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美術館訪問記-324 コクトー礼拝堂

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:コクトー礼拝堂

添付2:コクトー礼拝堂外壁とモザイク

添付3:コクトー礼拝堂入口

前回の国立フェルナン・レジェ美術館のあるビオットの南西20㎞程の所に フレジュスという町があり、ここに第121回のフジタ礼拝堂で藤田嗣治が したようにジャン・コクトーが設計・外装・内装全てを手がけた礼拝堂があります。

ニースの銀行家ジャン・マルティノンの依頼で造った「コクトー礼拝堂」。

ジャン・コクトーは藤田嗣治とも交流があったフランスの芸術家で、 詩人で画家として著名であるだけでなく、小説家、劇作家、評論家、映画監督、 脚本家、陶芸家としても活躍した才人でした。

礼拝堂は人里離れた林の中にあります。

未舗装の空き地が駐車場になっており、ゲートがあり、車は進めません。 そこから未舗装道路が林の中へと伸びていました。歩くこと500m足らず、 林が少し開けた場所に平屋の小さな建物がありました。

石積みの6角形で、外壁にはそれぞれの平面に3つずつアーチがついています。 1m程の回廊に囲まれて白壁の6角形の本堂があり、前の3面の中央に コクトーの奇抜なデザインのステンドグラスが嵌まっています。

他の3面にはコクトーの下絵によるモザイク画がありました。 中央の面のステンドグラスは開き扉になっています。 そこから中へ入ると中は白壁で6角形の各面が巾着絞りの形で中央に向って 狭まって行き、中央天井には丸い光取りの穴が開き、空色一色に 中央が6角形に隈取られたシンプルなステンドグラスが嵌まっていました。

その天井まで内壁全てがコクトーの薄いパステルカラーのフレスコ画で 埋め尽くされています。

新約聖書から採ったキリストの受難の物語と十字軍遠征の数場面が散りばめられて いますが、コクトーらしい中性的なイメージ像やバラの花等も所々にあります。

床は明るい色彩のタイル張りで、ひしゃげた6角形の組み合わせになっており、 それぞれのタイルが薄いブルーから黒に近い群青色までの グラデュエーションを持っています。 床の中央には真紅の十字架が埋め込まれています。

コクトーが1961年に着手したのですが完成前の1963年死去。 エドゥアール・テルミが引き継ぎ完成させたものです。 「芸術家は自分の芸術について語ることはできない。 植物が園芸を語れないように」という言葉を残したコクトーは 藤田嗣治がしたように、自己の総決算として この礼拝堂に自分の芸術を語らせようとしたのでしょうか。

(添付4:コクトー礼拝堂内部、添付5:コクトー礼拝堂天井、添付6:コクトー礼拝堂壁の一部および添付7:コクトー礼拝堂の床は著作権上の理由により割愛しました。
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