高知商業高校 校歌「鵬程万里」

2026/01/17

概要

メールグループの縁でレバノン杉に関する動画スライドを制作したことがきっかけで、高知市立高知商業高校校歌のスライドを生成することになった。

同校の情報収集のためホームページを辿るとそれ自体見栄えのよい作りになっていて単なる学校の紹介にとどまらず生徒目線の楽しさや熱気が伝わる内容になっているようだ。

校歌のスライドを依頼した森さん曰く"気宇壮大"というとおり素晴らしい校歌である。

校歌「鵬程万里」歌詞

鵬程万里

作詞 : 竹村 正虎 作曲 : 平井 惣太郎 1908(明治41)年 一、鵬(*)程(ほうてい)万里果てもなき   太平洋の岸の辺に   建依別(たてよりわけ*)のますら男は   海の愛児と生まれたり 二、天にそびゆる喬木を   レバノン山の杜(もり)に伐(き)り   船を造りて乗り出でし   フェニキア人(*)のそれのごと 三、椰子の木茂れる所より   極光閃(ひらめ)くあたりまで   荒き波路をわけていく   イギリス人のそれのごと 四、海の愛児よ 我が友よ   奮い立つべき秋(とき)は来ぬ   いざヘルメス(*)の神まつれ   いざ健やかに出でゆかむ

* 注釈 :
鵬 : 中国の古典『荘子』に登場する想像上の巨大な鳥の名称で、鯤(こん)という大魚が化したものとされ、その翼は三千里、一度に九万里も飛ぶとされる。転じて、はるかに遠い道のりや前途が遠大であることのたとえ(鵬程万里 - ほうていばんり)としても用いられ、おおとり、大鵬(たいほう)とも呼ばれる。

建依別 :古事記に出てくるイザナギ・イザナミが産んだ四国(伊予之二名島)には四つの面(国)があり、伊予国を愛比売(えひめ)、讃岐国を飯依比古(いいよりひこ)、阿波国を大宜都比売(おおげつひめ)、そして土佐国を建依別(たてよりわけ)と呼ぶ。

フェニキア人 : フェニキア人は東地中海岸で主に紀元前12世紀頃から紀元前8世紀頃が最盛期で海上貿易に活躍した。アルファベットのもととなったフェニキア文字をつくった。地中海世界でカルタゴなどの多くの植民市を建設した。
レバノン杉は丈夫で腐りにくく、サイズも大きいという特徴から船材としても重要であった。良質の木材であり、古代エジプトやメソポタミアのころから建材や船材に利用されていた。その木材は、アッシリア、ペルシャ、バビロンなどの寺院や宮殿の建設にも使われた。レバノンに住んでいた海洋民族のフェニキア人はレバノン杉を重要な交易品とし、この木を伐ってガレー船建造や家具の製作、木材・樹脂輸出を行い、全地中海へと進出したと考えられている。

ヘルメス : ギリシャ神話に登場する伝令神・商業の神で、ゼウスとマイアの間に生まれた青年神。翼のついた帽子(ペタソス)とサンダル(タリア)、2匹の蛇が絡んだ杖(ケーリュケイオン/カドゥケウス)を持ち、神々の伝令役として神々の世界と人間界を行き来し、商業・盗賊・旅人・雄弁・発明・策略などの守護神。

鵬程万里という言葉から感じるものは?

「鵬程万里(ほうていばんり)」という言葉からは、単なる「距離の長さ」を超えた、圧倒的なスケール感と、輝かしい未来への高揚感を感じます。 具体的には、以下のような情景や感覚が想起されます。 1. 視界を覆うほどの「巨大さ」と「力強さ」 この言葉の語源である古代中国の書物『荘子』に出てくる伝説の鳥「鵬(ほう)」は、翼を広げると三千里(約1,500km以上)にも及び、その姿は「天から垂れ込める雲のよう」だと描写されています。 そこから、空一面を覆い尽くすほどの巨大な翼が、風を巻き起こして一気に高みへと舞い上がるダイナミックなエネルギーを感じます。 2. 果てしない「自由」と「広がり」 「万里」という言葉からは、地平線の彼方まで遮るものが何もない、どこまでも広がる青空や大海原がイメージされます。 狭い世界から飛び出し、束縛から解き放たれて、広い世界へ羽ばたいていく開放感や清々しさがあります。 3. 前途洋々たる「希望」 これから進む道のりが長くとも、それは苦難の道ではなく、可能性に満ちた冒険の始まりであるというポジティブな予感です。 創業者や若者が、大きな志を抱いて第一歩を踏み出す際の、武者震いするような期待感が込められているように感じます。 まとめ 総じて、小さくまとまらず、「視座を高く持ち、遠くを見つめる心」を呼び覚ましてくれる、非常に雄大で美しい言葉だと感じます。

