生者がともに最後の審判を受け、大天使ミカエルが天秤で一人ひとりの魂の重さをはかり、天秤の左側が傾けば天国へ、右側が傾けば地獄へ落ちるという何とも厳しい場面です。

その上の層には、天国へ行く者と地獄へ落ちる者たちで、洋服を着ている者たちは天国へ、裸で泣き叫ぶ者たちは地獄へ落ちていくのです。

これらの下の扉中央には穏やかな表情のキリストが鎮座し、上部の最後の審判のキリストの険しい表情と対比的で、このキリストを囲むように、キリストの使徒・預言者の像が左右に並んでいます。

三つある扉口の内、ファサードに向かって右手、南側の扉口は、聖母マリアが中央に据えられ、北側の扉口中央には、大聖堂の初代司教を務めたアミアンの守護聖人フィルマンが据えられています。

聖堂内部に入ると、まず身廊の高さに圧倒され、次にステンドグラスの美しさに息を呑むのです。

聖堂内部にも外観装飾と同様に数多くの優れた装飾や彫像がありました。中世の人々の神への畏れとそれを利用した教会の権横を思いつつ、それらを眺めながら暫し堂内をさ迷ったことでした。

大聖堂を出て、小さな家々とカフェ、レストラン、骨董品店が並ぶ運河に囲まれた北側のサン=ルー地区をそぞろ歩いていると、運河の中に人が一人立っているではありませんか。何事かとよく見ると人間そっくりに作られた彫像。

誰が何のために設置したのか知りませんが、こんなものがあったのは、私が周遊した42か国中でもここだけです。