オルヴィエート大聖堂の右側にこぢんまりしたゴシック様式の建物があり、 この2階に「オルヴィエート大聖堂付属美術館」があります。
館内にはオルヴィエート大聖堂に飾られていたことのある 絵画や彫刻、装飾品が所狭しと並んでいます。
ここにもルカ・シニョレッリ作の傑作「マグダラのマリア」がありました。
この美術館のシンボルになっている作品で、 案内板やティケットなどに印刷されています。
それだけの価値は充分ある作品で、私も好きな作品の一つだったのですが、 10年以上前の修復で印象が一変しました。
システィーナの礼拝堂のミケランジェロの大壁画も修復によって随分印象が 変わりましたが、この「マグダラのマリア」ほど変化した絵も珍しい。
空のくすんだ灰色が澄んだ薄青色になり、背景の山や野が水墨画状態から クッキリとした青や緑に、衣服や顔の薄暗い色彩が鮮やかな補色の赤と緑や 生き生きとした肌色や金色に大変身したのですから。
勿論絵画としては鮮明な色彩のほうがはるかに好ましいのですが、 慣れ親しんだ修復前の絵に歴史と愛着を感じるのも否めません。
ルカ・シニョレッリの作はもう1点フレスコ画の 「ニッコロ・フランチェスキといる自画像」がありました。
ニッコロは大聖堂装飾の会計官で、彼の任期満了に伴い、 ルカが記念に描いたものと考えられます。
シモーネ・マルティーニの多翼祭壇画「聖母子と四聖人」もありました。 左側から聖ピエトロ、マグダラのマリア、聖母子、聖パオロ、聖ドメニコ。
祝福するキリストが上部に位置する聖母子像もあります。
シモーネ・マルティーニは14世紀初めシエナ派の中心人物として活躍した画家で オルヴィエート大聖堂の建築に大勢のシエナの職人が加わっていた事が、 彼の作品がここにある理由なのでしょう。
ローマの生まれですが、父親がオルヴィエート出身の画家、 ルドヴィコ・マッツァンティの出来の良いモザイクもありました。
ローマでベルニーニに先立ってバロック様式の形成をリードした 彫刻家フランチェスコ・モーキの劇的な「受胎告知」も いかにもバロックらしい躍動感溢れる作りで素晴らしい。