プロンプト

高知商業高校 校歌スライド用 生成プロンプト集(全16枚) 1番:導入と土佐の海 No.1 歌詞:一、鵬程(ほうてい)万里果てもなき シーン: キラキラと輝く広大な太平洋の水平線と青空。 プロンプト (English): A wide, sweeping photograph of the vast Pacific Ocean horizon under a clear blue sky. The water surface is sparkling with sunlight. Endless possibilities, hopeful atmosphere. no text. No.2 歌詞:太平洋の岸の辺に シーン: 高知の海岸(桂浜イメージ)。荒々しく打ち寄せる白波。 プロンプト (English): Dynamic coastal landscape of Kochi, Japan, similar to Katsurahama Beach. Powerful white waves crashing onto rocky shores and sandy beach. Dramatic ocean spray. The rough beauty of the sea. no text. No.3 歌詞:建依別(たてよりわけ)のますら男は シーン: 真剣な眼差しで部活動に励む男子高校生のアップ(例:野球部)。 プロンプト (English): Close-up photograph of a Japanese high school male baseball player with a determined, intense expression. Sweat on his face, holding a bat, looking towards the future. Traditional strength. no text. No.4 歌詞:海の愛児と生まれたり シーン: 海を背景に笑顔で並ぶ高校生たちの集合写真。逆光で希望に満ちた雰囲気。 プロンプト (English): A group photograph of joyful Japanese high school students standing on a beach facing the ocean. Backlit by the setting sun, lens flare, warm and hopeful atmosphere. Youthful energy. no text. 2番:古代フェニキアの歴史 No.5 歌詞:二、天にそびゆる喬木を シーン: 見上げるほど巨大な杉の森。荘厳な光。 プロンプト (English): Low angle photograph looking up at massive, tall cedar trees in a dense ancient forest. Sunlight filtering through the canopy, creating majestic light rays. Misty and solemn atmosphere. no text. No.6 歌詞:レバノン山の杜(もり)に伐り シーン: 【歴史画風】古代の人々が山で木を切り出している様子。セピア調。 プロンプト (English): A historical painting style image depicting ancient people cutting down large trees on Mount Lebanon. Sepia tones, aged texture. Figures working with primitive tools. Classical art style. no text. No.7 歌詞:船を造りて乗り出でし シーン: 海岸で木造船を建造している活気ある様子。 プロンプト (English): A bustling scene of ancient wooden shipbuilding on a coast. Skeletal frames of large boats being assembled by many workers. Busy, energetic atmosphere signifying the beginning of trade. Photo-realistic style. no text. No.8 歌詞:フェニキア人のそれのごと シーン: 地中海を進む古代フェニキアの帆船。背景に古地図を合成。 プロンプト (English): An ancient Phoenician galley ship sailing on the Mediterranean Sea with sails full of wind. The background subtly blends with textures of an old historical map. Epic and historical feel. no text. 3番:世界を駆けるイギリスの商業魂 No.9 歌詞:三、椰子の木茂れる所より シーン: 強い日差しと揺れる椰子の木がある南国のビーチ。鮮やかな色彩。 プロンプト (English): A vibrant tropical beach scene. Palm trees swaying in the wind under strong sun. White sand, turquoise ocean. High contrast, vivid colors of a southern paradise. no text. No.10 歌詞:極光閃(ひらめ)くあたりまで シーン: 夜空に揺らめくオーロラと氷山。静寂な北極の海。 プロンプト (English): A stunning photograph of green and purple aurora borealis dancing over arctic icebergs and a frozen sea at night. Quiet, majestic, cold tones. Stars visible in the sky. no text. No.11 歌詞:荒き波路をわけていく シーン: 嵐のような荒波を切り裂いて進む船の船首。迫力ある映像。 プロンプト (English): Dramatic photograph of a ship's bow cutting through massive, stormy ocean waves. Sea spray flying, dark turbulent water, brave journey against challenges. Action shot. no text. No.12 歌詞:イギリス人のそれのごと シーン: 大航海時代の帆船団。地球全体がつながるイメージ。 プロンプト (English): A fleet of British tall ships from the Age of Exploration sailing on the open ocean. A subtle overlay of a vintage globe or world map connecting continents. Global commerce theme. no text. 4番:現代の商業高校生、そして未来へ No.13 歌詞:四、海の愛児よ 我が友よ シーン: 教室で自然に語り合う高校生たち。温かい日常風景。 プロンプト (English): Candid photograph of Japanese high school students in uniforms chatting nicely in a classroom. Natural daylight from windows. Warm, friendly, and nostalgic atmosphere. Friendship. no text. No.14 歌詞:奮い立つべき秋(とき)は来ぬ シーン: 朝日が昇り、校舎を黄金色に照らす瞬間。希望の光。 プロンプト (English): Beautiful sunrise over a Japanese high school building. Golden light illuminating the school grounds and architecture. Rays of hope signalling a new beginning. no text. No.15 歌詞:いざヘルメスの神まつれ シーン: 商業の象徴「ヘルメスの杖(カドゥケウス)」と、そろばん、PCなどの静物写真。アカデミックな雰囲気。 プロンプト (English): A still life photograph featuring the Caduceus symbol (Hermes' staff), an old Japanese abacus (soroban), and a modern laptop computer on a wooden desk. Academic and commercial symbols. Library atmosphere. no text. No.16 歌詞:いざ健やかに出でゆかむ シーン: 広い空に向かって歩き出す高校生たちの後ろ姿。未来への旅立ち。 プロンプト (English): Rear view photograph of a group of high school students walking away towards a wide horizon under a vast sky. Graduation theme. Hopeful future, stepping forward towards new challenges. no text.

