美術館訪問記-243 ボルドー美術館

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:ボルドー美術館南館

添付2:ボルドー美術館扉、Tirezはフランス語で「引く」

添付3:ペルジーノ作
「聖母子と聖ヒエロニムス、聖アントニウス」

添付4:ルーベンス作
「聖ゲオルギウスの殉教」

添付5:マルケ作
「ナポリ、帆船」

添付6:ドラクロワ作
「ミソロンギの廃墟に立つギリシャ」

添付7:ルドン作
「ミソロンギの廃墟に立つギリシャ」模写

添付8:ドラクロワ作
「ライオン狩り」

添付9:ルドン作
「ライオン狩り」模写

添付10:ルドン作
「アポロンの戦車」

前回夜のカフェテラスとルドンと書きながら、 ふとワインで有名で、ルドンの故郷でもあるボルドーを連想しました。

ボルドーはフランスの南西部にあり、ビスケー湾から50kmほど内陸に位置しますが、 市内を縫って流れるガロンヌ川が川幅300mはあり、大型船が十分乗り入れられる為 ローマ時代から造られていたワインと貿易で栄えて来た古都です。

この街の中心部に「ボルドー美術館」があります。ナポレオンの指示により 15の地方都市に美術館を創設した内の一つで1801年の開館。 パリ以外ではフランス最大級の美術館で北館、南館、別館の3棟からなります。

ここの入口の扉の取っ手は蛇の形をしており、妻は気持ち悪そうに触れるのを 避けましたが、フランス女性は蛇に対して忌避感はないのでしょうか。

ルーヴル美術館の7年後に開館した由緒ある美術館とあって、所蔵品も一級品。

ペルジーノの良品やヴェロネーゼ、ティツィアーノ、パルマ・イル・ヴェッキオ、 バッサーノ、ヴァザーリ、ラヴィニア・フォンターナ、ルカ・ジョルダーノ等の 錚々たるイタリア人画家のオールド・マスターが並びます。

フランドルからはヤン・ブリューゲル父、ルーベンス、ヨルダーンス、ハルス、 ダイク、両ロイスダール、ホイエンなど。

スペインからはスルバラン、ムリーリョ、アロンソ・カーノ、 イギリス、アメリカからはレイノルズ、ベンジャミン・ウエスト、ラムゼイ、 トーマス・ローレンス、メアリー・カサットなどが並びます。

地元フランスからはプッサン、ラルジリエール、ロラン、ナティエ、シャルダン、 ブーシェと一通りオールド・マスターが揃っています。

19世紀以降ではコロー、ドラクロワ、ドービニー、ジェローム、ブグロー、 ディアズ、ブーダン、ジェム、モリゾー、ルノワール、スーラ、ロートレック、 ココシュカ、マティス、デュフィ、ボナール、スーティン、ピカソ、ブラック、 ヴァロットン、ヴラマンクなど枚挙に暇がありません。

特にアルベール・マルケは40点もの所有を誇っています。 1870年の火災で16点ものドラクロワ作品を焼失したというのが残念です。

オディロン・ルドンの油彩画は26点所蔵しており、 常時彼の油彩画を観られる美術館としては世界最大数でしょう。 但しその内15点はオルセー美術館からの貸与作品です。

第43回のマルロー美術館でデュフィについて述べた所で触れたように、 オルセーやルーヴル、ポンピドーなどの国立美術館はフランスの地方美術館に かなりの数の作品を常時、半永久的に貸し出しており、 ルドンで言えばオルセーが106点所蔵している事になっています。

その内26点は地方美術館への常時貸与で、自身80点を所有しているので、 実際はオルセー美術館が世界最大のルドンの油彩画所蔵美術館なのですが、 他の膨大な所蔵作品との兼ね合いから、常時展示している作品数は限られます。

なお岐阜県美術館はルドンの油彩画18点、水彩・素描・パステル画28点、 版画207点を所有しており、世界有数のルドン・コレクションを誇っています。

ルドンについては第89回のオードロップゴー美術館の項で詳述しました。