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美術館訪問記-57 ウォーレス・コレクション

(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

添付1:ヴィンチェンツォ・フォッパ作
「読書する少年キケロ」

添付2:ウォーレス・コレクション正面

添付3:ウォーレス・コレクション内部

添付4:ブーシェ作
「ポンパドール夫人」

添付5:アンドレア・デル・サルト作
「聖母子と洗礼者ヨハネ」

添付6:フランス・ハルス作
「笑う騎士」

添付7:レンブラント作
「芸術家の息子ティトス」

添付8:ウォーレス・コレクション武具・甲冑室

ジョヴァンニ・ベッリーニとカルロ・クリヴェッリは1430年生まれと書きましたが、 第38回で採り上げたアントネッロ・ダ・メッシーナも同じ1430年生まれ。

著名な画家で同年生まれというのはそれほど多くはないのですが、 この年だけはどういう理由か巨匠が6人も集中して生まれているのです。 もっとも、この時代は生年月日を特定するのが難しいらしく、 画家によっては他の年に生まれたという説もあることはご承知おき下さい。

4人目はヴィンチェンツォ・フォッパ。 イタリア、ロンバルディア地方で活躍した画家です。 国際ゴシック様式からスタートし、ジョヴァンニ・ベッリーニ同様、 ヤコポ・ベッリーニやマンテーニャの影響を強く受けました。

彼の作品で印象に残るのはロンドン、 「ウォーレス・コレクション」にある「読書する少年キケロ」。

ミラノにあるパラッツィオ・メディチの壁から1863年切り取られたフレスコ画で、 幼い頃から神童と謳われたキケロが左手に本を持ち、読みふけっている様を 描いたものですが、その古色燦然とした色彩が妙に心に響くのです。

ウォーレス・コレクションはハートフォード侯爵家の収集品を最後に受け継いだ リチャード・ウォーレスの未亡人が1897年国に遺贈したもので、 1900年、国の美術館として公開されました。

遺贈条件として作品の他への貸し出しは禁じられており、 この美術館でしか見ることはできません。

15世紀から19世紀までの美術品、家具、武具等5500点の 素晴らしいコレクションを誇り、特に18世紀のフランス絵画はブーシェ32点、 グルーズ26点、ヴァトー9点、フラゴナール8点等、他の追随を許しません。

これら以外ではベッカフーミの「ホロフェルネスの首を持つユーディット」、 チーマ・ダ・コネリアーノの「アレクサンドラの聖キャサリーン」、 ベルナルディーノ・ルイーニの「風景の中の聖母子」、 アンドレア・デル・サルトの「聖母子と洗礼者ヨハネ」、 アロンソ・カーノの「洗礼者ヨハネのエルサレムの幻影」、 フランス・ハルスの「笑う騎士」、レンブラントの「芸術家の息子ティトス」、 カスパル・ネッチェルの代表作「レースを編む女」、 ポウル・ドラローシュの「ロンドン塔の若き王と王子」 (これはルーヴルにある本絵の本人によるコピー)が印象に残りました。

この他にもクリヴェッリ、メムリンク、ホルバイン、ティツィアーノ、 ブロンジーノ、ルーベンス、ヨルダーンス、ダイク、ヴェラスケス、ムリーリョ、 プッサン、カナレット、グアルディ、レイノルズ、ゲインズバラ、ターナー等、 多士済々。

この美術館の特徴の一つは武具・甲冑のコレクションです。 5500点足らずのコレクション総数の半分近く、2370点はこれらが占めています。

武具・甲冑のコレクションは19世紀にイギリスで始まり、ヨーロッパの上流階級の 一部に広まりました。過ぎ去りし日々への男のロマンと闘争本能の代替なのか、 あるいは純粋に美術品としての興味なのか。

今ではウィーン、マドリード、パリ、ロンドン等の王室コレクションは勿論、 ヨーロッパに限らず、世界各地の美術館・博物館で 武具・甲冑のコレクションを見かけます。ここほど大規模なものは珍しいですが。


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