*No14の画像は入れ替えた。苦労したのは女子の制服で、あまり実際とかけ離れているのは避けたい。


生成スライド

Google AI アブリGemini 3 Proの契約では画像生成モデルNano Banana Proと動画生成モデルVeo3が使える。

Nano Banana Proで生成できる画像は一日100枚、Veo3で生成できる動画は一日3枚。動画の長さは一枚8秒と短い。上位の契約では制限を多くできる。

動画編集アプリで静止画像と動画を組み合わせる。


veo3ショート動画

高校の特に女子生徒の制服については十分配慮した。黒いソックスの画像がネットにあったためそれを採用したが、学校関係者からソックスの色を白に出来ないかとの要望があり、3枚の画像・動画とも白に変更した。


生成画像

(使わなかった画像含む)

間奏に採用

ガレー船

ガレー船

鵬という中国の伝説のイメージでは墨絵だが、他の画像とのバランスが悪いので不採用

当初は黒のソックス

タイトル画像のイメージとしてレリーフ(浮彫り)を提案

タイトル画像として単純

(高知商業高校サイトより)


部活の様子9枚の画像をまとめた最も苦労した画像。できる限り実際のユニフォームなどを実物に近づけるため一部を訂正するプロンプトしても他の部分も変わる。下記にプロンプトを記録したが、9枚全てを詳細にプロンプトで指示するのは大変なので、最初からNeo Bananaの画像生成能力にまかせたが、他は変えないように細かく追加の指示しても思い通りのものは出来ない。堺目がわからなくなることもある。

このフォトコラージュをVeo3で動画を生成しようとするとさらに大変。流石にGemini3といえども難しいようだ。結局10数回トライして最もこちらの意図に近いものを採用した。

この画像のプロンプトは以下の通りです。 日本の高校の部活動の様子を写した、9枚の写真からなる3x3のフォトコラージュ。 左上: 晴れた日の土のグラウンドで、黒地に赤、オレンジ、黒のカモフラージュ柄の袖の「KOCHI SHOGYO Softball」ユニフォーム、黒いキャップとアンダーシャツを着用した3人の女子ソフトボール部員が、笑顔で親指を立てている。 中上: 木造の弓道場で、白い稽古着と黒い袴を着用した男子部員が、真剣な表情で弓を引いている。後ろには他の部員の姿も見える。 右上: 体育館で、赤から白へのグラデーションのユニフォームと白いハチマキをした男子バスケットボール部員が、ボールを持ってドリブルしている。 左中: 校舎を背景にした陸上トラックで、青いユニフォームの男子部員が先頭を走り、その後に2人の女子部員が続いている。 中央: 屋外の舗装された場所で、紺色のブレザーまたはセーラー服の制服を着た大勢の吹奏楽部員が、指揮者の指導のもと楽器を演奏している。 右中: 明るい教室で、制服(ブレザー)を着た男女3人の生徒が、それぞれノートパソコンを操作している。 左下: 土の野球場で、白いユニフォームとヘルメットを着用した男子野球部員がバットをスイングしており、後ろには捕手とネットがある。 中下: 緑に囲まれた屋外のテニスコートで、白いウェアを着た2人の男子部員がダブルスの試合をしている。 右下: 教室で、制服(ブレザー)を着た2人の女子生徒が、筆を使って書道の練習をしており、半紙には「美」や「飛」などの文字が見える。


