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美術館訪問記 - 432 ドゥオーモ

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ドゥオーモ正面

添付2:ドゥオーモ前の天使の彫像

添付3:ドゥオーモ入口

添付4:ドゥオーモ入口上部ルネッタ

添付5:ドゥオーモ内部

添付6:ティツィアーノ作
「聖母被昇天」

添付7:ミケランジェロ・プルナーティ作
「聖母子と聖人達」
写真:Creative Commons

添付8:アゴスティーノ・ウゴリーニ作
「聖母子と聖人達」
写真:Creative Commons

ヴェローナの旧市街は蛇行するアディジェ川に取り囲まれて舌のように 突き出ていますがその先端部分に「ドゥオーモ」があります。

ドゥオーモというイタリア語名称については第252回で詳述しましたが、 もう3年以上経つのでもう一度書いておきましょう。

ローマカトリック教会で大聖堂というのは司教座の置かれた教会をいいます。

司教座とは一つの司教区の長である司教が執務する座席のことで、 司教はその区内にある教会の司祭達の頂点に立つ高位聖職者で 使徒の継承者と見做されています。

司教座の事をラテン語でカテドラと言い、これから大聖堂を英仏語ではカテドラル、 イタリア語ではカッテドラ―レまたはドゥオーモと呼んでいます。

厳密に言うとドゥオーモ(神の家を意味する)は町で一番重要な教会を指し、 大聖堂である場合が多いのですが、小さな町では司教座がない場合も多い。 その場合は聖堂と呼ぶのが普通です。

ヴェローナのドゥオーモは別名 カッテドラーレ・ディ・サンタ・マリア・マトリコラーレで大聖堂です。

ここはローマ時代の2つの教会が1117年の地震で崩壊後に建てられ、 1187年ロマネスク様式で完成。ファサードは2層の荘厳なロッジアが開いており、 巨匠ニコロ(1139)の浮き彫りで飾られています。

ゴシック様式のステンドグラス窓は14世紀の改修で、バロック様式の上部は 17世紀の改修で付け加えられています。

ロッジア斜め前にはボッティチェッリの絵から抜け出て来たような細身で長身の 青い衣を纏った天使のブロンズ像が置かれていました。

入口の扉上部のルネッタにはロマネスクらしい素朴な雰囲気の聖母子の彫刻が 施されており、聖母子の左右には、キリストの降誕を羊飼いに告げる天使と、 東方三博士の礼拝が表されています。背景の青地が美しい。

内部は15世紀の改造による三廊式で、ゴシック様式のアーケードを支える 赤茶色の太いヴェローナ特産の大理石柱で分けられています。

天井や壁は白く塗られて目立った装飾はありません。

対照的に両脇の礼拝堂や主祭壇は、大部分ルネサンス時代の 幾つもの彫刻や絵画で飾り立てられています。

最も有名なものはティツィアーノの珍しいフレスコ画「聖母被昇天」でしょう。

彼を含めヴェネツィアの画家達はフレスコ画を避けて油彩画を貼って フレスコ画に替える事が多かったのです。 海に囲まれたヴェネツイアでは湿気に弱いフレスコ画は長持ちしなかったからです。

またフレスコ画は画家本人が現場に行って描くしかありません。 油彩画なら簡単に持ち運びできたので、長旅をする必要がなかったし、 工房の弟子達で分業して描く事も可能でした。

ヴェローナはティツィアーノの住むヴェネツィアから比較的近距離にあり、 内陸部で湿気も少ないため、ティツィアーノ自身がやって来て描いたのでしょう。

堂内にはいくつかの礼拝堂があり、どれも色鮮やかな祭壇画が飾られていましたが 18世紀の名も知らぬ画家たちの手になるものなのでした。