佐藤哲男博士のメディカルトーク

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<特別記事>「コロナウイルスとは」

I. 新型コロナウイルスに関するQ&A

(厚生労働省のホームページより引用)令和2年2月23日時点版

問1 コロナウイルスとはどのようなウイルスですか?
 発熱や上気道症状を引き起こすウイルスで、人に感染するものは6種類あることが分かっています。そのうちの2つは、中東呼吸器症候群(MERS)や重症急 性呼吸器症候群(SARS)などの、重症化傾向のある疾患の原因ウイルスが含まれています。残り4種類のウイルスは、一般の風邪の原因の10~15%(流行期は35%)を占めます。 詳しくは、国立感染症研究所「コロナウイルスとは」をご覧ください(後述II)。

問2 新型コロナウイルスは動物からうつりますか?
 新型コロナウイルスは、ペットからは感染しません。なお、動物を媒介する感染症は他にありますので、普段から動物に接触した後は、手洗いなどを行うようにしてください。

問3 二次感染のリスクはありますか?
 ヒトからヒトへ感染した例が報告されています。感染のしやすさは、インフルエンザと同等であるなど、さまざまな研究が世界で報告されていますが、確かなことは現時点では分かっていません。

問4 潜伏期間はどのくらいありますか(その期間も感染しますか)?
 世界保健機関(WHO)のQ&Aによれば、現時点の潜伏期間は1-12.5日(多くは5-6日)とされており、また、他のコロナウイルスの情報などから、感染者は14日間の健康状態の観察が推奨されています。

問5 無症状病原体保持者から感染しますか?
 無症状病原体保持者からの感染を示唆する報告もみられますが、現状では、まだ確実なことはわかっていません。通常、肺炎などを起こすウイルス感染症の場合、症状が最も強く表れる時期に、他者へウイルスをうつす可能性も最も高くなると言われています。

問6 新型コロナウイルス感染症はどのように感染するのでしょうか?
 現時点では、飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染の2つが考えられます。
 (1)飛沫感染
 感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つば など)と一緒にウイルスが放出され、他者がそのウイルスを口や鼻から吸い込んで感染します。
 ※感染を注意すべき場面:屋内などで、お互いの距離が十分にとれない状況で一定時間いるとき
 (2)接触感染
 感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りの物に触れるとウイルスが付きます。他者がその物を触るとウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触って粘膜から感染します。
 ※主な感染場所:電車やバスのつり革、ドアノブ、スイッチなど

問7 上海市民政局が「エアロゾル感染」の可能性があると発表しましたが、「エアロゾル感染」は起こるのでしょうか?
 上海市民政局の説明では、「飛沫が空気中で混ざり合ってエアロゾルを形成し、これを吸引して感染する」というもので、空気感染ではなく、飛沫感染に相当すると考えられます。国内の感染状況を見ても空気感染に特徴的な現象は確認されていません。

問8 感染を予防するために注意すべきことはありますか?心配な場合には、どのように対応すればよいですか?
 まずは、石けんやアルコール消毒液などによる手洗いを行ってください。
 咳などの症状がある方は、咳やくしゃみを手でおさえると、その手で触ったドアノブなど周囲のものにウイルスが付着し、ドアノブなどを介して他者に病気をう つす可能性がありますので、咳エチケットを行ってください。特に屋内などで、お互いの距離が十分にとれない状況で一定時間いるときはご注意下さい。 また、持病がある方などは、上記に加えて、公共交通機関や人混みの多い場所を避けるなど、より一層注意してください。 なお、現時点では新型コロナウイルス感染症以外の病気の方が圧倒的に多い状況であり、インフルエンザ等の心配があるときには、通常と同様に、かかりつけ医等にご相談ください。 (新型コロナウイルス感染症が疑われる場合には問14をご覧ください)

問9 「咳エチケット」とは何を行うことですか?
 咳エチケットとは、感染症を他者に感染させないために、咳・くしゃみをする際、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖、肘の内側などを使って、口や鼻をおさえることです。 詳しくは、厚生労働省のホームページをご覧ください。

問10 マスクをした方がよいのはどのような時ですか?
 マスクは、咳やくしゃみによる飛沫及びそれらに含まれるウイルス等病原体の飛散を防ぐ効果が高いとされています。咳やくしゃみ等の症状のある人は積極的にマスクをつけましょう。 予防用にマスクを着用することは、混み合った場所、特に屋内や乗り物など換気が不十分な場所では一つの感染予防策と考えられますが、屋外などでは、相当混み合っていない限り、マスクを着用することによる効果はあまり認められていません。

問11 マスクが手に入りにくいですが、いつになったら手に入るようになりますか?
 マスクは、官民が協力して、国内生産体制の強化や輸入品の確保に取り組み、例年以上の枚数(毎週1億枚以上)を皆さまにお届けできるようになりました。 皆さまには、風邪や感染症の疑いがある方にマスクが届くよう、ご理解・ご協力をお願いします。