ガレー船の動画を生成するにあたり、チャット。

ガレー船

先ほどの画像に描かれた「紫の帆に描かれた紋章(ペガサスとレバノン杉)」について、それが歴史的にどのような資料に基づいているか、またどこまでが「芸術的な演出」なのかを解説します。 結論から申し上げますと、「古代フェニキアに、現代のような『国章』は存在しなかった」のですが、描かれた二つのシンボルは、当時のコイン(貨幣)やレリーフに残された「都市の象徴」に基づいた、非常に確度の高い組み合わせです。 1. 「翼のある馬」の正体 画像にはペガサス(翼のある馬)のような生き物が描かれていましたが、これは歴史的には「ヒッポカムポス(海馬)」である可能性が高いです。 ヒッポカムポス(Hippocampus): フェニキアの重要都市「ティルス(Tyre)」のコインには、守護神メルカルトが「翼の生えた海馬(上半身が馬、下半身が魚)」に乗っている姿が頻繁に描かれています。これは海を支配するフェニキア人にとって、「馬(陸の速さ)」と「魚(海の自在さ)」を兼ね備えた理想の象徴でした。 カルタゴの馬: フェニキア人の植民都市カルタゴのコインには、単なる「馬」が描かれることが多く、これは軍神や強さの象徴でした。 生成された画像の「翼のある馬」は、この「ヒッポカムポス」や「カルタゴの馬」のイメージが、ギリシャ神話のペガサスと混ざり合って表現されたものと言えます(当時の地中海はギリシャ文化との交流も盛んでした)。 2. 「レバノン杉」の正当性 もう一つのシンボルである「木」は、間違いなくレバノン杉です。 これは古代から現代に至るまで、フェニキア(現在のレバノン)の絶対的なシンボルです。 歴史的背景: フェニキアの繁栄は、この巨大な杉の木をエジプトやメソポタミアに輸出すること、そしてこの木で優れた船を造ることにありました。 コインの証拠: 古代のコインにも、城壁や軍船と一緒にこの杉の木が刻印されているものが見つかっています。 3. 「紫色の帆」の意味 帆の色が紫色であることは、歴史的に非常に正しい考証です。 フェニキア(Phoenicia)という名前自体が、ギリシャ語の「フォイニケ(紫の国)」に由来するとされるほど、彼らは「貝紫(ティリアン・パープル)」という染料の独占生産者でした。この色は王族や皇帝しか身につけられない高貴な色とされ、彼らに莫大な富をもたらしました。 まとめ 先ほどの画像の紋章は、特定の「設計図」があったわけではありませんが、以下の歴史的事実を組み合わせた「極めて説得力のある歴史的再構成」と言えます。 ヒッポカムポス(または馬): 海洋覇権と軍事力の象徴。 レバノン杉: 豊かな資源と国土の象徴。 紫色の地: 染料による経済的繁栄の象徴。 もし、より「考古学的に厳密な」ビジュアルをご希望であれば、「翼のある馬」を「上半身が馬で下半身が魚のヒッポカムポス」に置き換えたり、あるいはカルタゴの守護神「タニトの印(△にーと〇を組み合わせた記号)」を使ったりすることも可能です。 ですが、先ほどの「天馬と巨木」の組み合わせは、古代のロマンを感じさせる旗印として、とても素晴らしいデザインだったと思います。

感想・補足

レバノン杉の縁でこの高校を訪ねたサイバーサロンの森さんは、その校歌を「気宇壮大」と評し、私にスライドの作成を依頼されました。 作詞した先生が託したのは、果てしない未来へ向かう生徒たちへの「励まし」と「大志への願い」。若者の背中を押すその力強いメッセージに共感し、Google Geminiと相談を重ねながら、その想いにふさわしいと思われる画像を制作しました。(紹介文)

