前回のラジョーネ宮下の通路を抜けると目前に現れるのが「コッレオーニ礼拝堂」。
ロンバルディア・ルネサンス建築の傑作の名に恥じない華麗な姿です。
当時ベルガモを支配していたヴェネツィア共和国の傭兵隊長でベルガモの領主だったバルトロメオ・コッレオーニが、自分の墓として建てさせたもので、1476年完成。
日光東照宮を思わせるジョヴァンニ・アントニオ・アマデーオ設計の絢爛豪華なファサード。付け柱、扉口、バラ窓、縦窓、小回廊を構成する要素の全ては、白とバラ色の大理石の上張りによって覆われ、まるで象牙細工のよう。
八角柱を絞って太鼓を逆にしたような形のドームや、ドームの先端に燭台のような尖塔が乗せられているところに特徴があります。
他に例をみない建築様式のバランスのとれた美しさは「バラ色の真珠」と呼ばれており、正面には、旧約聖書などを題材にした精緻な彫刻が施されています。
ファサードは白・赤・黒の多色の大理石を菱形状に組み合わせたデザインで、入り口の上はバラ窓が配され、その両脇にはガイウス・ユリウス・カエサルとトラヤヌス帝のメダリオンが埋め込まれています。
内部は正方形の大きな部屋と、祭壇がある小さな部屋に分かれており、コッレオーニの墓所が入口と向かい合う側の壁に置かれています。
その墓所は、凱旋門風のアーチに囲まれた中に、ニュルンベルクの彫刻家によりキリストの生涯やライオン、傭兵隊長姿の騎馬像などの彫刻が施されています。
部屋の左側にはアマデーオ作のコッレオーニの娘メデアの墓所が置かれています。その傍にアンゲリカ・カウフマンの「聖家族」がありました。
1789年作と彼女が48歳でローマに住んでいた頃ですが、肖像画や歴史画の多いカウフマンの宗教画は大変珍しい。
この礼拝堂が洗礼者ヨハネにも捧げられているため、キリスト親子に幼い洗礼者ヨハネが彼のシンボルである十字架を持って描かれています。女流画家らしい家族間の愛情溢れる甘美な表現はベルガモ市民に喜ばれたとか。
他にも1732年から33年にかけて描かれたティエポロの天井画とフレスコ画9点で構成された「洗礼者の生涯」があります。
第176回のウーディネ大司教館の仕事で、一躍イタリア一のフレスコ画の名手と謳われたティエポロは、方々から声がかかるようになり、ここベルガモまで足を運んでいたのです。当時家族と住んでいたヴェネツィアから、ここまで往復するのは容易ではなかったでしょうが。
礼拝堂の横に添うようにして建っているサンタ・マリア・マッジョーレ聖堂は、12世紀のロマネスク時代に基盤が作られ、以後さまざまな手が加えられて、16世紀バロック様式によって完成されました。
赤い2頭のライオンと繊細な細工が施された柱廊のファサードは著名な彫刻家ジョバンニ・ダ・カンピオーネが手掛けたもので、赤いライオン像が支える円柱にはヴェローナ産の大理石が使われています。
入口の上階部分には聖バルバラ、聖ヴィンチェンツォ、聖アレッサンドロ像が置かれていて、最上階のニッチ部分には聖母子像が置かれています。
この優雅な入口は実は聖堂の左側の翼廊へ通じており、本来の正面は司教館の壁と一体化していて出入口は作られていないのです。
教会内部には16、17世紀に造られたタペストリーが至る所に飾られ、金色に輝くその空間性はまさに豪華なバロック様式の見本と呼べる美しい調和を保っています。
なおコッレオーニ礼拝堂内は撮影禁止のため、堂内写真はWikipediaとWebから借用しました。