問12 一般的に濃厚接触とはどのようなことでしょうか?
 必要な感染予防策なしで手で触れること、または対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル)で、接触した方などを濃厚接触者としています。今回の新型コロナウイルス感染症に関連する情報は、国立感染症研究所のホームページをご覧ください。

問13 感染が疑われる場合、どこの医療機関に行けば検査、診療をしてもらえますか?
 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合には、最寄りの保健所などに設置される「帰国者・接触者相談センター」にお問い合わせください。 また、高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方で、これらの状態が2日程度続く場合は、帰国者・接触者相談センターに相談してください。
「帰国者・接触者相談センター」でご相談の結果、新型コロナウイルス感染の疑いのある場合には、「帰国者・接触者外来」を設置している医療機関をご案内 します。「帰国者・接触者相談センター」は、感染が疑われる方から電話での相談を受けて、必要に応じて、帰国者・接触者外来へ確実に受診していただけるよう調整します。受診を勧められた医療機関を受診し、複数の医療機関を受診することは控えてください。
 なお、これらの症状が上記の期間に満たない場合には、現時点では新型コロナウイルス感染症以外の病気の方が圧倒的に多い状況であり、インフルエンザ等の心配があるときには、通常と同様に、かかりつけ医等にご相談ください。
  「帰国者・接触者相談センター」はすべての都道府県で設置しています。
  下記のホームページをご覧いただき、お問い合わせください。
  帰国者・接触者相談センターページ

問14 相談や受診する前に心がけることはなんですか?
 発熱などの風邪の症状があるときは、学校や会社を休んでください。発熱などの風邪の症状が現れたら、毎日、体温を測定して記録してください。

問15 帰国者・接触者相談センターに相談する目安はありますか?
 以下のいずれかの場合は、帰国者・接触者相談センターに相談してください。
・ 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合 (解熱剤を飲み続けなければならない方も同様です。)
・ 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合 また、高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方 で、これらの状態が2日程度続く場合は、帰国者・接触者相談センターに相談してください。
 妊婦の方は、念のため、重症化しやすい方と同様に、早めに帰国者・接触者相談センターに相談してください。
 現時点で、子どもが重症化しやすいとの報告はありませんので、目安どおりの対応をお願いします。
 なお、インフルエンザなどの心配があるときには、通常と同 様に、かかりつけ医などに相談してください。

問16 相談後、医療機関を受診するときに注意することはありますか?
 帰国者・接触者相談センターから受診を勧められた医療機関を受診してください。複数の医療機関を受診することは控えてください。医療機関を受診する際にはマスクを着用するほか、手洗いや咳エチケット(咳やくしゃみをする際に、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえる)の徹底をお願いします。

問17 どのように診断しますか?
 診断方法としては、咽頭ぬぐい液(インフルエンザの検査と同じように綿棒でのどをぬぐってとった液体)を用いて、核酸増幅法(PCR法など)でウイルス遺伝子の有無を確認します。実際に検査を検討する場合は、疑似症として保健所に届け出後、地方衛生研究所または国立感染症研究所で検査することになります。 まずはお近くの保健所にお問い合わせください。

問18 治療方法はありますか?
 現時点で、このウイルスに特に有効な抗ウイルス薬などはなく、対症療法を行います。

問19 どのような場合には重症化するのですか?
 現時点で、どのような方が重症化しやすいか十分に明らかではありません。通常の肺炎などと同様に、高齢者や基礎疾患のある方のリスクが高くなる可能性は考えられます。新型コロナウイルスに罹った肺炎患者を調査した結果、1/3~1/2の方が糖尿病や高血圧などの基礎疾患を有していたとする報告もあります。(コロナウイルス病2019(COVID-19))
 高齢者や基礎疾患のある方などは、一般的な衛生対策に加えて、公共交通機関や人混みの多い場所を避けるなど、より一層注意してください。

問20 下痢症状がある場合、どのように対応すればいいですか?
 糞便中に感染性のあるウイルス粒子は検出されていないとWHOから報告されています。これまで通り通常の手洗いやアルコール消毒などを行ってください。ま た、新型コロナウイルス感染症の疑いのある患者や新型コロナウイルス感染症の患者、濃厚接触者が使用した使用後のトイレは、急性の下痢症状などでトイレが 汚れた場合には、次亜塩素酸ナトリウム(1000ppm)、または消毒用エタノールによる清拭をすることを推奨します。症状がない場合は、特段の清拭は必 要ないと考えられます。

問21 中国やウイルスが見つかったその他の場所から送られてくる手紙や輸入食品などの荷物により感染しますか?
 現在のところ、中国やウイルスが見つかったその他の場所から積み出された物品との接触から人が新型コロナウイルスに感染したという疫学的情報はありません。WHOも、一般的にコロナウイルスは、手紙や荷物のような物で長期間生き残ることができないとしています。
【WHOの情報】
  コロナウイルスに関するQ&A(COVID-19)
  コロナウイルス病(COVID-19)の一般向けアドバイス
【国立医薬品食品衛生研究所の情報】
  新型コロナウイルス(COVID-19)に関する食品関連情報