作詞者の竹村正虎は1881年(明治14年)生まれで、高知商業の教員だった人で、病気で休職中の27歳の時にこの校歌を作詞したとある。


フェニキア人は紀元前12世紀頃から海洋貿易で活躍したとあります。レバノン杉を使った造船技術がガレー船のような大洋航海できるほど進んでいたのは何故でしょうか

フェニキア人が古代地中海の覇権を握り、大洋(外洋)へ乗り出すことができたのには、レバノン杉という「素材の優位性」と、それを活かす「革新的な造船技術」、そして「歴史的なタイミング」という3つの大きな理由があります。 ご質問にある「ガレー船のような船で大洋航海できた理由」について、技術的・歴史的背景から詳しく解説します。 1. レバノン杉という「最強の素材」 当時の船作りにおいて、レバノン杉(Cedrus libani)は現代の「カーボンファイバー」や「チタン」に匹敵する戦略物資でした。 巨木であること: レバノン杉は高さ30〜40メートルにも達し、真っ直ぐに育ちます。これにより、継ぎ目のない長い竜骨(キール)やマストを一本の木から切り出すことができました。これは船の強度(剛性)に直結します。 耐久性と防腐性: 樹脂を多く含み、水に強く、腐りにくい性質がありました。また、その香りは虫除けの効果もあり、長期の航海でも船体が劣化しにくいという決定的な利点がありました。 エジプトへの輸出: 木材資源に乏しいエジプトなどもこの木を喉から手が出るほど欲しがり、フェニキアはこれを輸出することで莫大な富を得て、さらに技術開発に投資できました。 2. 革新的な造船技術:「ほぞ継ぎ」と「竜骨」 フェニキア人の造船技術には、当時の他文明を圧倒する2つの発明がありました。 ① 「ペグ固定式のほぞ継ぎ」 (Locked Mortise and Tenon) これが最も重要な技術的ブレイクスルーです。 構造: 板と板の側面に穴(ほぞ穴)を空け、そこに木の小片(ほぞ)を差し込み、さらに上から木の釘(ペグ)を打ち込んで完全にロックします。 効果: これにより、船の板同士が一体化し、まるで「一枚の巨大な殻(シェル)」のようになります。現代の船のように「骨組みを作ってから板を貼る」のではなく、「板をつなぎ合わせて強固な殻を作る」工法でした。これにより、荒れる外洋の波の衝撃にも耐えられる頑丈な船体が完成しました。 ② 「竜骨(キール)」の導入 船底の中央を前後に貫く太い部材「竜骨」を導入しました(または実用化しました)。 これにより船の「背骨」が通り、構造が強化されるだけでなく、横風を受けても横滑りしにくくなり、直進安定性が飛躍的に向上しました。 3. 歴史的背景:紀元前1200年の「空白」 なぜこの時期だったのかというと、地中海東部を取り巻く環境の激変が関係しています。 「海の民」による破壊: 紀元前1200年頃、「海の民」と呼ばれる勢力の侵入により、それまで強力だったヒッタイトやエジプト、ミケーネ文明が衰退・崩壊しました。 権力の空白: 強大なライバルがいなくなった海域に、高い技術を持っていたフェニキアの都市国家(ティルス、シドンなど)が進出する絶好の機会が訪れました。 補足:ガレー船と貿易船の使い分け 質問に「ガレー船のような」とありますが、フェニキア人は目的によって船を明確に使い分けていました。 ガレー船(軍船): 細長く、多くの漕ぎ手(奴隷ではなく自由市民が漕ぐことも多かった)を乗せ、スピード重視。先端に衝角(ラム)を持ちます。 ガウロス(貿易船): 丸みを帯びた幅広の船体(「あひる」のような形状)。帆走がメインで、多くの荷物を積めます。 フェニキア人が「大洋貿易(イギリスのコーンウォール地方まで錫を買いに行くなど)」で主に使用したのは、主に後者の帆走貿易船でした。しかし、その航路を守り、制海権を維持するために、高度なガレー船(二段櫂船など)の存在が不可欠だったのです。 まとめ フェニキア人が大洋航海できたのは、「レバノン杉という巨大で腐りにくい木材があったこと」、それを「ほぞ継ぎ技術で強固に連結し、竜骨で安定させる技術を持っていたこと」、そして「ライバル不在の時代にその技術を全投入できたこと」が理由です。

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