前回のサンセヴェーロ礼拝堂美術館の1ブロック先にあるのが 「サン・ドメニコ・マッジョーレ教会」。
教会前のサン・ドメニコ・マッジョーレ広場中央にオベリスクが直立しています。
1656 年にこの街をペストから救ったとされる聖ドメニコに謝意を示すために 建てられたもので、基部側面にはバロック様式のレリーフが施され、 一番上には聖ドメニコの彫像が立っていて、 遠くの危険からも教会を守ろうとするかのように市内を見渡しています。
この広場から見る教会は、まるで城塞のようでとても教会の風情はありません。
実は広場に面しているのは教会の後陣でファサードは反対側の小広場に面しており、 そこに入口があります。
この教会は10世紀の教会跡に1283年から1324年にかけて神学研究の中心であった 修道院の一部として建設されました。その後何度も改修されましたが、 最終的に19世紀に元のゴシック様式に改修されています。
内部は三廊式で柱や柱頭の上のアーチにも飾りが施され豪華な造り。 主身廊の連続したゴシック様式のアーチと格間天井は圧巻。 天井には金の華麗な額縁に花の模様が収まった額が3列に20ずつ並べられている。
礼拝堂も多く美術品も多い。
筆頭はローマのサンタ・マリア・イン・トラステヴェレ教会に 「マリアの生涯」という6つの場面をモザイクで描いたジョットと並ぶ ルネサンスの開拓者ピエトロ・カヴァッリーニが1309年に描いた連作フレスコ画。
彼は主にローマで活躍したのですが、1308年、ナポリのカルロ2世の招きで この地に来、13年間滞在して幾つかの作品を残した後、ローマに戻っています。
添付した「磔刑図」は無感情で平面的な中世絵画から抜け出そうとする 写実的描写と遠近感の試みが見られ、近年とみに評価が高まって来ている画家です。
左右の身廊と翼廊には、それぞれナポリを代表する名家の礼拝堂が並んでいます。 その一つ、「磔刑の大礼拝堂」は、13世紀にここの修道院で神学を教えていた トマス・アクィナスが、描かれた磔刑のキリストに話しかけられた場所とされます。
トマス・アクィナス(1225年頃-1274年)は南イタリアの貴族の生まれで、 ドメニコ会に入り、ケルンで学んだ後、パリ大学神学部の教授となり、 1272年にはナポリに神学大学を設立した聖人です。
彼はスコラ哲学を大成したと言われ、数々の著作をものにしていますが、 中でも大著「神学大全」は神の存在と教会の正当性を論証する書として、 後世のキリスト教に大きな影響を与えました。
教会の一角にはプレセピオ(キリスト降誕再現模型)もありました。
入口左側に、ナポリを支配していたアラゴン家王族の柩が中層部に収められた 聖具室があり、その天井をフランチェスコ・ソリメーナのフレスコ画 「異教者へのドメニコ会の信仰の勝利」が壮麗に飾っていました。
現在カポディモンテ美術館にあるカラヴァッジョの「キリストの鞭打ち」は このサン・ドメニコ教会のために描かれたものでした。