問22 多くの方が集まるイベントや行事など(例:業務における会議や研修会、卒業式)の参加・開催については、どのように対応すれば良いですか?
 最新の感染の発生状況を踏まえると、例えば屋内などで、お互いの距離が十分にとれない状況で一定時間いることが、感染のリスクを高めるとされています。 そのため、イベントなどの主催者は、感染拡大の防止という観点から、感染の広がり、会場の状況などを踏まえ、開催の必要性を改めて検討していただくようお願いします。なお、イベントなどの開催は、現時点で政府が一律の自粛要請を行うものではありません。
 また、開催する場合は、参加者への手洗いの推奨やアルコール消毒薬の設置、風邪のような症状のある方には参加しないよう依頼をすることなど、感染拡大の防止に向けた対策を徹底してください。
 国民の皆さまは、風邪のような症状がある場合、学校や仕事を休み、外出を控え、手洗いや咳エチケットの徹底など、感染の拡大防止につながる行動にご協力を お願いします。特に高齢の方や基礎疾患をお持ちの方には、人込みの多いところはできれば避けるなど、感染予防にご注意いただくようお願いします。 そのためには、学校や企業など、社会全体の理解に加え、生徒や従業員の方々が休みやすい環境整備が大切です。テレワークや時差通勤も有効な手段ですので、皆さまのご協力をお願いします。

II. コロナウイルスとは

(国立感染研究所ホームページ、2020年01月10日) 

人に感染するコロナウイルス
 ヒトに蔓延している風邪のウイルス4種類と、動物から感染する重症肺炎ウイルス2種類が知られている。

1.風邪のコロナウイルス
 ヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1である。
 風邪の10~15% (流行期35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とする。冬季に流行のピークが見られ、ほとんどの子供は6歳までに感染を経験する。多くの感染者は軽症だが、高熱を引き起こすこともある。HCoV-229E、HCoV-OC43が最初に発見されたのは1960年代であり、HCoV-NL63と HCoV-HKU1は2000年代に入って新たに発見された。

2.重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)
 SARS-CoVは、コウモリのコロナウイルスがヒトに感染して重症肺炎を引き起こすようになったと考えられている。2002年に中国広東省で発生し、2002年11月から2003年7月の間に30を超える国や地域に拡大した。2003年12月時点のWHOの報告によると疑い例を含むSARS患者は 8,069人、うち775人が重症の肺炎で死亡した(致命率9.6%)。
 当初、この病気の感染源としてハクビシンが疑われていたが、今ではキクガシラコウモリが自然宿主であると考えられている。雲南省での調査では、SARS-CoVとよく似たウイルスが、今でもキクガシラコウモリに感染していることが確認されている。ヒトからヒトへの伝播は市中において咳や飛沫を介して起こり、感染者の中には一人から十数人に感染を広げる「スーパースプレッダー」が見られ た。また、医療従事者への感染も頻繁に見られた。死亡した人の多くは高齢者や、心臓病、糖尿病等の基礎疾患を前もって患っていた人であった。子どもには殆ど感染せず、感染した例では軽症の呼吸器症状を示すのみであった。

3.中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)
 MERS-CoVは、ヒトコブラクダに風邪症状を引き起こすウイルスであるが、種の壁を超えてヒトに感染すると重症肺炎を引き起こすと考えられている。最初のMERS-CoVの感染による患者は、2012年にサウジアラビアで発見された。これまでに27カ国で2,494人の感染者がWHOへ報告され (2019年11月30日時点)、そのうち858人が死亡した(致命率34.4%)。
 大規模な疫学調査により、一般のサウジアラビア人の0.15%が MERSに対する抗体を保有していることが明らかになったことから、検査の俎上に載らない何万人もの感染者が存在していることが推察される。その大多数は ウイルスに感染しても軽い呼吸器症状あるいは不顕性感染で済んでおり、高齢者や基礎疾患をもつ人に感染した場合にのみ重症化すると考えられる。重症化した 症例の多くが基礎疾患(糖尿病、慢性の心、肺、腎疾患など)を前もって患っていたことが解っている。15歳以下の感染者は全体の2%程度であるが、その多くは不顕性感染か軽症である。
 ヒトからヒトへの伝播も限定的ではあるが、病院内や家庭内において重症者からの飛沫を介して起こる。年に数回程度、病院内でスーパースプレッダーを介した感染拡大が起こっているが、市中でヒトからヒトへの持続的な感染拡大が起こったことは一度もない。2015年に韓国の病院で起こった感染拡大では、中東帰りの1人の感染者から186人へ伝播した。

III. 治療薬の検討

2020年2月22日に加藤厚労相は「アビガン」(一般名ファビピラビル)の効果を確かめる臨床研究を国立国際医療研究センターなど2カ所で開始したと発表しました。

「アビガン」はインフルエンザ治療薬のタミフルが効かない新型インフルエンザの流行に備えて政府が備蓄しているものです。この薬はウイルスの増殖を妨げる効果が期待でき、中国でも研究されています。しかし、胎児に副作用が出る恐れがあるので妊婦には使用できません。

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