ローマ時代からの古い歴史を誇り、スペインのサンチャゴ・デ・コンポステーラ への巡礼の道筋として発展した町、カストルがフランスにあります。
スペインとの国境から北へ130km、地中海から西に100km足らずの所にあります。
ヴェネツィアのように運河沿いの古い家並みがきれいな町の中心に、 17世紀に司教館として建てられ、現在は市庁舎になっている建物があります。
ヴェルサイユ宮殿の設計をした建築家マンサールが建築を、 やはりヴェルサイユ宮殿の庭園を造園したルノートルが庭園を手がけました。
この市庁舎の2階に「ゴヤ美術館」があります。 ゴヤ美術館と言ってもゴヤに特化している訳ではなく、元々は1840年 僅か9点のフランス人画家による絵画の展示場として開館。
その後、幾多の寄贈でコレクションは増大して行き、 中でも画家のマルセル・ブリギブルの寄贈品に含まれたゴヤの3作品が その後の相次ぐスペイン絵画の寄贈を呼び込み、 現在ではルーヴル美術館に次ぐフランス第2のスペイン絵画収集を誇ります。
こうして1947年ゴヤ美術館と改名して今日に至っています。
ゴヤの油彩画は3点ですが、彼の生涯最大の作品「フィリピン臨時政府」も 含まれています。
ゴヤの54歳頃の「眼鏡をかけた自画像」もありました。
第254回で採り上げたボナ美術館でも同じ自画像を3日前に見たばかりなので 少し驚いたのですが、後で見比べてみると、ゴヤ美術館の方の作品がより緻密に 描かれていて、サイズも大きい。
ボナ美術館の作品はゴヤ美術館にある物の習作か、自作のコピーなのでしょうか。
凄かったのはゴヤの版画のコレクションで、ゴヤは長い画歴のほぼ全時期に亘って 版画も制作しています。その代表作が「カプリーチョス」(1799年出版:80点)、 「戦争の惨禍」(1810-20年頃制作:18点)、「闘牛技」(1816年出版:40点)、 「妄」(1820-23年制作:20点)という4点の連作形式の銅版画集です。
「戦争の惨禍」と「妄」はゴヤの生前には発表されず、歿後35年を経て 1863年に、サン・フェルナンド王立美術アカデミーから出版されています。 余りにも生々し過ぎて、宮廷画家としては出版できなかったのでしょう。
ここにはそれら全てが揃って展示されています。
他にもベラスケス、リベーラ、スルバラン、アロンソ・カーノ、ムリーリョ、 フアン・デ・バルデス・レアル等のスペイン画家達が勢揃いしていました。
ミロの作品も25点ありましたが、これは所蔵品ではなく企画展として 他所からの借用中のものでした。