シエナの街の北東部にあるサン・フランチェスコ教会に並んで 「サン・ベルナルディーノ祈祷堂」があります。
15世紀の創建で現在は司教美術館になっています。
ここの2階の一部屋が凄い。
四方の壁全部がベッカフーミ、ソドマ、ジローラモ・デル・パッキアの 聖母マリアの生涯を描いたフレスコ画で埋まっているのです。
パッキアの代表作とされる「マリアの誕生」に始まり、ソドマの「マリアの寺院登壇」、 ベッカフーミの「マリアの婚約」と続いていきます。
数えてみるとパッキア4点、ソドマ7点、ベッカフーミ3点。
ジローラモ・デル・パッキアは1477年、シエナの生まれで、 同い年のソドマと共にシエナで画家としての修業後、短期間フィレンツェに行き、 1500年にはローマに出て修業を重ねています。
1502年にはシエナに戻り、この年から開始されたシエナ大聖堂の ピッコロ-ミニ図書館の壁画作成にはピントゥリッキオの助手として働いています。
1518年から1532年までかかったこのサン・ベルナルディーノ祈祷堂での仕事を ソドマやベッカフーミと伍してこなしているのですから、 当時は彼らと同格に扱われていたことが判ります。
1535年を最後に彼の記録は消失してしまっています。没年不詳。
シエナ以外で彼の作品を見かけることはほとんどないのですが、 第54回で紹介したフィレンツェのサン・サルヴィ美術館でよいトンドを観ました。
この美術館には他にもロレンツェッティ兄弟やタッデオ・ディ・バルトロ等の 作品が展示されています。
チョット面白かったのはマッテオ・ディ・ジョヴァンニの「受胎告知」。
どこかで見かけた気がしませんか。
そう、フィレンツェのウフィツイ美術館にあるシモーネ・マルティーニの 「受胎告知」によく似ていますね。
マッテオ・ディ・ジョヴァンニは1428年頃サンセポルクロの生まれで、 両親が程なくシエナに移住し、以後死ぬまでシエナで過ごしています。
彼の修業時代の記録は残っていないのですが、 画風から見てサッセッタに師事した可能性が高いと言われます。
抒情的,装飾的な作風で優美な彼の作品は当時のシエナで高い人気を 得たばかりでなく、トスカーナ各地からも注文が多く、工房は繁盛しました。
シエナ派を代表するシモーネ・マルティーニの複製的な注文もあった事でしょう。
彼はいずれも裕福な婦人と2度の結婚をしており、子だくさんで、画業も順調、 幸福な人生を満喫し、1495年没。