今年は1月1日に本年度第1回を送付し、大晦日に最終回を送る事になりました。1年365日なのですから、当然と言えば当然なのですが、何やら不思議です。
ボーデ博物館の南隣にあるのが「ペルガモン博物館」。博物館島内の博物館の中では一番新しく1930年の開館。
開館の10時には15分もあるというのに既に15、6人並んでいました。ここではそれが常態と見え、入口前の道路を隔てた場所に屋根付きの専用行列待ち場所が設定されているのでした。
ギリシャ神殿のような外観の博物館内部は古代美術コレクション、中近東博物館、イスラム博物館の3部門から構成されています。
正面入口を入ると直ぐあるのが館名の由来にもなっている「ペルガモンの大祭壇」。
ペルガモンは、小アジア西北端にあった小国。紀元前164-156年頃にペルガモンのアクロポリスに建てられた大祭壇を、1878年に発掘したプロイセン王国は、当時競って地中海沿岸の遺跡を自国へ持ち帰っていたイギリスやフランスに遅れじと、ベルリンへ分解して運び、この博物館内に再現したのです。
ヘレニズム美術を代表する建造物で、祭壇やそれを取り囲む大理石の壁には、高さ2.3m、延長120mにわたって彫刻が刻まれていて、神々と巨人の戦いが描かれています。その上部にはイオニア式列柱が屋根を支えています。
こんな巨大遺跡が博物館内に展示されているのを観た事はありません。
右側の部屋に入ると「ミトレスの市場門」。ミレトスは現在のトルコに存在したギリシャの植民地だった町ですが、古代ローマ人が紀元120年頃建築した門で高さ29m。古代ローマ・ファサード建築の代表例とされています。
1100年前に地震で破壊されていたものをドイツ発掘隊が1903年から3年がかりで発掘し、この博物館内に数多くの本物の部材を使用して原型の寸法に再現したもの。
館内もう一つの目玉は「イシュタール門」。古代バビロニアで紀元前6世紀に建設されたもので、青い彩釉煉瓦の壁に想像上の動物が描かれています。高さ14.7m、幅15.7m。
イシュタールとは戦いの女神で、彼女を守っているのが聖なる動物ライオン。この門も見事ですが、そこへ続く道がまた素晴らしい。
門と同じ青彩釉煉瓦の壁に忠実そうなライオンが描かれています。実際の通りの幅は20m以上ありましたが、ここでは3分の1に凝縮され、180mの長さがあった通りも30mだけが再現されているそうです。
それでも広々とした空間で、なによりブルーとイエローの煉瓦の色の美しさに魅せられました。
こんな調子で展示物を一つずつ採り上げていくとキリがありませんが、心惹かれた彫像を年代順に4点お見せしましょう。
最初はいわゆる「ベルリンの女神」。紀元前560年頃の作品というのに色彩が見事に残っているのに驚いたのです。
アッティカ出土のこの立像は発見時に鉛の外被にくるまれていたそうなのですが、その時点から色彩を保存しようというような概念があったのかどうか。
「川の神アケロウスのマスク」。紀元前470年頃マラトンで作られたというこのマスクの端麗さ。
「アフロディテのテラコッタ像」。紀元前2世紀中期にヘレニズム最盛期の小アジアで制作された絶品です。時代を越え、人種を越え、心ときめく思いは変わらないようです。
「ユリウス・シーザーの胸像」。紀元1世紀の作。紀元前44年に暗殺されたシーザーですから、この像が実像と近似しているとは考え難い。
にもかかわらず、骨相的な酷似を目指したと思えるこの胸像は、あたかも実在のシーザーのように、緑色片岩で作られた、緑色に輝く肌と、不気味な迫力でせまって来るのです。