古都ヴェローナには幾つも教会が建っていますが、 ヴェローナの守護聖人である聖ゼーノを祀った「サン・ゼーノ教会」を 外す訳にはいきません。
聖ゼーノが380年に死亡した後、その墓の上に建てられたというこの教会は、 967年にロマネスク様式で再建され、その後震災に会い1398年、 アプス(後陣)がゴシック様式で付け加えられて再建されました。
イタリア屈指のロマネスク建築の傑作と言われ、広い広場の前に聳えています。
向って左側には古い修道院の塔が13-14世紀に赤レンガで建てられ、 右側には1178年完成の62mの高さの細いベルタワーが建っています。 ロマネスク様式でとんがり帽子を被った可愛らしい姿。
凝灰石でできたファサードの中央には運命の女神を表した大きなバラ窓が 飾られています。後にゴシック建築のシンボルのようになるバラ窓が ロマネスク様式で造られた早期の事例となっています。
ここのファサードには柱廊式玄関を持つ扉口があり、そこにはニコロによる 旧約聖書の浮き彫りと、ニコロの弟子グリエムスによる新約聖書の浮き彫りが 施されています。1138年作。 これらはインド古代仏教彫刻に通じるような素朴さを感じました。
その扉の次にブロンズ製の扉があり、48のパネルがついた素晴らしいもので 12世紀の作といいます。 ただこの扉は現在使用されてなく、内部から見られるようになっています。
現在の入口は向って左脇にあり、入ると内部は3層に分かれており、 最下層には広いクリプト(地下聖堂)、その上に本来の教会、 そして一段高くなっているクワイヤである。
クワイヤとは、主に西方教会の教会堂や大聖堂の建築における一区域のことで、 通常は、祭壇のあるサンクチュアリと身廊の間、内陣の西部分を占めています。
ここのクワイヤはクリプトの上部がアーチ型になっている上にあるので、 身廊からは一段高く見上げるようにできています。
教会部分は三身廊で両翼の付いたラテン十字形。 身廊間の柱にはコリント様式の柱頭が付き、動物の浮き彫りが施されています。
アーチ状になったその上の壁は縞模様で天井まで達しています。 天井は三山型の木製で14世紀のもの。
教会の壁にはロレンツォ・ヴェネツィアーノ作の磔刑図と 13世紀のフレスコ画がありました。
ここの主祭壇にこの教会で最重要なアンドレア・マンテーニャ作の三幅祭壇画 「サン・ゼーノの祭壇画」480 x 450cmがあります。
三幅とも果物と植物のついた飾りが頭上にあり、パドヴァで修業をし、名をなして、 やがてマントヴァのゴンザーガ家に宮廷画家として仕え、そこで生涯を閉じた マンテーニャらしくパドヴァ派の特徴が色濃くでています。
これらの果物や植物はだまし絵ですが、いかにも本物のように描かれており、 彼以前まではバラバラに描かれていた聖人たちが、同じ空間を共有して並ぶ姿や 聖母や聖人たちの衣装の艶やかさ、建築的要素が見られる遠近法、 全体の構図の革新性、完璧さなど、マンテーニャの代表作と言えるでしょう。
但しこの祭壇画は上部三幅のみが真作で、 下部のプレデッラの部分はナポレオン侵攻の際持ち去られたまま、 フランス、ルーヴル美術館所蔵になっています。ここにあるのはコピーです。
教会横の2本列柱のアーチが並ぶクロイスター(中庭を囲んだ回廊)も 素晴らしいものでした。